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3話 王太子殿下 その3
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「キニスン王太子殿下……恐れながら申し上げます……」
「ああ、聞かせてくれ」
キニスン様は大体の事情を把握しているような雰囲気でもあった。私とシャルナックの二人が部屋で話しているところから察したのかしら? その辺りはよくわからないけれど……。
「……ちっ!」
シャルナックは分かりやすく舌打ちをしていたけれど、そんな態度で私が話すのを止めると思っているのかしら? 舐めないでもらいたいわね。
「私は……シャルナック・ワーテルロー王子殿下に婚約破棄を言い渡されました」
「なるほど……そういうことだったか」
キニスン王太子殿下は冷静だった。まあ、婚約破棄自体は貴族の間でも偶に行われることだし、そこまでめずらしいわけじゃないけれど。でも、王太子殿下の興味はその先……婚約破棄に至った原因に向かっているようだった。なぜだか、私はそう直感する。
「出来ればシャルナック本人から理由を聞きたいが……アンネリー殿、よければ続きも話してもらえるか?」
「は、はい……。シャルナック様は、公爵令嬢のフィオナ様と婚約を希望されているようでございまして……」
私はなるべく禍根を残さない話し方をした。本当であれば、シャルナックの腹の立つ言い方も全て暴露したいところだったけど。今は、王太子殿下に事実を告げることが重要だと思ったから。確信は持てないけど、王太子殿下自身も私の考えは、ある程度分かってくれているみたいね。
なんとなく、王太子殿下の表情で察することが出来た。
「……シャルナック、今のは事実ということでいいんだな?」
キニスン王太子殿下は、溜息を付きながら、弟であるシャルナックに言葉を掛けていた。シャルナックは顔中に汗を流しながらも、特に否定の態度は見せていない。まあ、この状況で否定しようものなら大変なことになりそうだけど……。
「くっ……兄上……。く、くそ……!」
シャルナック王子殿下は、言い訳もできないと悟ったのか、その場で膝から崩れ落ちた。先ほどまでの態度とは全然違うシャルナックの態度に違和感を覚えるほどだけど……。
なんだか、ざまぁないわね! って言ってやりたい気持ちになっていた。
「お前は、アンネリー殿を何だと思っているんだ? いや……そちらは、まずは置いておくとして……」
「くっ……! なぜ、こんなことに……!」
なぜ、こんなことに……じゃないわよ。あんたが婚約破棄なんて最低なことするからでしょ? 私は崩れ落ちているシャルナックに微塵の同情もすることはなかった。
「アンネリー殿、本当に申し訳ない。不肖の弟がとんでもないことをやらかしたようだ……必ず責任は取らせるので、なんとか穏便に済ましていただいても構わないだろうか?」
キニスン王太子殿下は驚くことに、頭を下げて私に謝罪をしてくれた。シャルナックへの罰も約束してくれて……本来であれば穏便に済ますかは、私の一存では決められないんだけど……私はこの時、無意識の内に首を縦に振っていた。
「ああ、聞かせてくれ」
キニスン様は大体の事情を把握しているような雰囲気でもあった。私とシャルナックの二人が部屋で話しているところから察したのかしら? その辺りはよくわからないけれど……。
「……ちっ!」
シャルナックは分かりやすく舌打ちをしていたけれど、そんな態度で私が話すのを止めると思っているのかしら? 舐めないでもらいたいわね。
「私は……シャルナック・ワーテルロー王子殿下に婚約破棄を言い渡されました」
「なるほど……そういうことだったか」
キニスン王太子殿下は冷静だった。まあ、婚約破棄自体は貴族の間でも偶に行われることだし、そこまでめずらしいわけじゃないけれど。でも、王太子殿下の興味はその先……婚約破棄に至った原因に向かっているようだった。なぜだか、私はそう直感する。
「出来ればシャルナック本人から理由を聞きたいが……アンネリー殿、よければ続きも話してもらえるか?」
「は、はい……。シャルナック様は、公爵令嬢のフィオナ様と婚約を希望されているようでございまして……」
私はなるべく禍根を残さない話し方をした。本当であれば、シャルナックの腹の立つ言い方も全て暴露したいところだったけど。今は、王太子殿下に事実を告げることが重要だと思ったから。確信は持てないけど、王太子殿下自身も私の考えは、ある程度分かってくれているみたいね。
なんとなく、王太子殿下の表情で察することが出来た。
「……シャルナック、今のは事実ということでいいんだな?」
キニスン王太子殿下は、溜息を付きながら、弟であるシャルナックに言葉を掛けていた。シャルナックは顔中に汗を流しながらも、特に否定の態度は見せていない。まあ、この状況で否定しようものなら大変なことになりそうだけど……。
「くっ……兄上……。く、くそ……!」
シャルナック王子殿下は、言い訳もできないと悟ったのか、その場で膝から崩れ落ちた。先ほどまでの態度とは全然違うシャルナックの態度に違和感を覚えるほどだけど……。
なんだか、ざまぁないわね! って言ってやりたい気持ちになっていた。
「お前は、アンネリー殿を何だと思っているんだ? いや……そちらは、まずは置いておくとして……」
「くっ……! なぜ、こんなことに……!」
なぜ、こんなことに……じゃないわよ。あんたが婚約破棄なんて最低なことするからでしょ? 私は崩れ落ちているシャルナックに微塵の同情もすることはなかった。
「アンネリー殿、本当に申し訳ない。不肖の弟がとんでもないことをやらかしたようだ……必ず責任は取らせるので、なんとか穏便に済ましていただいても構わないだろうか?」
キニスン王太子殿下は驚くことに、頭を下げて私に謝罪をしてくれた。シャルナックへの罰も約束してくれて……本来であれば穏便に済ますかは、私の一存では決められないんだけど……私はこの時、無意識の内に首を縦に振っていた。
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