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10話 ウォーレスの告白 その2

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「ウォーレス殿は勘違いをされているのではありませんか?」

「ん? フォルセ殿、それはどういう意味かな……?」


 ウォーレスに現実を伝えようと、諭すようにフォルセは優しい口調で話している。私は今のウォーレスにこんな優しい口調は無理なので、弟に任せたのは正解だったと思う。フォルセは口調こそは優しいけれど、どこか冷たい印象があった……これに気付けるのは、おそらく姉である私だけだと思うけれど。

 ネプト様やニーナも見守る中、フォルセの話は続いていく。


「先ほどのウォーレス殿の告白なのですが……」

「ああ、それが何か?」


「その告白の時点で既に、ウォーレス殿は勘違いをされていると思います」

「な、なんだって……? それはどういうことだい? フォルセ殿」


 ウォーレスはフォルセの言葉に興味津々のようだ。いえ、興味津々というよりは、こんなことを言われて不安に駆られているのだろう。それを払拭したくて、フォルセの次の言葉をしきりに待っているのだろうと思う。なぜなら、ウォーレスの息遣いは荒くなっており、汗も流しているようだったから。


「ええ……実はですね」

「じ、実は何なのだ……?」


 フォルセはウォーレスの心境を完全に把握しているようだった。敢えて核心に迫る言葉は出さずに、ウォーレスを牽制しているように思える。

「は、早く行ってくれ、フォルセ殿……! 私の勘違いとは一体、なんなのだ……?」

「気になりますか?」

「当たり前だろう!? 私はアーチェとの婚約を成立させないといけないのだ、貴殿の言葉に構っている余裕はないのだからな……!」

 その言葉が出て来た時点で、ウォーレス様の劣勢は明白だった。明らかに余裕はない証拠だ。余裕があるのであれば、勿体ぶるフォルセなど無視して私に告白の続きをすれば良いのだから。

 ウォーレスの心の中は、確実にフォルセに支配されつつあった。


「アーチェ、少し良いかな?」

「ネプト国王陛下……? 如何なさいましたか?」


 二人の会話を聞いていたネプト様が私に耳打ちをしてくる。その動作には私も驚いてしまったけれど、特別な意味はないようだ。それはネプト様の次の言葉に集約されていた。

「君の弟は……怖いな。色々な意味合いで……」

「それは……私もそう思います」

「しかし、しっかりとした弟で良かったな」


 確かにフォルセはしっかりしていると思うし、私からしても自慢の弟であるけれど……ウォーレスを手玉に取る様子は想像以上だった。ネプト様が恐怖すら感じるのも分かる気がする。
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