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第6章(3)マオside
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しおりを挟む「!……あ、ごめんなさいっ。
そ、そのっ……美味しいかなぁ?って思い、まして……」
僕と目が合うと、正面の席のアカリさんは頬を赤らめてモジモジとした。
そして、その後も恥ずかしそうにしながらもチラチラと視線送ってきて、僕の反応を待ってるのがまる分かり。
思わず頬が、少し緩む。
可愛い、って思わない男性なんていない。
そう思う位の仕草を見ていたら、無性にアカリさんを喜ばせたくなって、もう一度笑顔が見たいなって思って……。
僕はオムライスをスプーンすくって、口に運んだ。
美味しい、なんてこの三年間一度も感じた事がなかった。
食べる事、食事の時間なんて苦痛でしかなかった。
それなのにーー。
「……美味しい」
彼女のオムライスを一口食べた僕は、無意識にそう言っていた。
彼女を喜ばせようとか、お世辞じゃない。
自然と思った事が口から飛び出した言葉。
トマト風味に味付けされたケチャップライスがふわとろに焼かれた玉子でまろやかな味にされて、濃くも薄くもなく口の中で溶けていくようだ。
ーー美味しい。
もっと気の利いた言葉や褒め言葉があるのかも知れないが、僕にはそれ以上の表現が見付からなかった。
だから、素直にもう一度言った。
「すごく美味しいです。
今まで食べた物の中で、1番!」
まともに料理の味も知らない。
言葉を使って上手く表現する事も出来ない僕の、精一杯。
でも……。
”そんな当たり前の事しか言えんのか?”
仕事でも、私生活でも、祖父の問い掛けに答えれば何を言ってもそう返された。
それを思い出した僕は、ハッと口を押さえて目を伏せる。
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