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第4章(5)マオside
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しおりを挟む突然、僕の目の前に現れた女性。
名前はミネアさんと言った。
記憶を失っている僕にとっては初対面同然だったけど、彼女の話し方や接し方から、以前から面識があったのだと何となく分かる。
それから……。
初めて面会に来てくれたその日から、ミネアさんは頻繁に僕の元を訪れるようになっていた。
何気ない話をしに来てくれたり、差し入れを持って来てくれたり……。
時には僕を散歩に連れ出し、リハビリにも付き添ってくれた。
でも、僕は何も出来ない。
話し掛けられても上手く対応出来なければ、せっかくの差し入れにも食欲が湧かず……。
散歩だってほとんど彼女に車椅子を押してもらって、リハビリも大した成果は得られない。
そんな毎日は彼女にとって、良い事なんて何一つない筈だった。
喜ばせられる事なんて出来ない以前に、人をガッカリさせる事しか僕には出来ない。
それなのに、僕の所へやって来て嬉しそうにしているミネアさんが……。
僕には意味不明で仕方がなかった。
彼女の笑顔を見る度に、不思議で仕方がなかったんだ。
そんな日々が暫く続いて、僕は知った。
彼女が大手企業の社長令嬢で、次期に父親からその座を譲り受ける存在である事を……。
自分の祖父や弟もそれなりの地位を持っている事も分かっていたが、ミネアさんの存在は更にその上。
まさに”高嶺の花”というに相応しい存在だった。
不思議に感じていた疑問が、ようやくハッキリする。
そんな身分の彼女が僕に近付く理由なんて、たった一つ。
ボランティアでしかない、という事。
特別な理由を期待していた訳ではなかったけど、あの笑顔が”ボランティア”なのだと思ったら正直悲しくて心が沈んだ。
でも……。
同情なら、もう来るな!!
そう言いたいのに、笑顔で僕の元を訪れてくれるミネアさんを見たら言えなくて……。
また誰も面会に訪れてくれない独りぼっちの日々に戻るくらいなら、例え同情でも傍に居てほしいと思ってしまう弱い僕が居た。
唯一、自分に微笑んでくれる彼女の存在を、僕は跳ね除ける事なんて出来なかった。
そうやって、何も言えないまま月日だけが過ぎて……。季節は秋になっていた。
……
…………。
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