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第4章(5)マオside
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しおりを挟む「……僕の、事。
好き……なんですか?」
好き、に色んな感情がある事は何となく分かっている。
食べ物や友人に使う、普通の好き。
そして、異性や恋人に使う、特別な好き。
この場合はどちらなのだろう?
と、頭を過ったが……。
僕の質問に対するミネアさんの反応を見れば、それは一目瞭然だった。
「!っ……え?
や、やだっ!わたくし、今っ……すごく恥ずかしい事を言った?!」
僕に真っ直ぐ見つめられて質問をされた彼女は真っ赤になって、染まった両頬を手で押さえてパッと背を向けた。
照れてるミネアさん。
綺麗で大人っぽいと思っていた彼女の、初めて見るその姿に……。
胸がトクンッて、高鳴った。
素直に可愛いな、って思って。
彼女の”好き”が、嬉しくて……。
彼女が必要としてくれるならば、生きようって思った。
彼女が微笑んでくれるならば、傍にいようって思った。
これが恋なんだって、思った。
……
…………。
ミネアさんと恋人になってからは、色んな事が変わり始めた。
彼女の存在に支えられて、それまでの入院生活が嘘のように順調になって、リハビリにも成果が表れて経過も良好。
それから半年も経たない間に退院出来て、自宅療養しながら時々通院するだけでよくなった。
自宅は居心地が良いか、と問われたら今も返答に困るけれど……。仕事で忙しい祖父と弟はあまり家にいる事はなく、使用人達と暮らす日々。
それに、僕とミネアさんが恋仲になった事で祖父の態度は明らかに変わっていった。
容姿の件に関しては相変わらず厳しかったが、”彼女との交際が順調ならば”と……。それ以外は特に僕に冷たく当たる事も、厳しい扱いを受ける事もなくなって、表面上は以前よりも家族らしくなれた気がした。
そして。退院した一年後には、弟に習いながら少しずつ仕事を覚える事を始めた。
正直、全てを一からに近い僕には難しくて意味不明な事ばかりで……。
弟の優秀さを痛感させられる毎日に、何度もめげそうになった。
でも、何も出来ないままの自分を変えたい。
ミネアさんにとって、少しでも恥ずかしくない存在になりたかった。
〈回想終了〉
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