夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

☆リサーナ☆

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第20章(4)マオside

4-3

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その個室は限られた人しか使えない特別な病室なんだろう。
他の病室や看護師が待機している場所からは離れていて、夜になるといっそう静か。
もう消灯の時間だと担当の看護師がついさっき伝えに来てくれたから、おそらくもう人が来る事はほとんどない。

話すなら、今なのに……。

「っ……ミネアさん、寒くないですか?
夜になるといっそう冷えますよね。布団、ちゃんと被った方が……」

「ッーー……やめてよッ!!」

上手く話が切り出せなくて、掛け布団をしっかり被せようとした僕の手をミネアさんが振り払った。
今までそんな風に彼女にされた事もなければ、声を上げられた事もなかった僕は、ただ戸惑って立ち尽くしてしまう。
すると、ゆっくり上半身を起こしたミネアさんが僕に言った。

「……どうして、何も言わないの?」

「えっ……?」

「言えばいいじゃない、みんなに……。
"僕の子供じゃありません"って、言えばいいじゃない!」

「っ……」

胸がズキンッて、傷んだ。
何故ならそう言う彼女は、半笑いなのに涙目で……。僕を睨みつけているようなのに、泣いているみたいで……。


「……愛してなんか、ないクセにッ」

「っ……」

「わたくしの事なんて、っ……愛してなんかいないクセにッ!!」

触れてもいないのに、痛い程に彼女の孤独が伝わってきた。愛されたい、って心の叫びが……。


そうしたら……。
僕の瞳から先に、涙が溢れてた。

それを見たミネアさんは一瞬驚いた表情をして……。
けど、また哀しそうに笑って……。

「なんで、貴方が泣くのよ……。
同情なんて、ッ……いらないんだからッ!!」

勢い良くベッドから降りると窓に駆け寄って、窓をあけて窓枠に片足を掛けると、身を乗り出した。

「!!っ……ミネアさんッ!!」


ーー……間一髪、だった。

しっかりと抱き締めて窓から引き離すように引っ張ると、彼女を庇うように自らをクッションにして床に倒れ込む。

そしたら一気に、触れ合っている部分から……。
いや、もう自分が彼女になってしまったかのように気持ちが伝わってきた。


僕はミネアさんが妊娠していると知って、実はほんの少し淡い期待を持っていた。
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