お世話になった人々に挨拶回りをしたいと思います

ルイス

文字の大きさ
2 / 2

2話 アーチェとネプト その2

しおりを挟む
(フォルセ視点)


「え……アーチェ姉さまがのノーム伯爵家の屋敷を訪れるのですか……?」

「ああ、そういうことらしい。ネプト様と一緒にな」

「ネプト様と……」


 そうか……アーチェ姉さまが辺境地に行って1年以上が経過している。そろそろ、現地の仕事には慣れた頃だろうか。そうなると、各地への挨拶回りをしてもおかしくない時期と言えるだろうか。アーチェ姉さま自身が、将来的にはお世話になった相手や迷惑を掛けた相手に挨拶回りをしたいと言っていたのだし。

 そうか……そろそろ、そういう時期になったのか。


「フォルセ……アーチェ様って言えば、あなたのお姉さまよね?」

「ああ、そうなるね」


 傍らに寄り添っているのは、私の妻であるエルザだ。ノーム家に正式に嫁ぎ、今は私が次期当主になる為のサポートをしてくれている。

「アーチェ様と言えば、以前にセルガスと良い関係になったはずだけれど……」

「ああ、あの件に関しては白紙に戻ったね。当時の国王陛下であるネプト様と一緒になられたから」

「確かにそうだったわね。でも、ネプト様は形式的にはノーム家の一員なんでしょ? アーチェ様と一緒になっているなら、婿養子みたいな感じかしら?」


 その辺りは非常にややこしいが、エルザの言う通りだった。ネプト様は元国王陛下であるが、現在はマクスレイ王家とは関係のない存在になっている。それは、今後の色々な問題を危惧した上での選択だ。今はノーム家の姓を与えられていた。

 と言っても彼が当主になるわけではないから、最終的には別の姓を名乗ることになるだろうけどな。

「まあ、その辺りは深く考えても答えを導きにくい。エルザはアーチェ姉さまとネプト様が、挨拶回りに来るということだけ押さえていれば問題ないと思うよ」

「そうなの? それなら、そのことに集中するわ。余計なことは考えないことにする」

「悪いねエルザ。余計な心配を掛けてしまって……」

「いえ、気にしないでフォルセ。貴方のことは信用しているから」


 はあ……ネプト様とアーチェ姉さまが来るだけでも、これだけの心配を掛けてしまうわけか。エルザが物分かりの良い人で本当に良かったけれど。今までは身内フィルターが掛かっていたけれど、あの二人の行ったことはとんでもないことだったのだと、改めて考え直す必要があるかもね……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放された聖女ですが辺境領主と幸せになります。禁術で自滅した偽聖女と王太子の完治?無理ですね。

ささい
恋愛
十年間、奇跡を起こせなかった聖女エミリシアは、王太子に追放された。 辺境の村ミューレンベルクで静かに暮らし始めた彼女は、領主レオフィリスの優しさに触れ、心の平穏を取り戻していく。 ある日、村で疫病が発生。子供たちの命を救いたい一心で祈った時、ついに聖女の力が目覚めた。 その後、王都から助けを求める使者が現れる。 追放した王太子とその婚約者候補リディエッタが、禁術の反動で倒れたという。 エミリシアは命を救うため王都へ向かうが、二人の完治は不可能だった。 全てを終え、彼女はレオフィリスと共に愛する村へ帰る。 ◇ 命を見捨てなかった。浄化はした。治癒は。 ◇ ※他サイトにも投稿しております。

悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。

『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』

佐伯かなた
恋愛
 卒業後の社交界の場で、フォーリア・レーズワースは一方的に婚約破棄を宣告された。  理由は伯爵令嬢リリシアを“旧西校舎の階段から突き落とした”という虚偽の罪。  すでに場は整えられ、誰もが彼女を断罪するために招かれ、驚いた姿を演じていた──最初から結果だけが決まっている出来レース。  家名にも傷がつき、貴族社会からは牽制を受けるが、フォーリアは怯むことなく、王国の中央都市に存在する全寮制のコンバシオ学園へ。  しかし、そこでは婚約破棄の噂すら曖昧にぼかされ、国外から来た生徒は興味を向けるだけで侮蔑の視線はない。  ──情報が統制されている? 彼らは、何を隠したいの?  静かに観察する中で、フォーリアは気づく。  “婚約破棄を急いで既成事実にしたかった誰か”が必ずいると。  歪んだ陰謀の糸は、学園の中にも外にも伸びていた。  そしてフォーリアは決意する。  あなた方が“嘘”を事実にしたいのなら──私は“真実”で全てを焼き払う、と。  

王子の婚約者は逃げた

ましろ
恋愛
王太子殿下の婚約者が逃亡した。 13歳で婚約し、順調に王太子妃教育も進み、あと半年で結婚するという時期になってのことだった。 「内密に頼む。少し不安になっただけだろう」 マクシミリアン王子は周囲をそう説得し、秘密裏にジュリエットの捜索を命じた。 彼女はなぜ逃げたのか? それは─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

優しいあなたに、さようなら ~二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています

わたくしが代わりに妻となることにしましたの、と、妹に告げられました

四季
恋愛
私には婚約者がいたのだが、婚約者はいつの間にか妹と仲良くなっていたらしい。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

処理中です...