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第4章(4)マオside
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しおりを挟む知らない場所、知らない人達。
世話を焼いてくれる先生や看護師さん達の存在にすら、申し訳なくて……。
そして、怖かった。
何も思い出せない。
リハビリでも大した経過を見せられない僕に向けられる、残念な視線。
呆れたような溜め息。
人と接するのが次第に怖くなって、自分から話す事も、目を合わせる事も出来なくなっていった。
リハビリを受ける度に頭に浮かぶ、”何でこんな事をしなきゃいけないんだろう?”という思い。
周りを見渡せば、他の患者さんには家族や友達がいて、励まされて、支えられていた。
その光景が映る度に、和気藹々とした雰囲気が胸を締め付ける。
一緒に頑張ってくれる人も、喜んでくれる人もいない孤独の中で、僕は誰の為に頑張ったらいいのか分からなかった。
自分の為に、と頑張ればいいのかも知れないけど……。
この時の僕は、そう思う事さえ出来ないくらいに追い込まれていた。
そんな時だった。
ミネアさんが、僕の病室にやってきたのは……。
入院生活が三ヶ月程過ぎた、ある日。
リハビリの時間でもないのに、僕の病室の扉がガラッと勢い良く開いた。
ここ暫く誰も面会に来なかった僕にとって、先生や看護師さん以外の訪問には戸惑いを隠せなくて……。
でも、見知らぬ女性は屈託もなく微笑んで言った。
「一緒に散歩に行きません?マオ様!」
赤みがかった茶髪を窓から射す日差しでオレンジ色に輝かせながら、パッチリした猫目を細めて笑顔を見せる、とても美しい女性。
僕に向かって微笑んでくれた、その初めての存在に驚いて……。
あんなに苦手だった相手と見つめ合うという事が、一瞬自然と出来ていた。
すぐに我に返って、目を逸らしてしまったけど……。
この時、確かに胸に暖かさを感じた瞬間だった。
笑顔で傍に居てくれる存在。
彼女が僕に、生きている意味をくれた。
……
…………。
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