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第7章(5)シュウside
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しおりを挟むそんな訳ないーー。
そう思いながらも、私の中はリディアでいっぱいになっていた。
ドクンッドクンッと身体に響く鼓動と共に、リディア、リディアと何度も心の中で彼女の名前を呼ぶと、私は声のした方向へバッと振り返った。
すると、それと同時にすぐ傍まで来ていた人物が口を開く。
「マスター、ユイです!只今、戻りました!
無断で調査員の任を離れたご無礼、軽率な行動をどうかお許し下さいませ!」
懐かしい香りを漂わせながら、リディアが命を懸けて残した蕾が、座っている私と目線を合わせるように正面に跪いていた。
ーーそうだ。
リディアが、もうここに居るはずはない。
けれど、ユイが身に付けている懐かしい香水と美しい声色が、私の心に優しく沁み渡る。
束の間だが癒されて、冷静にしてくれた。
「無断欠勤の処罰は、どんな事でも受けます!
っ……ですからッ、どうか……ッ」
声を絞り出しながら、ユイは頭を下げるように俯いた。
彼女の言いたい事は、その先に続く言葉は分かっている。
おそらくユイも辞表を提出し、レナとレイに付いてアカリさんを助けたいのだろう。
当然だ。
彼女はリディアとヴァロンの娘。
母親が果たせなかった父親の幸せを守りたいと思うのは、当たり前の事。
「……ユイ」
「!……は、はいっ」
「ここを去ると決めた者に、処分はありません。
辞表と手続きを済ませたら、それ以上は何も求めませんよ」
「!……え?」
ユイの決断に反対するつもりもない私は、静かに告げた。
彼女が特別ではない。
夢の配達人、調査員の辞職や引退は各自が決める事であり、問題を起こした場合を除いて、例えマスターの立場であってもそれをすすめる事も止める事も出来ない決まりだ。
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