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第1章(3)紫愛side
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しおりを挟むだから、どうしても兄貴に会いたくて、アレクに無理を言って午後の訓練を少しだけ早く終わらせてもらってここに来た。
帰宅時間が遅いと、パパに気付かれちゃうから……。
兄貴に、一目だけでも会いたいーー……。
そう思ってカーテンの僅かな隙間から中の様子を伺っていると、なんと奥からこちらに向かって来る兄貴の姿が見えた。
どうやらお風呂に入っていたらしく、下はスウェットを履いているが上半身はまだ裸で、首から掛けたバスタオルで髪の毛を拭いている。
けど、そんな姿でもお構いなし。
兄貴を見付けた私は嬉しくなって、思わずパァッと笑顔になると窓ガラスに張り付いた。すると、
「!っ、……紫愛ッ?」
さすが人型魔物の兄貴。私が気配を消すのをやめたと同時にこちらに気付いてくれた。
でも、私がベランダに居る事にはさすがに驚いた様子で、慌てて駆け寄ってくると窓の鍵を開けてサッと部屋の中に入れてくれる。
そして、辺りを確認した後にしっかり戸締りとカーテンを閉めて……。
「っ~~~……っ、紫愛!お前っ、こんな所で何してるんだッ!」
プルプルと身体を震わせて拳を握り締めているのにも関わらず、隣人に聞こえないよう声を抑えて私に怒った。
それでも、私は嬉しくて仕方がない。
やっと会えて、嬉しくて嬉しくてどうしようもなくて、兄貴の首に腕を回してギュッと抱きついた。
お風呂上がりのせいでフワッと香る石鹸やシャンプーの匂いが先にくるけど、その中に感じる兄貴の匂いはやはり落ち着く良い香り。安心する。
気が緩んで、私は素直な気持ちを口にした。
「えへへっ、兄貴!大好き~っ!」
それ、は、私の本当に素直な純粋な気持ち。
けど、兄貴はそんな私をバッと引き離すとすぐに背を向けてしまって……。
「っ、良い歳してバカな事言ってんじゃねぇッ……。
いいか?冗談でももう二度と、そんな事言うな……っ」
そう、声を絞り出すようにして、私に言った。
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