31 / 163
第2章(3)モニカside
3-2
しおりを挟む
【中庭】
散歩、といってももう夜なので遠くには行けない。
私達は邸の庭に出ると、手を繋いでゆっくりと歩き始めた。
静かな夜の空間。
特に会話を交わす事もなく少し歩いていると、
手を引かれるようにしていた私にジェイクが声を掛ける。
「モニカ。ほら、空を見てごらん?」
「え?……あ!わぁ~!!」
その言葉に俯いていた顔を上げると、その先にはキラキラと輝く星が夜空一面に広がっていた。
思わず足を止めて見惚れていると、ジェイクが繋いでいるのとは逆の手で私の肩掛けを直しながら言葉を続ける。
「今夜はね、星が特に綺麗に見える日なんだって。モニカと一緒に見たくてさ」
そう言った彼に目を向けると、夜の薄暗闇でも分かるくらいに真っ赤な顔。
照れ屋の癖にいつも頑張って私の前では格好良く在ろうとするジェイク。
そんな彼がなんだか可愛くて、私は思わずふふっと笑った。
「……良かった」
「?……何が?」
「やっと笑ったから。
モニカが、やっと笑ってくれたからさ」
「……」
ジェイクのそう言われて、私はハッとした。
彼は気付いていたんだ、私が元気がない事に。
だから、こうして散歩に連れ出してくれたのだと悟った。
私を見つめてくれる優しい瞳。
出逢った時から変わらない。
政略結婚で親同士が決めた結婚だからと何もかも諦めて、素直になれず我が儘だった私。
そんな私を、ジェイクはいつも優しく包んでくれた。
”出逢い方なんて、関係ありません。
僕と、ここからゆっくり始めませんか?”……。
結婚式当日に、彼は私にそう言った。
結婚をスタートに互いを知って行く、なんて常識破りだと思った。
けど、私を見つめる瞳があまりにも優しかったから……。信じよう、って思えた。
きっとあの瞬間、私はジェイクに恋をしたわ。
散歩、といってももう夜なので遠くには行けない。
私達は邸の庭に出ると、手を繋いでゆっくりと歩き始めた。
静かな夜の空間。
特に会話を交わす事もなく少し歩いていると、
手を引かれるようにしていた私にジェイクが声を掛ける。
「モニカ。ほら、空を見てごらん?」
「え?……あ!わぁ~!!」
その言葉に俯いていた顔を上げると、その先にはキラキラと輝く星が夜空一面に広がっていた。
思わず足を止めて見惚れていると、ジェイクが繋いでいるのとは逆の手で私の肩掛けを直しながら言葉を続ける。
「今夜はね、星が特に綺麗に見える日なんだって。モニカと一緒に見たくてさ」
そう言った彼に目を向けると、夜の薄暗闇でも分かるくらいに真っ赤な顔。
照れ屋の癖にいつも頑張って私の前では格好良く在ろうとするジェイク。
そんな彼がなんだか可愛くて、私は思わずふふっと笑った。
「……良かった」
「?……何が?」
「やっと笑ったから。
モニカが、やっと笑ってくれたからさ」
「……」
ジェイクのそう言われて、私はハッとした。
彼は気付いていたんだ、私が元気がない事に。
だから、こうして散歩に連れ出してくれたのだと悟った。
私を見つめてくれる優しい瞳。
出逢った時から変わらない。
政略結婚で親同士が決めた結婚だからと何もかも諦めて、素直になれず我が儘だった私。
そんな私を、ジェイクはいつも優しく包んでくれた。
”出逢い方なんて、関係ありません。
僕と、ここからゆっくり始めませんか?”……。
結婚式当日に、彼は私にそう言った。
結婚をスタートに互いを知って行く、なんて常識破りだと思った。
けど、私を見つめる瞳があまりにも優しかったから……。信じよう、って思えた。
きっとあの瞬間、私はジェイクに恋をしたわ。
0
あなたにおすすめの小説
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる