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4話 夢と希望の王都ラクアーレ その2
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「気を付けて行ってらっしゃい。ちゃんと手紙を書くのよ?」
「うん、ありがとう母さん。行って来ます」
「ええ、行ってらっしゃい。あなたも気を付けてね?」
「ああ、分かっている。済まないが、少しの間、鍛冶屋の方は任せるよ」
「わかったわ」
今回も御者を雇っての旅になる。今回はクレルモン領内での移動ではなく、多少の長旅だ。私だけでは不安だからと、お父さんも付いて来てくれることになった。
「カウフマン、よろしく頼むよ」
「気を遣いなさんな、ラードフ。あんたとは古い付き合いじゃないか」
「カウフマンさん、よろしくお願いいたします」
「ははは、お安い御用さ」
今回の御者の方はお父さんの顔なじみのカウフマンさんだ。ちなみにラードフ・グラウスというのが私の父の名前に当たる。カウフマンさんは腕も立つので、御者兼護衛をお願いすることになったわけで。元冒険者をされていたはず。怪我が原因で引退して、今は御者の仕事で生計を立てているらしい。
私達はお母さんに挨拶をしてから、すぐに旅立った。
「しかし、ラードフから少ししか聞いていないが、なかなか大変だったみたいだな」
大変、というのはおそらくクレルモン公爵の屋敷を追放された件だと思う。親しい人には知れ渡っている頃だろうし、カウフマンさんも知っているみたいね。
「そうですね……お父さん達のおかげで多少は吹っ切れましたが、まだまだ悔しさや悲しさは残ります」
「そりゃあそうだろう。1年くらいも働いていた職場を、意味も分からず解雇されたんだ。おまけに退職金等もなかったんだろう?」
「そうですね……なかったです」
必要最低限の物以外は全て没収されているしね。錬金用の道具とかも全て。今までの給料の没収はなかったけれど、
「いくら公爵だからって、なんだよその待遇は……あり得ないだろ? 俺達の税金で贅沢な暮らしが出来てるってこと忘れてるんじゃねぇのか。これだから貴族様は嫌いなんだよな」
「娘のことを想って言ってくれるのは嬉しいが、不敬罪に問われかねないぞ?」
「ああ、そうかもな……そりゃあ、なかなか面倒だ」
お父さんは温度感が上がっているカウフマンさんを宥めていた。
「しかしまあ、王宮の錬金術師の試験を受けるっていうのは正しいかもな。ルアガタウンで働くのは、フェリちゃんの才能の無駄になるかもしれんし」
「いえ……王宮の錬金術師なんて、私程度で受かるとは思えないです……」
「いや、俺も錬金術には詳しくはないが、あのエルレインが弟子にした程の逸材だろ? 過小評価が過ぎるぜ、フェリちゃん」
「えっ?」
「まあ、気軽に受けてみれば大丈夫さ。多分な」
「は、はあ……分かりました」
カウフマンさんは私が合格するのが当たり前のような話し方だった。それに、エルレイン師匠のことも知っているような。師匠ってそんなに有名だったのかしら? それ以上は聞かなかったけれど、なんだか気になる話題ではあった。
-----------------------
故郷の町を出発して1週間以上……その間の村々で寝泊りを繰り返し、王都ラクアーレに到着した。
「ようやく到着か……それにしても、流石は王都って感じだな」
「本当ですね……凄いです」
18年間の間で私が王都を訪れたのはこれで二度目だ。以前よりもさらに街並みが綺麗になっている気がする。
「よし、まずは適当な宿でも探すとしようか」
お父さんの提案に私とカウフマンさんは頷いた。ハンブリッジ王宮での試験を受けることになるわけだけれど、数日間は最低でも滞在することになるだろうしね。
馬車を停車場に止めて、そのまま王都内へと入る。正門では簡単な審査がされたけれど、問題なく通してもらえた。
「カウフマン、おすすめの宿屋はあるか?」
「そうだな……王都内の宿屋も多いからな、特におすすめってはないぜ。強いて言うなら、王宮から近い所が良いか」
「なるほど」
まあ、その方が錬金術の試験を受けやすいものね。私は妙に納得しながら周囲を見渡す。それにしても凄い人手ね……故郷のルアガタウンとは、何から何までが違うわ。
