上 下
50 / 163
第4章(2)アカリside

2-3

しおりを挟む

その名前は、ヴァロンが長期任務の際に使っていた名前で……。
それはつまり、目の前の男性の正体を確信するには充分だった。


ヴァロン。
目の前の男性は、やっぱりヴァロン。

そう悟ったと同時に、私の瞳からは静かに涙から溢れ頬をつたり落ちた。

生きていた。
生きていて、くれた。
”生きてほしい”という三年前の私の想いは、ヴァロンにちゃんと届いていたのだ。


「!……ママ?」

「ま~ま、いたいいたいなの?」

胸がいっぱいになって込み上げる涙を堪え切れない私を、ヒナタとヒカルが心配そうに見ていた。
私につられて今にも泣き出しそうな子供達の表情に、なんとか止めようと拭うが涙は次々と溢れてくる。
想いと一緒に、止まらない。


「!……大丈夫ですか?
どこか具合いが悪いんですか?」

私の異変に気付いたヴァロンが、心配そうな視線を向けながら優しい声で尋ねてくれる。


ボヤける視野に映る、愛おしい人。

逢いたかった。
逢いたかった。
ずっとずっと、この瞬間を待ってたよ。

夢でも幻でもないヴァロンに触れられる。
そう思って手を伸ばす。


……が。そんな私の手を、彼じゃない誰かが取って強く握り締めた。


「あら~アカリ、久し振りじゃない!」

「!……え?」

「てか、どうしたのよ~こんなに泣いて!
何か悩み事?わたくしでよかったら聞くわよ!」

私の手をギュッと握るのは、ミネアさん。
初対面に等しいというのに、とても親しんだ様子の彼女の行動と言葉。私は驚いて思わず瞬きを忘れて呆然としてしまった。


「え?……。
ミネアさんの、お知り合いですか?」

「そうなの!でも会ったのは久し振り。
ねぇマオ様、わたくしアカリと話したい事がありますの。もう少しお待ち頂いていいかしら?」

私と同様に驚いているヴァロンに、ミネアさんはまるで親友に会った口調でそう告げる。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

史上最悪の王妃は2度目の人生を与えられました

oro
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:514

悲し寂しい時に

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

その関係はこれからのもの

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:4

後宮で侍女になった私は精霊に好かれている

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:90

1999年 魔都 魔王による世界統一

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

-アプリ- 最後の1人

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:2

泡沫の香り

H2O
青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...