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第17章(3)アカリside
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しおりを挟む『なんで、そんな瞳で……僕を見るんですか?』
二人きりの静かな部屋の中で、彼が私を見つめながら言った。
なんでーー?
そんなの、当たり前だった。
『言えばいい。貴方は私の夫なのだ、と……。
兄上に本当の事を話して、思い出してもらえ』
アラン様に言われた言葉が、やっと訪れた愛おしい人との甘い時間に酔う私の背中を、"真実を告げるチャンスだ!"と押す。
ずっとずっと逢いたかった。
忘れようとしても、忘れられなくて……。
離れていれば離れている程に、想いが募って……。
「っ……それは、貴方がッ……ーー」
貴方は、大切で愛おしい……。
この世でたった1人の、私の夫ーー。
……。
そう口から出かけた言葉は、途中でピタリと止まった。
いや。彼の傷付いた子供のような瞳を見たら、そんな事言えなくなった。
哀しい光を灯した瞳。
今の彼が求めている本当の答えは、きっと真実や過去ではないと悟ったから……。
私が言葉だけで真実を伝えても、彼自身が思い出さなければ……それは全て"嘘"と同じ。
ただ混乱させて、困惑させて、記憶を失くした事や今までのマオさんとしての時間を責めさせてしまうだけ……。
今の彼を、否定してしまう事になるのでは?
そう、思った。
今の貴方を、愛しているからーー。
と、言ってあげたい。
が。彼から"ヴァロン"の部分を全て取り払って胸を張ってそう言える程、私は"マオさん"の事を知らなさすぎたのだ。
もしもこのまま昔の記憶が全く戻らなくても、私は本当にこの先ずっと平気でいられる?
昔の彼を懐かしんだり、昔の彼と比べたり、その事で彼を傷付けたり……しない?
私は、“ヴァロン"に戻ってきてほしいだけなの……?
自身に問い掛けたら、いつの間にか瞳に溜まっていた涙が頬をつたり落ちた。
すると、それを見てハッとしたマオさんが慌て始める。
「!っ……す、すみませんっ!変な事聞いちゃって!
っ……あ、あの……ッ」
彼はその手を伸ばして、私の涙を拭う事もない。
その胸に抱き寄せて、頭を撫でてくれる事もない。
これが、今の彼なのだ。
「っーー!!」
目の前で慌てふためく彼の腕の中に自ら飛び込んで、私は泣いた。
その体温や匂いを"懐かしい"と感じる自分に、また涙が溢れてきて……。どこから、いつから夢の中に入ってしまったのか……分からなかった。
……
…………。
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