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8話 酷い言葉
しおりを挟む「リーガス様、落ち着かれた方が良いと思いますが……ご自分が何を言っているのか分かっていますか?」
「当然だ。私は今、正解に辿り着いたというわけだな! 私のシルファに群がる輩め! 幼馴染だかなんだか知らないが、お前は最近戻って来たのだろうが!」
「それは間違っていませんが……ここに戻って来たのは、5年振りになりますね」
リーガス様の表情は今まで見たこともないものになっていた。言っていることも滅茶苦茶だけれど、その表情も滅茶苦茶ね……自分で何を言っているのか分かっていないのは間違いないと思われる。
「5年も会っていなかったのに、今さら幼馴染の体をしてシルファに近づくとは……! それが許されることだと思っているのか? クインス殿!」
「いや、浮気三昧だったリーガス様に言われたくはないのですが……」
「なんだとっ! お前、誰に向かって口を利いているんだ! 分かっているのか!」
すごい……会話になっているようで全然なっていないわ。クインスの発言は至極真っ当なものだけれど、リーガス様の発言は完全におかしな方向に行っている。それは誰が見ても明らかなんだけれど、本人だけは気付いていないようだ。
「私はリーガス・ドルアット侯爵令息に話をしております。あなたこそ、いくら格上の家柄とはいえ、伯爵令息である私にそんな口を利いてよろしいのですか? 品格を疑われますよ?」
「な、何を言っているんだ? お前は……」
「貴族同士の会話はお互いが敬語であることが通例です。幼馴染などの関係であればその例からは外れるでしょうが。いくらリーガス様が怒っていても、そんな話し方では何も伝わりませんよ?」
「くっ……お前……」
「まあ、元々の理論も破綻しておりますので、どの部分を切り取ったとしても暴言以外のなにものでもないんですが」
クインスの的確な言葉はリーガス様を黙らせるには十分だった。彼はしばらくの間、無言になっていたのだから。
「私とシルファの関係性については、リーガス様が立ち入れる部分ではないでしょう? 幼馴染という関係以上のものではないですが、婚約破棄をするわけですから。リーガス様とシルファは他人同士になるはずです」
「ば、馬鹿な……シルファ、やはり婚約破棄など認めるわけにはいかない!」
「リーガス様が認める認めないは関係ありません。私は理不尽な浮気であなた様を信用できなくなっているのですから。
「やはりクインス殿が引き金のようだな……」
「? リーガス様?」
なんだか小さな言葉で「クインス」と言っていたようだけれど……? なんと言ったのかしら?
「また、出直してくるとしよう」
「で、出直してくるのですか……?」
リーガス様はそのまま帰って行ったけれど、クインスへの暴言の謝罪はなかった。まだまだ、嫌な予感は拭えないわね……。どういう事態になるのかしら。
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