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第3章(1)アカリside
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しおりを挟むユウさんとこうして会うのは二週間ぶり。
四月の下旬に少し離れた町に引っ越しをして、そこの新しいお店の店長さんになったユウさん。
暫くバタバタしていたけど、なんとか落ち着いてようやく休みが取れたからって、今日は私に会いに来てくれたのだ。
恋人同士と言っても、私達の間にはまだ微妙な距離がある。
手も繋がなければ、結局額にされたキス以外あれ以来何もない。
まるで、子供のようなお付き合いだった。
私はそれが自分のせいだと分かっていながら、無理強いをしないユウさんに甘えてる。
酷い女。
友達以上恋人未満のような今の関係がずっと続けばいいと……。思っていた。
そんな都合の良い話、ある訳ないのに。
……。
保育所のお迎えまでまだ少し時間のあった私は、ユウさんに誘われて街外れにある並木道を一緒に散歩。
春になれば桜が満開に咲くこの場所も、今は初夏の青葉が茂っている。
ここは実は、ヴァロンとの想い出の場所の一つだった。
桜が舞い散る、人気の少ない明け方に、ヴァロンが私に結婚指輪をくれた場所。
「っ……」
ダメ。
思い出してはいけない。
そう思うのに、また想い出の中に愛おしい人を探して私は迷ってしまう。
少し前を歩くユウさんの背中すら、まともに見られない私。
すると……。
突然ユウさんが立ち止まったと思うと、振り返って俯いていた私に声をかけた。
「今日は、大事な話があるんだ」
いつもにない真剣な口調。
思わずハッとして顔を上げると、そこには真っ直ぐ私を見つめるユウさん。
「っ……だ、大事な……話?」
ドキンッと跳ねる鼓動。
聞き返しながらも、本当はユウさんの言いたい事が私には分かっていたんだと思う。
ただ、聞きたくなくて……。
それを言われてしまうのが怖くて、分からないフリをしたかった。
言われてしまったら、拒めない。
今更私には、断る権利なんてないのだから。
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