4 / 10
4話 噂は広まる その1
しおりを挟む
元婚約者、シャルナック王子殿下の不祥事……。婚約関係にあった私を振って、別の女性へと乗り換えようとしていた。普通であれば、王子殿下の強い権限により、世間や貴族間に知れ渡ることはないのかもしれないけれど……。
噂の封じ込めを許さなかったのは、キニスン王太子殿下だった。私に謝罪をしてくださった王太子殿下は、同時にシャルナック王子殿下の婚約破棄の件についても、他の貴族の間に流布したのだった。
「あ、あの……王太子殿下……」
「……なんだ?」
「シャルナック王子殿下と私の件を、世間に知らせても良かったのでしょうか……?」
私は穏便に済ませることを承諾したのに……これではシャルナック王子や王家に対しての風当たりが強くなってしまうんじゃ。私はそれを心配していた。
「私は事を穏便に済ませることを了承していましたのに……」
「事を穏便に済ませるというのは、あくまでもアンネリー殿の家系との間での話になる。シャルナックが行ったことをうやむやにしておくのは、今後の王家の在り方にも関わってくるからな」
なるほど、と私は納得した。てっきり、穏便に済ませて欲しいというのは、世間に公表しないで欲しいという意味合いだと思っていたから……。ワーテルロー王家とバートン家との間での関係悪化を最小限に抑える為に、「穏便」という意味だったなんて……。
自分の中で、王太子殿下への好感度が上昇していることに気付いた。流石は次期国王様よね。まあ、どのみち、貴族の間では婚約破棄なんていうネタを完全に封じ込めるのは不可能だったと思うけれど。
「……アンネリー殿、少しは落ち着いたか?」
キニスン王太子殿下は、数日前の婚約破棄騒動を心配してか、バートン家の領地にある屋敷を訪ねてくれていた。もちろん、相応の護衛を付けてのことだけれど。
金髪の長髪を後ろで束ね、サファイアブルーの瞳が美しい二枚目。キニスン王太子殿下は外見的にも完璧に国王という責務を全うしそうな雰囲気を有している。シャルナック王子殿下よりも上の存在……そんなお方に近付かれ、私は胸の高鳴りを止められないでいた。
「は、はい……少しは落ち着いております。これも全て、王太子殿下のおかげでございます」
「いや、私は何もしていないさ。それに……君のことは前から気になっていたからな」
「えっ?」
王太子殿下のおっしゃった最後の言葉が上手く聞き取れなかった。私はもう一度、質問しようとしたところ……。
「姉さま! 姉さまは居られますか!?」
勢いよく私の部屋をノックする音と、聞き覚えのある声がしてきた。妹のローラがどうやら帰って来たらしい。
噂の封じ込めを許さなかったのは、キニスン王太子殿下だった。私に謝罪をしてくださった王太子殿下は、同時にシャルナック王子殿下の婚約破棄の件についても、他の貴族の間に流布したのだった。
「あ、あの……王太子殿下……」
「……なんだ?」
「シャルナック王子殿下と私の件を、世間に知らせても良かったのでしょうか……?」
私は穏便に済ませることを承諾したのに……これではシャルナック王子や王家に対しての風当たりが強くなってしまうんじゃ。私はそれを心配していた。
「私は事を穏便に済ませることを了承していましたのに……」
「事を穏便に済ませるというのは、あくまでもアンネリー殿の家系との間での話になる。シャルナックが行ったことをうやむやにしておくのは、今後の王家の在り方にも関わってくるからな」
なるほど、と私は納得した。てっきり、穏便に済ませて欲しいというのは、世間に公表しないで欲しいという意味合いだと思っていたから……。ワーテルロー王家とバートン家との間での関係悪化を最小限に抑える為に、「穏便」という意味だったなんて……。
自分の中で、王太子殿下への好感度が上昇していることに気付いた。流石は次期国王様よね。まあ、どのみち、貴族の間では婚約破棄なんていうネタを完全に封じ込めるのは不可能だったと思うけれど。
「……アンネリー殿、少しは落ち着いたか?」
キニスン王太子殿下は、数日前の婚約破棄騒動を心配してか、バートン家の領地にある屋敷を訪ねてくれていた。もちろん、相応の護衛を付けてのことだけれど。
金髪の長髪を後ろで束ね、サファイアブルーの瞳が美しい二枚目。キニスン王太子殿下は外見的にも完璧に国王という責務を全うしそうな雰囲気を有している。シャルナック王子殿下よりも上の存在……そんなお方に近付かれ、私は胸の高鳴りを止められないでいた。
「は、はい……少しは落ち着いております。これも全て、王太子殿下のおかげでございます」
「いや、私は何もしていないさ。それに……君のことは前から気になっていたからな」
「えっ?」
王太子殿下のおっしゃった最後の言葉が上手く聞き取れなかった。私はもう一度、質問しようとしたところ……。
「姉さま! 姉さまは居られますか!?」
勢いよく私の部屋をノックする音と、聞き覚えのある声がしてきた。妹のローラがどうやら帰って来たらしい。
11
あなたにおすすめの小説
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?
あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。
理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。
レイアは妹への処罰を伝える。
「あなたも婚約解消しなさい」
婚約破棄されたので聖獣育てて田舎に帰ったら、なぜか世界の中心になっていました
かしおり
恋愛
「アメリア・ヴァルディア。君との婚約は、ここで破棄する」
王太子ロウェルの冷酷な言葉と共に、彼は“平民出身の聖女”ノエルの手を取った。
だが侯爵令嬢アメリアは、悲しむどころか——
「では、実家に帰らせていただきますね」
そう言い残し、静かにその場を後にした。
向かった先は、聖獣たちが棲まう辺境の地。
かつて彼女が命を救った聖獣“ヴィル”が待つ、誰も知らぬ聖域だった。
魔物の侵攻、暴走する偽聖女、崩壊寸前の王都——
そして頼る者すらいなくなった王太子が頭を垂れたとき、
アメリアは静かに告げる。
「もう遅いわ。今さら後悔しても……ヴィルが許してくれないもの」
聖獣たちと共に、新たな居場所で幸せに生きようとする彼女に、
世界の運命すら引き寄せられていく——
ざまぁもふもふ癒し満載!
婚約破棄から始まる、爽快&優しい異世界スローライフファンタジー!
「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。
ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。
しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。
こんな謎運命、回避するしかない!
「そうだ、結婚しよう」
断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる