90 / 141
第4章(3)弥夜side
4-3-2
しおりを挟む
***
『弥夜。
男と男の約束、だぞ?』
それが、お父さんとの最後の別れ際。
滅多に見せなかった珍しい笑顔で、僕の頭をポンポンッて叩くように撫でてくれた。
黒いマントのようなロングコートを靡かせながら消えて行った後ろ姿を、ずっとずっと忘れる事なんて出来なかった。
当時は小さくて頼りなかった僕だけど、きっと今なら力になれる。
お父さんを助けられる力が、今の僕にならきっとあると思った。
……
…………。
ハルさんとリンさんと別れた僕は部屋には戻らず、会議が終わったら総指揮官室に戻って来る筈の紫夕さんを物陰に隠れて待ち伏せした。
調査区域には、許可された隊員以外は入れないよう門が設置されている。
人型魔物である僕の力を持ってさえすれば、もしかしたら簡単に突破出来るかも知れないが、それは総指揮官である紫夕さんの面子を潰してしまう事になる。
それは、出来れば避けたい……。
迷惑をかけたい訳じゃない。
僕はただ、自分の実の父親が生きているのか自分で確かめたいだけなんだ。
だから紫夕さんと話して、今回の任務を僕に任せてくれれば、それだけで良かった。
本当のお父さんに会いたいーー。
ただ、それだけの想い。
総指揮官室の方に歩いてくる紫夕さんが目に映った瞬間、その気持ちだけで胸がいっぱいになって、僕は動いていた。
「父さ……っ、総指揮官……!!」
「っ、弥夜……」
強い想いに突き動かされた身体は止まらない。
僕は驚く紫夕さんに駆け寄ると、堰を切ったように口を開いた。
「お願いですっ、今回の任務は……ッ、ダークゲイルの調査は僕に行かせて下さいっ!!」
ずっと口には出さなかったけど、お父さんの事を忘れた日は1日もなかった。
「自分の目でッ……自分の手で、ハッキリさせたいんですッ!!」
幼過ぎて、手を伸ばす事すら出来なかった別れ際。
ずっと、ずっと後悔していた。
『弥夜。
男と男の約束、だぞ?』
それが、お父さんとの最後の別れ際。
滅多に見せなかった珍しい笑顔で、僕の頭をポンポンッて叩くように撫でてくれた。
黒いマントのようなロングコートを靡かせながら消えて行った後ろ姿を、ずっとずっと忘れる事なんて出来なかった。
当時は小さくて頼りなかった僕だけど、きっと今なら力になれる。
お父さんを助けられる力が、今の僕にならきっとあると思った。
……
…………。
ハルさんとリンさんと別れた僕は部屋には戻らず、会議が終わったら総指揮官室に戻って来る筈の紫夕さんを物陰に隠れて待ち伏せした。
調査区域には、許可された隊員以外は入れないよう門が設置されている。
人型魔物である僕の力を持ってさえすれば、もしかしたら簡単に突破出来るかも知れないが、それは総指揮官である紫夕さんの面子を潰してしまう事になる。
それは、出来れば避けたい……。
迷惑をかけたい訳じゃない。
僕はただ、自分の実の父親が生きているのか自分で確かめたいだけなんだ。
だから紫夕さんと話して、今回の任務を僕に任せてくれれば、それだけで良かった。
本当のお父さんに会いたいーー。
ただ、それだけの想い。
総指揮官室の方に歩いてくる紫夕さんが目に映った瞬間、その気持ちだけで胸がいっぱいになって、僕は動いていた。
「父さ……っ、総指揮官……!!」
「っ、弥夜……」
強い想いに突き動かされた身体は止まらない。
僕は驚く紫夕さんに駆け寄ると、堰を切ったように口を開いた。
「お願いですっ、今回の任務は……ッ、ダークゲイルの調査は僕に行かせて下さいっ!!」
ずっと口には出さなかったけど、お父さんの事を忘れた日は1日もなかった。
「自分の目でッ……自分の手で、ハッキリさせたいんですッ!!」
幼過ぎて、手を伸ばす事すら出来なかった別れ際。
ずっと、ずっと後悔していた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる