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第4章(2)アカリside
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しおりを挟むその名前は、ヴァロンが長期任務の際に使っていた名前で……。
それはつまり、目の前の男性の正体を確信するには充分だった。
ヴァロン。
目の前の男性は、やっぱりヴァロン。
そう悟ったと同時に、私の瞳からは静かに涙から溢れ頬をつたり落ちた。
生きていた。
生きていて、くれた。
”生きてほしい”という三年前の私の想いは、ヴァロンにちゃんと届いていたのだ。
「!……ママ?」
「ま~ま、いたいいたいなの?」
胸がいっぱいになって込み上げる涙を堪え切れない私を、ヒナタとヒカルが心配そうに見ていた。
私につられて今にも泣き出しそうな子供達の表情に、なんとか止めようと拭うが涙は次々と溢れてくる。
想いと一緒に、止まらない。
「!……大丈夫ですか?
どこか具合いが悪いんですか?」
私の異変に気付いたヴァロンが、心配そうな視線を向けながら優しい声で尋ねてくれる。
ボヤける視野に映る、愛おしい人。
逢いたかった。
逢いたかった。
ずっとずっと、この瞬間を待ってたよ。
夢でも幻でもないヴァロンに触れられる。
そう思って手を伸ばす。
……が。そんな私の手を、彼じゃない誰かが取って強く握り締めた。
「あら~アカリ、久し振りじゃない!」
「!……え?」
「てか、どうしたのよ~こんなに泣いて!
何か悩み事?わたくしでよかったら聞くわよ!」
私の手をギュッと握るのは、ミネアさん。
初対面に等しいというのに、とても親しんだ様子の彼女の行動と言葉。私は驚いて思わず瞬きを忘れて呆然としてしまった。
「え?……。
ミネアさんの、お知り合いですか?」
「そうなの!でも会ったのは久し振り。
ねぇマオ様、わたくしアカリと話したい事がありますの。もう少しお待ち頂いていいかしら?」
私と同様に驚いているヴァロンに、ミネアさんはまるで親友に会った口調でそう告げる。
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