婚約者の領地が滅んでしまうと予言したら、婚約破棄されました

ルイス

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2話 王子殿下に頼る その1

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「お父様……そういうことなんです……」

「なるほど……大変だったな、ジルよ」

「いえ……そんなことは」


 レオン様から婚約破棄を言い渡された私は、自らの屋敷に戻る以外の選択肢がなかった。現在はハーディ伯爵家の領地に帰って来ている。


「しかし、西の国境線を魔物の大群が越え、メイラック侯爵の領地を蹂躙するという予言だ出ていたとは……」

「はい、でも事実なんです。もちろんそれが、本当に当たるのかどうか私には確約はできませんが……」


 私が今まで的中させてきた予言はもっと些細なものだったからだ。こんな大規模な災厄にも近い予言なんて出て来るなんて思ってなかったから……今の私も当たるかどうかは半信半疑なのは事実だ。

「ただ、念のための警備強化や国境線の砦の増強を進言しましたところ、レオン様から反感を買ってしまいました……シャンファ様が異常な贅沢をしている件の是正を言ってしまったのが、良くなかったのかもしれません」

「うむ、確かにそれはあり得るな。レオン殿の逆鱗に触れた、ということだろう」


 やはりお父様から見ても、その点がマズかったのは明らかなようね。しまった……私のミスは大きいわ。


「しかし、聞いている限りでは、ジルが間違いを起こしているとはとても思えん。お前は貴族令嬢として間違った意見は述べてないように思えるぞ。予言の件を抜きにしても、レオン殿の第一夫人であるシャンファ夫人の贅沢は目に余るようだからな」

「ありがとうございます、お父様……」

「なに、気にすることはない。娘の幸せを願うのが父親としての責務だ。そんなことくらいで婚約破棄を言い渡す相手と結婚など、こちらから願い下げだからな。大切なジルを渡すにはあまりにも不安だ」

 マズイ……嬉しさで涙が出て来てしまいそうだ。お父様はとても嬉しい発言をしてくれた……父親としての鑑と言えるかもしれない。侯爵との婚約が台無しになってしまったのに、それを一切責めない時点で貴族の鑑な気はするけれど。

 お父様……アルドーク・ハーディ伯爵の娘で本当に良かったと思えてしまった。私はとても感動している。

「しかし、お前の今回の予言は難しいな……明らかに今までのそれとは規模が違うだろう?」

「はい、その通りですね……」


 お父様も私の予言を信じるのかどうかについては、半信半疑と言った印象だった。それは仕方ないと思う……私の今までの予言は単なる人々の些細なトラブル解決にしか役立っていなかったのだから。ただ、もしも真実だった場合は冗談では済まされない……。

「しかし、お前の予言に出たことをそのまま流すのは危険とも言えるだろう。どうだジルよ、幼馴染であるフィリックス・アルデバラン第三王子殿下に相談してみると言うのは?」

「フィリックス王子にですか……? そうですね、確かにその方が良いと思います」

「おや? なんだか楽し気じゃないか、そんなに会いたいのか?」

「お父様!」

「ははは、冗談だよ」


 フィリックス王子殿下は私の幼馴染に該当する……それから、私の初恋の人物でもある。お父様はそのことが分かっているのか、私をからかっていた。

 彼と会いたいという気持ちに嘘はないけれど、私は最近まで、レオン様と婚約していたのだけれど……。

 その辺りをもう少し考えてもらいたかった。
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