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55話 スザンヌとウィンスタート その2
「スザンヌ様が……逃亡?」
「ああ、国を捨て野に下るという趣旨の置き手紙があった……」
ネプト様からその報告を受けた時、私はとても信じられなかった。以前に話した時は全力でサポートをしてくれる、と聞いていたからだ。
「スザンヌ様のお立場を考えると……仕方ないのかもしれませんね」
「そうだな。全ての原因は私にあるだろう。アーチェを愛することに注視し過ぎて、彼女のことを蔑ろにしてしまったのだからな」
フォローの言葉が思いつかない……おそらく、それは事実だろうからだ。あの時、私をサポートしてくれると言った時も、内心ではきつかったのかもしれない。
「スザンヌ様はお一人で出て行かれたのですか?」
「いや……手紙の内容から護衛のウィンスタート・ドルチェという人物と一緒に、駆け落ちしたようだな」
駆け落ち……現役の王妃様がまさかそれをするとは思わなかったけれど。一般人の間では偶に見かける光景らしいわね。
「私はスザンヌの気持ちを汲み取り、このまま何もせずにいたいと思っている」
「ネプト様……」
確かにそれが良いのかもしれない。強制的に連れ戻したところで、護衛のウィンスタートは間違いなく死刑になるし、その時、スザンヌ様の心がどうなってしまうかも分からないから。
「このままにしてはならん、ネプト」
「アルダー? どうしてここに……?」
そんな時、大臣の一人でありネプト様の叔父様に当たるアルダー様が現れた。前国王陛下の弟君であり、現在は参謀役を担っている。ネプト様は国王陛下ではあるけれど、お互いの信頼関係から普通の話し方がデフォルトだ。
「スザンヌの信頼は国民にも幅広く行き渡っている。そんな彼女が消えたとなれば動揺は隠せないだろう。それ以外にも、スザンヌ派の公爵などが暴動を起こす危険すらある」
「それはそうかもしれないが、スザンヌの気持ちを考えると、このまま他国で幸せになってもらいたいのだ」
「お前の気持ちも分かる。だが、このまま駆け落ちを見逃すのだけはならん。連れ戻したとしても、ウィンスタートに対する罪は免除すると言えばどうだろうか?」
「ウィンスタートの罪を免除する……だと?」
アルダー様は強く頷いた。そして、さらに続ける。
「スザンヌは宮殿内でウィンスタートとの愛を育めば良い。望むのであれば、別荘を与えても良かろう。もちろん公務は執り行ってもらうが、ネプトとは完全に仮面夫婦となるといった寸法だ。これならば、彼女の幸せにも配慮出来るだろう? 上手く行くかが不明過ぎる駆け落ちなどより、余程、安全かと思われるがな」
「ウィンスタートは実質、人質となるわけか」
「まあ、そればかりは仕方あるまい。彼は歴史的な犯罪を犯しているのだからな。王妃と共に逃亡など、本来は即刻死刑なのだから」
「……」
ネプト様は納得している様子はなかったけれど、これといって大きな反論もしなかった。その後、スザンヌ様とウィンスタートを探す捜索隊が編成されることになる……。
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