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第8章(5)アカリside
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しおりを挟む彼の背中を見つめながら、笑みをこぼす私。
ーーだが。
彼が子供達の元へあと少し、という所で私は「あっ!」と思い出して叫んだ。
「マオさん!ダメですっ!!ストッ……」
「ーーっうわ!?」
「ストップ!」の言葉は無情にも、間に合わなかった。
私の目に映るのは……。
地面の穴から噴射した水によって、ずぶ濡れになっているマオさん。
「わぁ~い!ひっかかった~!」
「マオしゃん、びしゃびしゃ~!」
ずぶ濡れになって茫然と佇むマオさんの側で、ヒナタとヒカルは「キャッキャッ!」と喜んで跳び上がっている。
人が通ると反応して、地面から水が噴き出す仕掛けのある場所。
以前、私も子供達にまんまと誘導されて引っかかってしまった。
「っ~~~!
もうっ、2人とも!何やってるの!!」
私が怒りながら駆け寄ろうとすると、ヒナタとヒカルは「きゃ~!」と笑顔で散って行く。
無邪気で可愛い子供達。
でも、まさか”マオさん”にこんな事をしてしまうなんて……。
「ーーすみません!
ス、スーツ!ずぶ濡れにしちゃって……っ、あの……」
”どうしよう”と、顔が青ざめる。
こんな事、いくら何でも初対面に近い……。と言うか、彼にとって今ヒナタとヒカルは”他人”も同然の存在。
そんな子供にこんなイタズラをされて、何とも思わない人なんている訳ない。
とにかく謝らなきゃ!と、心配になる私だった。
が……。
ーーそれは取越し苦労。
「……フッ、っ……あははははっ!!」
「!っ……え?」
マオさんの反応に、持っていたタオルを鞄から取り出し渡そうとしていた私は驚いた。
彼が笑ってる。
イタズラされたのに、すごく嬉しそうに笑っていたのだ。
そして……。
「ーーははっ、やられた~。
こら~っ、ヒナタちゃん!ヒカル君~!!」
「きゃーっ!」
「にげろ~っ!」
マオさんは伊達眼鏡を外して、濡れて額にくっ付いた前髪をかき上げると、意地悪そうにも見える笑顔で逃げる子供達を追いかけ始めた。
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