夢の言葉と約束の翼(上)【続編⑤】

☆リサーナ☆

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第5章(2)アカリside

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【港街】

雨は、なかなか止みそうにない。


パン屋さんに駆け込んできた彼は、雨に濡れていた。
傘を持って、いなかったのだろうか?

さっきよりも強くなっている雨。
あんな小さなハンカチでは、もう拭いきれないはずだ。

風邪をひいたり、しないだろうか?


……。

何も考えたくない。
もう、気にしたくなんてないのに……考えてしまう。

ゆっくりと帰路を進む私の頭の中には、ヴァロンの事ばかりが浮かぶ。
きっとまだ、この街の何処かに居るであろう彼。


「っ……あの人は、もうヴァロンじゃないの」

小さく呟いて、言葉にして自分に言いきかせた。


ヴァロンはあんなにオドオドした人じゃない。
飲み物はほとんどお水しか飲まなくて、ホットミルクなんてお店で注文する人じゃなかった。

それから……。
それからっ……。

必死に”マオ”の存在を否定しようと、以前の彼とは違うところを思い浮かべた。


……でも。
嫌いになれるはずなんて、ない。

幼い頃に出逢った彼。
召し使いとして、再会した彼。
夢の配達人としての彼。
恋人、夫としての彼に幾度となく惹かれたように……。

私は、また彼に恋をしてしまうの。

……。

曲がり角に差し掛かった私の瞳に映るのは、少し離れた軒下の片隅で屈んでいる男性。
男性は背を向けているのに、私には分かってしまうの。

どうして、見付けてしまうんだろう?

そう思うと同時に、”見付けた”と胸が暖かい鼓動をトクンッと鳴らした。


これ以上、距離も心も近付いてはいけないと思うのに……。
私の足は、自然と彼の方に向かって歩み出していた。
傘の持ち手を握る手に、力が入る。

彼の背から瞳を逸らす事が出来ず、一歩一歩その距離を縮めて行くと彼の声が聞こえた。
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