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第6章(3)マオside
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しおりを挟む僕が口を開けば、その言葉はいつも鋭い刃のように形を変えて返ってきた。
だから相手の反応が怖くて、ビクビクおどおどしてしまう。
本当は必要以上に会話も、人と関わる事もしたくもなかった。
相手には、届かない気持ち。
伝わらない気持ちを口にするのは、痛い。
ずっとずっと、そう思ってきた。
だから会話は常に「はい」とか「いいえ」とか、相手の質疑に答える事を中心にしてきた。
僕の言葉で誰かを喜ばせたり笑顔に出来るなんて、思ってなかったんだ。
それなのにーー。
「っ……本当ですかっ?よかったぁ!」
僕の耳に届いた、明るく弾んだ声。
驚いて顔を上げると目の前に広がっていたのは、とても嬉しそうに微笑むアカリさんの笑顔だった。
見た瞬間、初めて感じる衝撃的とも言える感覚。
それはまさに心臓を鷲掴みにされたみたいで、呼吸が止まってしまいそうな位に大きな鼓動が、鐘が鳴っているかのように僕に響く。
何だろう?この感覚は……?
胸がギュッとなって、熱くて、苦しい。
目の前のアカリさんは微笑ってくれているのに、なぜ自分は嬉しいではなく苦しいのだろう?
ーー苦しい?
いや、違う。
僕は笑顔の彼女を、ずっと見ていたいって思ってる。
嬉しいけど、そうじゃない。
可愛い、とも違う。
もっと、違う……”別の気持ち”?
初めてミネアさんが僕に微笑んでくれた時、彼女を可愛いと思い、その存在が嬉しかった。
心地良くて、傍に居たいと思った。
その時とはまた違う、初めての感情。
アカリさんの笑顔を見ていたいと思うのに、すごく落ち着かない。
この場から逃げ出したいような、このまま時が止まって欲しいと思う程に離れ難いような、そんな矛盾だらけの気持ちが広がるんだ。
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