夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

☆リサーナ☆

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(3)アランside

3-4

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***

女の部屋を訪れるのは初めての事だった。
静かに部屋に入り扉を閉めると、薄暗い空間の中を進み女が眠るベッドへと歩みを進める。
こちら側を向いた横向きに眠っている女。

少し、熱いか……。

薄暗い場所で顔色までは分からなかったが、その額にそっと触れてみると、微かにいつもより体温が高いように感じる。体調が悪いと言うのは本当のようだ。

ま、今日のところは仕方ないな。

女が起きていて体調が回復していたらワンチャン相手をしてもらえるかと思ったが、今夜はさすがに無理だと悟る。


女から離れて、少しずつ慣れてきた目で部屋を見渡す。
部屋に備え付けの使用人用のタンスの上には、たくさんの動物のぬいぐるみが飾られていた。

そう言えば、ぬいぐるみ作りや手芸が趣味と言っていたな。

一緒に過ごす時間の中で、ほんの僅かではあるが交わした会話の中に出て来た趣味の話を思い出す。
あの時はあまり興味がなく「ふーん」と聞き流したが、実物をよく見るとその出来はかなりの物だと感じた。


そして、次に目に付いたのは机の上に飾られている写真立てだった。おそらく家族写真。
近付き手に取って見ると、父親と母親と弟と妹と楽しそうに笑顔で写っている今より若い頃の女。

「……こんな表情かおで微笑うのか」

写真の中の女は、家族と一緒に無邪気に微笑っている。こんな表情、自分は見た事がなかった。
一目で、大切な仲の良い家族なのだと分かる。

『私に逆らえばどうなるか……。分かってるのか?』
いつだったかオレは、この家族を人質にするような事を……この女に言ったな。

過去とは言え、それは消す事の出来ない事実。

「っ……」

胸がズキッと痛みだす。
この二ヶ月、毎晩のように共に過ごした女。身体を重ねて、自分好みに育てて、今の女の事を1番分かるのは自分だと思っていた。
だがそんなもの、この女の人生の中ではとてもちっぽけな物に違いない。と、そんな当たり前の事を今更思い知った気がした。そして強く感じた。

自分とこの女とでは、住む世界が違うーー。

それは身分ではなく、劣っているのがこの女という事でもなく……。そう、この写真の中の世界のような眩しい場所に、"オレが"似合わないという事だった。
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