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1話 領地が滅びる
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「なんだジル? どういう意味だ?」
「ですから……私の予言に昨日、2か月後にこの地に魔物の襲来があると出たのです」
「ほう……お前の予言は巷では少々、有名らしいな? あれのことか?」
「は、はい……左様でございます」
私の名前はジル・ハーディ。年齢は17歳で伯爵家の娘になる。目の前に立っているお方は、私の婚約者であり侯爵家の当主をしていらっしゃる、レオン・メイラック様だ。
私はこの方の第二夫人候補としての教育を受けている最中だった。ちなみに、レオン様には第一夫人であるシャンファ様が既にいらっしゃる。
「西の国境線を越えて魔物が大量に流入してくるとでも言うのか?」
「詳細は分かりませんが、おそらくはそのようになると思われます……」
私は昔から予言の能力を有していた。国民の間で少し有名になっている程ではある。ただし、落とした財布の場所や明日飼い犬に噛まれるなど、簡単な予言しか的中させられなかったけれど。それでも、感謝してくれる人は多かった。
「我がメイラックの領地が魔物の大群で滅びるか……ははははっ、冗談にもなっていないな」
「それは……確かにそうかもしれませんが……」
私だって驚いている。今まで、こんな大きな予言が出来たことなんてなかったのだから。個人的には間違いであって欲しいけれど、夢にまで出て来てしまっているのだ……。
「レオン様、念のために国境線の警備の強化をされた方が良いのではないでしょうか? 警備の強化自体はアルデバラン王国の利益にもなりますし……」
「どこにそんな金があるのだ? 一体いくらかかるか、お前でもそれくらい分かっているだろう?」
「それは確かにそうですが、人命には変えられません。それに、シャンファ様が散財している資金を警備強化に回せば宜しいかと思われます」
「なんだと……?」
急にレオン様の表情が変わった。怒っているようだけれど、私は何か変なことを言っただろうか?
「お前……第二夫人にまだなってない分際で、私の妻の散財を責めているのか?」
「け、決してそういうわけではありませんが……しかし、シャンファ様の豪遊振りは常軌を逸しています」
「貴様……」
レオン様はさらに怒りの表情を見せていた。第一夫人のシャンファ様が豪遊しているのは間違いない。それも、並大抵の豪遊ではなく、確実に侯爵家の資金を減らしていくレベルだ。レオン様は愛情からなのか、それを見逃している節が以前からあったけれど。
「ですので、メイラック侯爵家の本来の財産を考慮すれば、決して警備強化や国境線の増強などは不可能ではないはずです。お願いします、レオン様! どうか御一考ください……!」
「わかったよ、ジル。一考してやろう」
「レオン様! ありがとうございます!」
良かった……私の予言について、少し考えてくれる気になったのね。これがシャンファ様の異常な散財防止に繋がれば、一石二鳥かもしれない。
「よし、一考してやったぞ」
「えっ?」
随分と早い……そんなにすぐに結論が出たと言うの?
「一考した結果、お前は私の妻に相応しくないということが分かった」
「なっ……ど、どういうことでしょうか……!?」
「意味が分からないか? お前とは婚約破棄だと言ったのだ……お前の予言は気味が悪い。私の家系に不幸をもたらす前に出て行け」
「そ、そんな……! レオン様……!」
まさかほんの一瞬の一考の後、婚約破棄なんていう言葉がでてくると誰が予想出来るだろうか。私は必死にレオン様に訴えた。
「いきなりの婚約破棄など、意味が分かりません! それよりもレオン様……! お願いですから、私の話を真面目に聞いてください……!」
「ええい、うるさい! 我が領地の国境警備隊は現在のままでも十分すぎる程に強いのだ! これ以上強化したところで何の意味もない! とにかく、お前との婚約は破棄だ。お前はシャンファとの仲もあまり良くなかったみたいだし、丁度良いじゃないか」
「れ、レオン様……」
メイラック家の統治している西の国境線。その警備の厚さは私も知っていたけれど、それだけでは全く足りないと予言には出ていた……でも、今の彼にそれを言っても意味がないだろう。シャンファ様のことを出してしまい、逆鱗に触れたのも誤算だった。
婚約者であるレオン様の領地を救うつもりで言った言葉が原因で、まさか婚約破棄を言い渡されてしまうなんて……こんなこと、どうかしているわ……。
