【R18】憧れのお姉さんは淫らな家庭教師

馬衣蜜柑

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内緒の芳香とドレスコード(2)

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子どもが親に逆らうことなどできない。
その残酷なまでの当たり前を、萌音は自分の無力さとともに痛感した。

美咲先生が去った後の部屋は、彼女と同じ香りを纏わせたはずなのに、どこか空虚で、ひんやりとしていた。

萌音は言われるがまま、塾に通い始めた。
志望校は、今の実力なら無理のない範囲。
けれど、あと一歩の踏ん張りが必要な場所だ。

美咲と離れた喪失感で、最初はペンを握る手さえ重く感じていたが、自習室には同じように溜息をつく同年代の姿があった。

「はぁ……塾のせいで彼氏と会う時間削られるの、マジで無理……。萌音もそうでしょ?」

休み時間、一緒に通っている友達が、スマホの画面を見つめながら肩を落とした。
萌音が美咲に抱いている想いは、彼女たちが語る「彼氏」への不満とは似て非なる、もっと深く、暗く、そして鋭い熱を持ったものだ。

(……私は、会えないどころか、もう『先生と生徒』ですらなくなったんだよ)

喉まで出かかった言葉を飲み込み、萌音は力なく微笑んだ。
自分の秘密は誰にも言えない。
けれど、みんながそれぞれの場所で、大切な誰かを想いながら、この窮屈な「今」を戦っているのだと知り、萌音の心に、少しだけ前向きな火が灯った。

美咲を想う夜は、今でも訪れる。
どうしようもなく身体がうずき、ベッドの中で自分の指を這わせることもある。
かつて美咲に教え込まれた感覚をなぞるように。思い出しながら。

けれど、萌音は決してやり過ぎることはなかった。
『自習は、自分を壊すためではなく、自分を律するためのもの』
かつて美咲が、厳しくも愛を込めて教えてくれたことが、今も萌音を支えている。

(先生……私、頑張ってるよ。先生がいない場所でも、ちゃんとやっているよ)

今はまだ、親に守られ、親の決めた道を歩むしかない子ども。
けれど、会えない時間の寂しさも、すべては「大人」になるための試練なのだと萌音は思う。

早く、大人になりたい。
守られるだけの存在ではなく、自分の意志で誰かを愛せる年齢になったとき。
もう一度、あの凛とした瞳に見つめてもらいたい。
「よく頑張ったわね」と、あの温かい手で髪を撫でてほしい。

その時に相応しい女性になれるよう、萌音は英単語帳を握りしめた。

季節は巡り、冬の寒さが街を包み込む頃。
萌音の生活は、教科書と問題集、そして塾の自習室の風景に塗り替えられていた。

かつて美咲に教えられた「自分を律する力」は、意外な形で萌音を助けていた。
周囲が受験のストレスで自暴自棄になったり、遊びに逃げたりする中で、萌音だけは静かに、淡々と机に向かい続けることができた。

そして迎えた、春の兆しが見え始めた二月。

合格通知を握りしめた萌音が向かったのは、自宅でも学校でもなく懐かしい思い出の場所——美咲と一緒に行った水族館にある、静かなカフェのテラス席だった。

事前に送った一通のメッセージ。
「先生、お話があります。今日、あの場所で待っています」

返信はなかったが、萌音は確信していた。
先生なら、きっと来てくれる。

萌音は、あの日以来大切にしまっていたボルドーのランジェリーを、制服の下に忍ばせていた。
それはもう「支配されるための衣装」ではなく、自分の足で立ち、自分の意志で彼女に会いに行くための、自分だけの「お守り」だった。

「……待たせたかしら」

聞き慣れた、凛とした声。
振り返ると、そこにはあの日と変わらない、美しく知的な美咲が立っていた。

「先生……!」
「顔つきが変わったわね、萌音ちゃん。合格、おめでとう」

美咲は萌音の隣に座ると、ふと鼻先を動かし、懐かしそうに目を細めた。
「香水のつけ方も、少し上手になったみたい。……もう、私の真似をしているだけの子供じゃないのね」
「はい。先生がいなくても、ちゃんと頑張りました。……でも、それは先生が私に教えてくれたからです」

萌音は、まっすぐに美咲の瞳を見つめた。
かつては支配されることに陶酔していた少女は、今、自らの力で未来を掴み取り、対等な場所へ一歩近づこうとしている。

「先生。私、もっと大人になります。大学に行って、もっと勉強して……いつか先生の隣に立っても恥ずかしくない女性になります。だから……」

美咲は少しだけ驚いたように目を見開き、やがて優しく、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
彼女はテーブルの下で、萌音の手をそっと握りしめる。

「……期待しているわ。あなたがどんな女性になって、私を驚かせてくれるのか」

美咲の指先が、萌音の掌をくすぐるように動いた。

背筋に、痺れるような電流が走る。
あの日、何度も繰り返された快楽への合図。
萌音の身体は、意志とは裏腹に、彼女の指先の動きだけで熱を帯び、敏感に反応してしまう。

制服の下のボルドーのレースが、萌音の肌を微かに刺激する。
萌音の下腹部がキュッと疼く。
忍ばせたボルドーのショーツが、湿り気を帯びて肌に張り付く感覚。

萌音は溢れそうになる涙を堪え、春の光の中で、最愛の人に最高の笑顔を向けた。

「はい!……先生、これからも……見ていてくださいね」

かつての歪な関係は、長い時間をかけて、より深く、より確かな「愛」へと形を変えていく。



物語を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ここで一応完結となります。
あなたの心に残る一編となれば幸いです。

もし「大学生になった萌音と美咲のその後」や、新たな物語を読みたくなったらいつでもお声がけください。
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