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第7章(3)ユイside
3-3
しおりを挟むーーけど。
自分が幼い日に憧れた、勇者様とお姫様の幸せを願い、戦い抜いた女戦士にも……。
私は、なれない。
「……私には、無理だったんです。
リディア母さんのようにも、ヴァロンさんのようにも……。私は、なれないっ」
たくさんの人の夢を叶え続けた、立派な両親。
私に美しい心を持ち、可愛い女の子になってほしいと願って、命をかけて産んでくれた強い母。
突然現れた私の存在を受け入れて、優しく「ありがとう」と包んでくれた、広くて晴れ渡る空のように澄んだ心を持った父。
あまりにも自分とは違い過ぎる眩しい存在は、今の私にはどんなに手を伸ばしても掴めない”夢”そのものだった。
追いかけても追いかけても、いつもその夢との距離は縮まる事はない。
「アカリさんは諦めないそうですよ!」
墓の前から立ち上がり、去ろうと背を向けた私にレイさんが言った。
「ヴァロン様が、生きていらしたんです。
記憶を失くされて、別人のようになってしまわれているそうですが……生きているんです」
……知ってる。
ヴァロンさんらしい人物が大手の企業の令嬢と婚約中だと、謹慎中に雑誌で読んだから。
生きているのだと知った時、確かにホッとした。
熱い気持ちが込み上げて、鼓動が高鳴った。
ーーでも!
今の状況下で、今更何が出来るというの?
ヴァロンさんが生きていてくれたとしても、それでシャルマと結んだ約束が消える訳ではない。
”生きていていて良かったね!”って、全てが元通りになる訳ではない。
むしろ、生きているのに以前のように接する事の出来ない生殺しのような状態なのだ。
「アカリさん、ボク等に手を貸してほしいってもう一度頼ってくれたんです!
だから、ユイさんも一緒にっ……」
「諦めないって、何が出来るって言うの?!」
諦めない、なんて口ではいくらでも言える。
でも、そんなに簡単な問題ではないと思った私は声を上げていた。
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