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第7章(2)ディアスside
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【6月下旬/シャルマ邸】
「ディアス!
おかえりなさい、待ってたんだ!」
私が帰宅した早々、声を弾ませて玄関で出迎えて下さったのは我が主人であるマオ様。
名家の執事でありながら、夢の配達人の金バッジというもう一つの顔を持つ私がマオ様と顔を合わせるのは約一ヶ月振りだった。
三年前の事件を境に、夢の配達人としての自分を一度捨てようかとも悩んだ。
”ヴァロン様”の代わりに白金バッジへの昇格を当時マスターだったギャラン様に薦められたが、それは辞退。
私は記憶を失くしたヴァロン様……。
ーーいや、マオ様専属の執事として生きる事を決めたのだ。
しかし。
誰よりも夢の配達人を愛し、人の夢を叶え続けてきた主人の志を継ぎたいという気持ちもあった。
そんな想いから今でも夢の配達人に籍を置き、金バッジから降格しない程度の任務を熟している。
今日はその為の長期任務から、久々にシャルマ様のお屋敷に帰宅した。
そんな私をマオ様は主人という身分関係なく、いつもこうして出迎えて下さる。
いつもならばマオ様のお父上様であるリオン様と過ごした昔を思い出し、表情を和ませる私だ。
が、今日は普段とは違うマオ様の雰囲気に驚かされた。
「只今、戻りました。
……今日はずいぶんとご機嫌がよろしいのですね?何か良い事でもございましたか?」
目の前の主人の元気の良い姿に、思わずそう尋ねずにはいられなかった。
なぜなら一ヶ月前の、私の知るマオ様とは明らかに表情が違っていたのだ。
記憶を失くして以来、口数も少なく消極的で、いつも相手の様子を伺うようにオドオドしていたこの方が……。
今日は、私と目を合わせて会話している。
驚かずにはいられない変化だか、マオ様はそんな私の問い掛けに「そうかな?」とでも言いたげに首を少し傾げていた。
「ディアス!
おかえりなさい、待ってたんだ!」
私が帰宅した早々、声を弾ませて玄関で出迎えて下さったのは我が主人であるマオ様。
名家の執事でありながら、夢の配達人の金バッジというもう一つの顔を持つ私がマオ様と顔を合わせるのは約一ヶ月振りだった。
三年前の事件を境に、夢の配達人としての自分を一度捨てようかとも悩んだ。
”ヴァロン様”の代わりに白金バッジへの昇格を当時マスターだったギャラン様に薦められたが、それは辞退。
私は記憶を失くしたヴァロン様……。
ーーいや、マオ様専属の執事として生きる事を決めたのだ。
しかし。
誰よりも夢の配達人を愛し、人の夢を叶え続けてきた主人の志を継ぎたいという気持ちもあった。
そんな想いから今でも夢の配達人に籍を置き、金バッジから降格しない程度の任務を熟している。
今日はその為の長期任務から、久々にシャルマ様のお屋敷に帰宅した。
そんな私をマオ様は主人という身分関係なく、いつもこうして出迎えて下さる。
いつもならばマオ様のお父上様であるリオン様と過ごした昔を思い出し、表情を和ませる私だ。
が、今日は普段とは違うマオ様の雰囲気に驚かされた。
「只今、戻りました。
……今日はずいぶんとご機嫌がよろしいのですね?何か良い事でもございましたか?」
目の前の主人の元気の良い姿に、思わずそう尋ねずにはいられなかった。
なぜなら一ヶ月前の、私の知るマオ様とは明らかに表情が違っていたのだ。
記憶を失くして以来、口数も少なく消極的で、いつも相手の様子を伺うようにオドオドしていたこの方が……。
今日は、私と目を合わせて会話している。
驚かずにはいられない変化だか、マオ様はそんな私の問い掛けに「そうかな?」とでも言いたげに首を少し傾げていた。
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