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第7章(1)アランside
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しおりを挟む一人の男を取り合う女の修羅場。
私はこの世で、これ以上醜いものはないと思っている。
我が母と兄の母が、父を奪い合った醜い感情。
恋だとか、愛だとか。
綺麗な言葉にしているだけで、私にとってそれは”醜い感情”でしかなかった。
だから私は”特別”だれかを想ったりはしないし、ましてや想われたくもない。
いずれ妻を娶り、世継ぎを設けるという事は避けられない現実だという事は理解している。
が、相手にそれ以上は求めたりしない。
子供さえ産んでくれれば、私にとって後はどうでもいい事だった。
三年前。
アカリ様を捕らえ監禁した際は、彼女の真っ直ぐな想いに僅かながら心動かされた事もあった。
それは事実。
けれど。
こうしてわざわざ赴き、ミネア嬢に宣戦布告をし、穏やかな今の生活に波風を立てようとする。
それ故に泣き、傷付く子供達の事を考えもしない。
結局、アカリ様も”醜い感情”の持ち主なのだ。
「……それは、”わたくしからマオ様を奪う”という宣戦布告のつもりかしら?」
巻き込まれるのは御免だ、と席を立とうとした私の横でミネア嬢が問う。
聞くまでもない返答。
の、筈なのに……。
アカリ様の言葉が、私をその場に留まらせた。
「いいえ、それだけです」
「!……え?」
「私は、何年経っても……。
いえ、例え生まれ変わってもヴァロンが大好きなんだって……。言いたくて、きました」
控え目だが、真っ直ぐに自分の気持ちを口にするアカリ様の言葉と姿に、度肝を抜かれたのは私だけではなくミネア嬢も同じだろう。
黙っている私達の前で、アカリ様は言葉を続ける。
「ミネアさんはこの前、私に全てを話してくれました。
……でも。私はあの時、1番大切な素直な気持ちを何一つ伝えていなかった。
守る事に必死で、誤魔化して、逃げていたんです」
嘘偽りのない気持ちが、アカリ様の瞳から溢れミネア嬢に向かっていた。
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