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第14章(3)マオside
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褒めてほしいなんて、思ってなかった。
「よく頑張ったな」
なんて、優しい言葉を期待していた訳じゃなかった。
「まだまだ甘い」
例えそう言われながら説教をされても、良かった。
ただ、祖父と話をしたかった。
一方的な言葉ではなく、互いに意見を言い合える会話が……したかった。
頑張って僕から歩み寄れば、いつか……変わると思っていた。
……
…………。
「ーーいいな、アラン。お前がその企画案の通りに進めろ」
「っ……ですが、ッ……この企画案を考えたのは兄上ではないですか!」
!?ッーー……え?
社長室の前に辿り着いた僕の耳に届く、現実。
薄開きになっていた扉からハッキリと聞こえた拒絶の言葉に、僕は社長室の前の廊下で立ち尽くす事しか出来なかった。
な、なに……?
どう言う、事……?
『ーーいいな、アラン。お前がその企画案の通りに進めろ』
『っ……ですが、ッ……この企画案を考えたのは兄上ではないですか!』
さっき聞こえた祖父と弟の会話が、心の中に木霊する。
理解が出来ず……。
ーーいや。
その会話の意味を理解しながらも"何かの聞き間違いだ"と、思いたいのに……。
「あいつには無理だ。
その企画案をそのまま形にする力はない」
あいつには無理だーー。
追い討ちをかける否定の言葉に、夢を一瞬にして砕かれる。
僕の中に微かに灯っていた光が……消えた気がした。
「アラン、お前だってそう思っているだろう?
それに……」
身体が冷えてきて、凍りついて……もう、前に進む事が出来ない。
けど、これ以上ここに居たくないのに……退く事も出来ない。
「あいつとあいつの母親がいなければ、お前の母親が死ぬ事もなかった。
あいつ等がお前と母親と父親の幸せを奪ったのだからな」
「っ……それは、……ッ」
家族に、なりたかった。
過去を忘れてしまっても、せめて仕事が出来るようになれば……。僕も祖父と弟の居る場所へ行けると思ってた。
でも……。
「仕事などあいつには必要ない。
私があいつに期待しているのは、ミネア嬢との件だけだ」
でも、それは……本当にただの理想。
僕の思い描いていた、空想でしかないのだと思い知る。
「あいつはただの種馬同然。
さっさとミネア嬢との間に世継ぎを設けて、その絆を確かにしてもらえば……用無しだ」
扉の隙間から、「クククッ……」と喉を鳴らして笑う祖父を見て悟る。
童話の醜い鳥は、将来美しくなって、優しい仲間に囲まれて空を羽ばたけるけれど……。きっと僕は、どんなに頑張ってもそんな風にはなれない。
永遠の、憧れでしかないのだと……。
……
…………。
褒めてほしいなんて、思ってなかった。
「よく頑張ったな」
なんて、優しい言葉を期待していた訳じゃなかった。
「まだまだ甘い」
例えそう言われながら説教をされても、良かった。
ただ、祖父と話をしたかった。
一方的な言葉ではなく、互いに意見を言い合える会話が……したかった。
頑張って僕から歩み寄れば、いつか……変わると思っていた。
……
…………。
「ーーいいな、アラン。お前がその企画案の通りに進めろ」
「っ……ですが、ッ……この企画案を考えたのは兄上ではないですか!」
!?ッーー……え?
社長室の前に辿り着いた僕の耳に届く、現実。
薄開きになっていた扉からハッキリと聞こえた拒絶の言葉に、僕は社長室の前の廊下で立ち尽くす事しか出来なかった。
な、なに……?
どう言う、事……?
『ーーいいな、アラン。お前がその企画案の通りに進めろ』
『っ……ですが、ッ……この企画案を考えたのは兄上ではないですか!』
さっき聞こえた祖父と弟の会話が、心の中に木霊する。
理解が出来ず……。
ーーいや。
その会話の意味を理解しながらも"何かの聞き間違いだ"と、思いたいのに……。
「あいつには無理だ。
その企画案をそのまま形にする力はない」
あいつには無理だーー。
追い討ちをかける否定の言葉に、夢を一瞬にして砕かれる。
僕の中に微かに灯っていた光が……消えた気がした。
「アラン、お前だってそう思っているだろう?
それに……」
身体が冷えてきて、凍りついて……もう、前に進む事が出来ない。
けど、これ以上ここに居たくないのに……退く事も出来ない。
「あいつとあいつの母親がいなければ、お前の母親が死ぬ事もなかった。
あいつ等がお前と母親と父親の幸せを奪ったのだからな」
「っ……それは、……ッ」
家族に、なりたかった。
過去を忘れてしまっても、せめて仕事が出来るようになれば……。僕も祖父と弟の居る場所へ行けると思ってた。
でも……。
「仕事などあいつには必要ない。
私があいつに期待しているのは、ミネア嬢との件だけだ」
でも、それは……本当にただの理想。
僕の思い描いていた、空想でしかないのだと思い知る。
「あいつはただの種馬同然。
さっさとミネア嬢との間に世継ぎを設けて、その絆を確かにしてもらえば……用無しだ」
扉の隙間から、「クククッ……」と喉を鳴らして笑う祖父を見て悟る。
童話の醜い鳥は、将来美しくなって、優しい仲間に囲まれて空を羽ばたけるけれど……。きっと僕は、どんなに頑張ってもそんな風にはなれない。
永遠の、憧れでしかないのだと……。
……
…………。
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