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第5章(1)アカリside
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【6月15日/港街のパン屋】
蒸し暑いような、少し寒いような、梅雨の季節。
今朝も天気は微妙で、いつ雨が降ってきてもおかしくない雰囲気だった。
そんな天候のせいか、今日はパート先のパン屋さんにはお客さんも少なくて、レジ番の私はついついボーッと考え事をしてしまう。
ヴァロンと再会して、ミネアさんから話を聞いた数日後……。
一部の新聞や雑誌には”大手企業の社長令嬢御婚約!”と、確かに書かれていた。
大体的に書かれているのはミネアさんの事で、彼女の会社に比べたらまだ小さい会社の人間だからか、ヴァロン……。
いや、”マオ”の名前はもちろん。詳しい事は何も語られていなかった。
けど、当の本人であるミネアさんから聞いてしまった私にはハッキリ分かっている事。
記事の情報が正しく、来年春頃に挙式なのならば……。徐々にミネアさんの相手が誰なのかも、世に知れ渡っていくのだろう。
そうなれば、もう二度と”私の夫”などと呼べない存在だ。
私と一緒にヴァロンの帰りを待つと言ってくれた、子供達。
ヒナタとヒカルにも、また嘘を貫き通す事になる。
”パパは別の女性と結婚する”、なんて……。
口が裂けても言えない。
父親の存在を話して以来、毎日のようにヴァロンのアルバムをめくって嬉しそうに眺めている子供達。
「あのね!ふたりで、パパかいたの~!」
私がパート中に預けている保育所で、二人で描いたヴァロンの似顔絵をこの間見せてくれた。
今までに見た事がないくらいに、絵も、ヒナタとヒカルの笑顔も素敵で……。
私は涙を堪えるのが必死だった。
幸い、この間会ったマオの姿の彼がヴァロンだとは子供達は気付いてない。
髪も瞳の色も写真とは違うし、何よりも記憶を失ったヴァロンは、とても三十代後半とは思えない位に雰囲気が幼かった。
以前も充分に若く見えたが、ヒナタやヒカルが”お兄ちゃん”と言ったように……。おそらく二十代後半のミネアさんと同じ位にも見える程だ。
蒸し暑いような、少し寒いような、梅雨の季節。
今朝も天気は微妙で、いつ雨が降ってきてもおかしくない雰囲気だった。
そんな天候のせいか、今日はパート先のパン屋さんにはお客さんも少なくて、レジ番の私はついついボーッと考え事をしてしまう。
ヴァロンと再会して、ミネアさんから話を聞いた数日後……。
一部の新聞や雑誌には”大手企業の社長令嬢御婚約!”と、確かに書かれていた。
大体的に書かれているのはミネアさんの事で、彼女の会社に比べたらまだ小さい会社の人間だからか、ヴァロン……。
いや、”マオ”の名前はもちろん。詳しい事は何も語られていなかった。
けど、当の本人であるミネアさんから聞いてしまった私にはハッキリ分かっている事。
記事の情報が正しく、来年春頃に挙式なのならば……。徐々にミネアさんの相手が誰なのかも、世に知れ渡っていくのだろう。
そうなれば、もう二度と”私の夫”などと呼べない存在だ。
私と一緒にヴァロンの帰りを待つと言ってくれた、子供達。
ヒナタとヒカルにも、また嘘を貫き通す事になる。
”パパは別の女性と結婚する”、なんて……。
口が裂けても言えない。
父親の存在を話して以来、毎日のようにヴァロンのアルバムをめくって嬉しそうに眺めている子供達。
「あのね!ふたりで、パパかいたの~!」
私がパート中に預けている保育所で、二人で描いたヴァロンの似顔絵をこの間見せてくれた。
今までに見た事がないくらいに、絵も、ヒナタとヒカルの笑顔も素敵で……。
私は涙を堪えるのが必死だった。
幸い、この間会ったマオの姿の彼がヴァロンだとは子供達は気付いてない。
髪も瞳の色も写真とは違うし、何よりも記憶を失ったヴァロンは、とても三十代後半とは思えない位に雰囲気が幼かった。
以前も充分に若く見えたが、ヒナタやヒカルが”お兄ちゃん”と言ったように……。おそらく二十代後半のミネアさんと同じ位にも見える程だ。
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