もううんざりですので、実家に帰らせていただきます

ルイス

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1話 実家に帰るシルファ

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「リーガス様……私はもう我慢の限界です」

「またその話か。お前は本当に同じ話をするのが大好きだな、シルファよ」

「リーガス様、真面目に聞いていただけますか?」

「ふん、仕方ないどうしたと言うのだ?」


 婚約者のリーガス・ドルアット侯爵令息……私はこのお方と婚約関係にある。政略的な婚約の意味合いが強かったけれど、彼は私との婚約後も街人を寝室に連れ込むなど、浮気を繰り返していた。何度もそのことについて注意をしてきたけれど、リーガス様は話半分でしか聞いてくれなかったのだ。

 とうとう本日、我慢の限界が来てしまった。

「浮気を止めてください、リーガス様」

「おいおい、それは無理だと何度も言っているじゃないか。私はまだまだ遊び足りないんだよ」

「遊び足りない……?」

 リーガス様は侯爵令息だ、貴族の中の貴族の一人と言っても過言ではない。そんな彼にはそれ相応の態度を示す責任があるはずなのに。今の彼にはそれが完全に欠落しているように見える。


「貴族も退屈な職業だろう? 息抜きくらいはさせて貰いたいものだな」

「息抜き代わりに浮気なんて聞いたことがありませんが……」

「おいおい、シルファ。お前がベッドでの相手を拒み続けているのも原因なんだぞ?」

「それは……」


 私達はまだ婚約中の身だ……結婚をしていないのに身体の関係になれるわけがない。彼はあらゆるところで勘違いをしていた。私はこの時、この方には何を言っても無駄だということを理解する。もう何度目の理解か分からないけれど……。

「リーガス様、私は貴方様とこれ以上婚約関係を続けることができません……」

「何を言っているんだ、シルファ?」

「私と婚約破棄をしてください」

「婚約破棄だと? ば、馬鹿なことを言うな! シルファ、自分が言っていることがどういうことか、理解しているのか!?」

「もちろんです、リーガス様。完全にリーガス様に非がありますので、婚約破棄は成立するはずです」


 私は戸惑うリーガス様に冷たい視線を送っていた。彼が逆上しないかとても怖かったけれど、これだけは言っておかないと駄目だ。貴重な時間が無駄に浪費されているような気がしてしまうから。

「私は実家に帰らせていただきます。今までお世話になりました」

「お、おい! シルファ、待ってくれ!」

 私はリーガス様の顔を見ることなく、彼の部屋を後にした。叫び声が聞こえたような気がするけれど、決して振り返らない。リーガス様が追いかけてくることはなかった。
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