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第7章(1)アランside
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【暫くして】
「私が好きなのは、”今の彼”。
勿論、思い出してくれたら嬉しいです。
……でも、彼がいてくれたらそれだけでいい。想い出なんて、また作り直せばいいんです!」
……。
そう言って、アカリ様は帰って行った。
残された部屋の中。
ずっと黙って窓から外を眺めていたミネア嬢が、帰ろうとする私に言う。
「今日の事は、シャルマ様の耳には決して入れないでちょうだい。
……絶対よ?約束して」
その言葉こそ、ミネア嬢がアカリ様を認めた証拠だった。
決して見返りも求めず、今を懸命に受け止めて生きる相手に、自らが余計な手を借りる訳にはいかない。
ーーいや、卑怯な手で勝ちたくない。
ミネア嬢の背中が、そう語っていた。
「……かしこまりました。
では、今日は失礼致します」
彼女に向かって一礼すると、私は部屋を後にした。
ホテルの廊下を一歩一歩進む度に、先程のアカリ様を思い出して胸が騒ぐ。
忘れ去っていた、幼い日の感情。
欲しい物を見付け、胸を弾ませた時によく似ていた。
ーーけれど、少し違う。
むず痒いような、心が暖かい、そんな気持ちに表情が緩む。
早足になるとホテルを出て、待たせていた車に乗り込み、自分を迎えた秘書に告げる。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりと。
「……決めたぞ。私もそろそろ身を固める。
ただし、相手はアルバート様の孫娘アカリ様だ。それ以外は認めん」
秘書は分かりやすいぐらいに目と口を開いて、唖然としていた。
それが私の発言に対してなのか、珍しく上機嫌で笑顔を見せたからなのかは不明だったが……。そんな事はどうでもいい。
初めて女性に対して芽生えた気持ちに、私は鼓動を高鳴らせていた。
「私が好きなのは、”今の彼”。
勿論、思い出してくれたら嬉しいです。
……でも、彼がいてくれたらそれだけでいい。想い出なんて、また作り直せばいいんです!」
……。
そう言って、アカリ様は帰って行った。
残された部屋の中。
ずっと黙って窓から外を眺めていたミネア嬢が、帰ろうとする私に言う。
「今日の事は、シャルマ様の耳には決して入れないでちょうだい。
……絶対よ?約束して」
その言葉こそ、ミネア嬢がアカリ様を認めた証拠だった。
決して見返りも求めず、今を懸命に受け止めて生きる相手に、自らが余計な手を借りる訳にはいかない。
ーーいや、卑怯な手で勝ちたくない。
ミネア嬢の背中が、そう語っていた。
「……かしこまりました。
では、今日は失礼致します」
彼女に向かって一礼すると、私は部屋を後にした。
ホテルの廊下を一歩一歩進む度に、先程のアカリ様を思い出して胸が騒ぐ。
忘れ去っていた、幼い日の感情。
欲しい物を見付け、胸を弾ませた時によく似ていた。
ーーけれど、少し違う。
むず痒いような、心が暖かい、そんな気持ちに表情が緩む。
早足になるとホテルを出て、待たせていた車に乗り込み、自分を迎えた秘書に告げる。
はやる気持ちを抑え、ゆっくりと。
「……決めたぞ。私もそろそろ身を固める。
ただし、相手はアルバート様の孫娘アカリ様だ。それ以外は認めん」
秘書は分かりやすいぐらいに目と口を開いて、唖然としていた。
それが私の発言に対してなのか、珍しく上機嫌で笑顔を見せたからなのかは不明だったが……。そんな事はどうでもいい。
初めて女性に対して芽生えた気持ちに、私は鼓動を高鳴らせていた。
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