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第13章(2)マオside
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しおりを挟む「アランなら……きっと、幸せにしてくれますよ。
っ……だから、これからは……会う時は、アランを通じて……会いましょう?」
間違った事は、何一つ口にしていない。
それなのに、胸が痛くて、締め付けられて、苦しい。
ああーー……泣きそうだ。
そんな溢れてそうな気持ちを瞼に閉じ込めて、ギュッとつむった時だ。
「何で……そんな事、言うんですか?っ……」
耳に届いた震えた声にハッとして、思わず顔を上げてしまった。
そこに居たのは、初めて会った時のように、悲しい瞳と表情をしたアカリさん。
僕に"何か"を訴えるように……。でも、抑えるように身体を震わせて、拳をギュッと握りしめていた。
そんな彼女を見ていたら、まるで自分から大切な一部を引き剥がされるような痛みが胸に走る。
でも……。
「私の幸せを……勝手に、決めないでッ!私がっ……、私が好きなのはっ……」
「ーーッ!!」
でもそれ以上に、アカリさんの想いを知るのが怖かった。
自分に迫る痛みと恐怖に耐えきれなくて、僕は咄嗟に自分の手で両耳を塞いで、彼女から目を逸らした。
目を、逸らしてしまった。
"全て"を受け入れる強さが、この時の僕にはまだなかったんだーー……。
そんな僕を、アカリさんはきっと察してくれていた。
そっと、右手を掴まれた感覚にも目をそらし続ける僕に、彼女はもう何も言わずに、ただメモ用紙をギュッと握らせると……。その場から静かに去って、自分の仕事場へ戻って行った。
一人きりになった通路で、渡されたメモ用紙を開いて、思わず小さな声が漏れる。
「……こんな物貰わなくても、覚えてますよ」
メモ用紙に書かれたアカリさんのポケ電の番号は、実は僕の頭の中にずっと記憶されていた。
物覚えが悪い筈の僕が、彼女が教えてくれたあの番号だけは記憶出来た。
何故だか忘れられなくて……。
でも、臆病な僕は、自分から連絡が出来なかった。
揺れる心が、僕をなかなか前には進ませてくれなかった。
胸ポケットに入れていたポケ電が震える。
取り出して確認すると、ミネアさんからのメッセージ。先日からの出張先であった事が綴られていて、最後に「早くマオ様に会いたい」と僕を求めてくれる言葉。
震える指で返信を打つ。
『僕も、会いたいです』
"今"を、ようやく見付けた"ぬくもり"を、僕は自分から手放す事が出来なかった。
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