しかし、今の私にはどうにかすることは出来なかった……。
「ですから……私の予言に昨日、2か月後にこの地に魔物の襲来があると出たのです」
「ほう……お前の予言は巷では少々、有名らしいな? あれのことか?」
「は、はい……左様でございます」
私の名前はジル・ハーディ。年齢は17歳で伯爵家の娘になる。目の前に立っているお方は、私の婚約者であり侯爵家の当主をしていらっしゃる、レオン・メイラック様だ。
私はこの方の第二夫人候補としての教育を受けている最中だった。ちなみに、レオン様には第一夫人であるシャンファ様が既にいらっしゃる。
「西の国境線を越えて魔物が大量に流入してくるとでも言うのか?」
「詳細は分かりませんが、おそらくはそのようになると思われます……」
私は昔から予言の能力を有していた。国民の間で少し有名になっている程ではある。ただし、落とした財布の場所や明日飼い犬に噛まれるなど、簡単な予言しか的中させられなかったけれど。それでも、感謝してくれる人は多かった。
「我がメイラックの領地が魔物の大群で滅びるか……ははははっ、冗談にもなっていないな」
「それは……確かにそうかもしれませんが……」
私だって驚いている。今まで、こんな大きな予言が出来たことなんてなかったのだから。個人的には間違いであって欲しいけれど、夢にまで出て来てしまっているのだ……。
「レオン様、念のために国境線の警備の強化をされた方が良いのではないでしょうか? 警備の強化自体はアルデバラン王国の利益にもなりますし……」
「どこにそんな金があるのだ? 一体いくらかかるか、お前でもそれくらい分かっているだろう?」
「それは確かにそうですが、人命には変えられません。それに、シャンファ様が散財している資金を警備強化に回せば宜しいかと思われます」
「なんだと……?」
急にレオン様の表情が変わった。怒っているようだけれど、私は何か変なことを言っただろうか?
「お前……第二夫人にまだなってない分際で、私の妻の散財を責めているのか?」
「け、決してそういうわけではありませんが……しかし、シャンファ様の豪遊振りは常軌を逸しています」
「貴様……」
レオン様はさらに怒りの表情を見せていた。第一夫人のシャンファ様が豪遊しているのは間違いない。それも、並大抵の豪遊ではなく、確実に侯爵家の資金を減らしていくレベルだ。レオン様は愛情からなのか、それを見逃している節が以前からあったけれど。
「ですので、メイラック侯爵家の本来の財産を考慮すれば、決して警備強化や国境線の増強などは不可能ではないはずです。お願いします、レオン様! どうか御一考ください……!」
「わかったよ、ジル。一考してやろう」
「レオン様! ありがとうございます!」
良かった……私の予言について、少し考えてくれる気になったのね。これがシャンファ様の異常な散財防止に繋がれば、一石二鳥かもしれない。
「よし、一考してやったぞ」
「えっ?」
随分と早い……そんなにすぐに結論が出たと言うの?
「一考した結果、お前は私の妻に相応しくないということが分かった」
「なっ……ど、どういうことでしょうか……!?」
「意味が分からないか? お前とは婚約破棄だと言ったのだ……お前の予言は気味が悪い。私の家系に不幸をもたらす前に出て行け」
「そ、そんな……! レオン様……!」
まさかほんの一瞬の一考の後、婚約破棄なんていう言葉がでてくると誰が予想出来るだろうか。私は必死にレオン様に訴えた。
「いきなりの婚約破棄など、意味が分かりません! それよりもレオン様……! お願いですから、私の話を真面目に聞いてください……!」
「ええい、うるさい! 我が領地の国境警備隊は現在のままでも十分すぎる程に強いのだ! これ以上強化したところで何の意味もない! とにかく、お前との婚約は破棄だ。お前はシャンファとの仲もあまり良くなかったみたいだし、丁度良いじゃないか」
「れ、レオン様……」
メイラック家の統治している西の国境線。その警備の厚さは私も知っていたけれど、それだけでは全く足りないと予言には出ていた……でも、今の彼にそれを言っても意味がないだろう。シャンファ様のことを出してしまい、逆鱗に触れたのも誤算だった。
婚約者であるレオン様の領地を救うつもりで言った言葉が原因で、まさか婚約破棄を言い渡されてしまうなんて……こんなこと、どうかしているわ……。
しかし、今の私にはどうにかすることは出来なかった……。
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