皆さんは呪われました

1 皆さんは呪われました

炎、揺れる

　最後の鏡を覗いてから、興奮が全く醒めない。

　眠さも吹っ飛んで、居てもたってもいられず、最後の手順を踏むために、まだ暗い中自転車で学校に向かった。

　僕の学校は歴史がある、と言えば聞こえはいいがただのボロ校舎だ。そのため、昇降口のドアを二、三回ガチャガチャ動かすと鍵が外れてドアは簡単に開いた。

　僕は教室に向かい、黒板の前に立った。暗く、静まりかえった教室に一人で立っていると、何となく、この教室の支配者になった気分になる。もう少しで、それは現実になるんだけれど。

　そのための最後の行程、呪った相手に呪われていることを告知しないといけない。

　何て書こう。
　呪いを実践することばかり考えていて、どうやって告知するか考えてなかった。

　どうしよう。
　変に凝ってわかってもらえなくても困るよな。相手が呪われたことを理解しなかったら、失敗になるのかな。

　散々悩んで、結局ストレートに表現することにした。

「よし、これならわかるだろう」

　黒板に書いた文字を見て、ふっと笑みが溢れる。

　ホッとしたためか、急に張り詰めていたものが緩み、欠伸がでてきた。

　今日は学校を休もう。きっと、このメッセージ見たら僕が書いたってみんな気づくよね。うん、休もう。ふと、黒板の上にある時計を見ると5:46を示している。

再び自転車に跨り、やっと昇り始めた太陽に向かって僕はペダルを力強く踏み込んだ。なんとも心地よい風が僕の頬を撫でた。