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第4章(3)アカリside
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【港街/広場】
心配するヒナタとヒカルをなだめ、私は作ってきたお弁当を食べるようにすすめると、少し離れた場所で子供達を見つめながらミネアさんとベンチに座った。
すると。
二人きりになった途端にミネアさんは口を開き、話し始める。
「貴女の御察しの通り、彼は元夢の配達人……。いえ、”貴女の元夫のヴァロン”よ。
……といった方がいいのかしら?」
淡々とした口調だが、どこか柔らかい響きが彼女を冷たいとは思わせない。
私はミネアさんの横顔を見つめながら、話に耳を傾けた。
「手術は上手く行ったわ。
……ただ、手術が終わって目覚めた時。彼は”ヴァロン”として生きてきた全ての記憶を失っていたの。
原因は不明。もしかしたら戻るかもしれないし、このまま何も思い出さない可能性もあるわ」
「!っ……」
記憶が、ない。
衝撃的だったが、ミネアさんの簡潔な説明に、先程のヴァロンの反応や態度が疑う事もなくピッタリと結びついた。
私の事をまるで知らないような……。
ううん、何も知らない。
世間知らずの子供のようなあの瞳と表情。
彼がヴァロンで在ってヴァロンではなかった意味が、分かった。
「勘違いしないでちょうだいね。
彼の記憶の喪失はあくまでも、偶然。シャルマ様やわたくし達の企みでも、なんでもないわ」
「っ……そんな事、思いません!」
弁解するようなミネアさんの言葉に、私は思わず声を上げて首を横に振った。
ヴァロンは、生きていた。
三年間、生きていてくれた。
以前より少し痩せたように見えたが、穏やかな雰囲気に、清潔感のある装い。
ちゃんとそれなりの生活をしているんだと感じた。
そしてなにより、隠そうと思えば一生隠し通す事も出来ただろうに……。ミネアさんは私を引き止めて、ヴァロンの事を話してくれた。
その優しい心が、彼女の言葉は嘘ではないと信じられる。
心配するヒナタとヒカルをなだめ、私は作ってきたお弁当を食べるようにすすめると、少し離れた場所で子供達を見つめながらミネアさんとベンチに座った。
すると。
二人きりになった途端にミネアさんは口を開き、話し始める。
「貴女の御察しの通り、彼は元夢の配達人……。いえ、”貴女の元夫のヴァロン”よ。
……といった方がいいのかしら?」
淡々とした口調だが、どこか柔らかい響きが彼女を冷たいとは思わせない。
私はミネアさんの横顔を見つめながら、話に耳を傾けた。
「手術は上手く行ったわ。
……ただ、手術が終わって目覚めた時。彼は”ヴァロン”として生きてきた全ての記憶を失っていたの。
原因は不明。もしかしたら戻るかもしれないし、このまま何も思い出さない可能性もあるわ」
「!っ……」
記憶が、ない。
衝撃的だったが、ミネアさんの簡潔な説明に、先程のヴァロンの反応や態度が疑う事もなくピッタリと結びついた。
私の事をまるで知らないような……。
ううん、何も知らない。
世間知らずの子供のようなあの瞳と表情。
彼がヴァロンで在ってヴァロンではなかった意味が、分かった。
「勘違いしないでちょうだいね。
彼の記憶の喪失はあくまでも、偶然。シャルマ様やわたくし達の企みでも、なんでもないわ」
「っ……そんな事、思いません!」
弁解するようなミネアさんの言葉に、私は思わず声を上げて首を横に振った。
ヴァロンは、生きていた。
三年間、生きていてくれた。
以前より少し痩せたように見えたが、穏やかな雰囲気に、清潔感のある装い。
ちゃんとそれなりの生活をしているんだと感じた。
そしてなにより、隠そうと思えば一生隠し通す事も出来ただろうに……。ミネアさんは私を引き止めて、ヴァロンの事を話してくれた。
その優しい心が、彼女の言葉は嘘ではないと信じられる。
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