お店の数もそうだし……ルアガタウンには私のところくらいしか鍛冶屋はないけど、ここにはたくさんあるんでしょうね。試験とは別に単純に王都を訪れられたことが、私は嬉しくなっていた。もしも、王宮の錬金術師の試験が落ちたとしても、ここなら働き口が見つかりそうだしね。
「済まない、少し通してもらえるか? そこに立たれていると殿下の邪魔になってしまう」
「えっ? あ、すみません……!」
私が周囲を見渡していた時、死角から兵士の人の声が聞こえて来た。兵士というよりは、護衛か何かかしら? 複数人で辺りを警戒しているみたいだったし。その中央には高貴な服装の人物が居た。髪をオールバックにしている茶髪の男性だ。
すごく端正な顔立ちだったけれど、雰囲気的にその人の護衛に注意をされたわけね。
「気分を悪くしたなら申し訳ない。その者は私の護衛役なのだ」
「い、いえ……気分を悪くしたなんて、そんなことないです」
「そうか、なら良かった」
オールバックの男性は一般人の私にも丁寧に話してくれた。それに殿下って言われてたし。威圧的に接しない辺り、すごく好感の持てる人かもしれない。
「……?」
「どうかしたかな……? ん、君は……」
あれ、この顔と声はどこかで聞いた覚えがある。記憶が定かではないけれど……確かに以前に。オールバックの男性も何か様子が変わっているし……もしかして、このお方は……。
「うん、ありがとう母さん。行って来ます」
「ええ、行ってらっしゃい。あなたも気を付けてね?」
「ああ、分かっている。済まないが、少しの間、鍛冶屋の方は任せるよ」
「わかったわ」
今回も御者を雇っての旅になる。今回はクレルモン領内での移動ではなく、多少の長旅だ。私だけでは不安だからと、お父さんも付いて来てくれることになった。
「カウフマン、よろしく頼むよ」
「気を遣いなさんな、ラードフ。あんたとは古い付き合いじゃないか」
「カウフマンさん、よろしくお願いいたします」
「ははは、お安い御用さ」
今回の御者の方はお父さんの顔なじみのカウフマンさんだ。ちなみにラードフ・グラウスというのが私の父の名前に当たる。カウフマンさんは腕も立つので、御者兼護衛をお願いすることになったわけで。元冒険者をされていたはず。怪我が原因で引退して、今は御者の仕事で生計を立てているらしい。
私達はお母さんに挨拶をしてから、すぐに旅立った。
「しかし、ラードフから少ししか聞いていないが、なかなか大変だったみたいだな」
大変、というのはおそらくクレルモン公爵の屋敷を追放された件だと思う。親しい人には知れ渡っている頃だろうし、カウフマンさんも知っているみたいね。
「そうですね……お父さん達のおかげで多少は吹っ切れましたが、まだまだ悔しさや悲しさは残ります」
「そりゃあそうだろう。1年くらいも働いていた職場を、意味も分からず解雇されたんだ。おまけに退職金等もなかったんだろう?」
「そうですね……なかったです」
必要最低限の物以外は全て没収されているしね。錬金用の道具とかも全て。今までの給料の没収はなかったけれど、
「いくら公爵だからって、なんだよその待遇は……あり得ないだろ? 俺達の税金で贅沢な暮らしが出来てるってこと忘れてるんじゃねぇのか。これだから貴族様は嫌いなんだよな」
「娘のことを想って言ってくれるのは嬉しいが、不敬罪に問われかねないぞ?」
「ああ、そうかもな……そりゃあ、なかなか面倒だ」
お父さんは温度感が上がっているカウフマンさんを宥めていた。
「しかしまあ、王宮の錬金術師の試験を受けるっていうのは正しいかもな。ルアガタウンで働くのは、フェリちゃんの才能の無駄になるかもしれんし」
「いえ……王宮の錬金術師なんて、私程度で受かるとは思えないです……」
「いや、俺も錬金術には詳しくはないが、あのエルレインが弟子にした程の逸材だろ? 過小評価が過ぎるぜ、フェリちゃん」
「えっ?」
「まあ、気軽に受けてみれば大丈夫さ。多分な」
「は、はあ……分かりました」
カウフマンさんは私が合格するのが当たり前のような話し方だった。それに、エルレイン師匠のことも知っているような。師匠ってそんなに有名だったのかしら? それ以上は聞かなかったけれど、なんだか気になる話題ではあった。
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故郷の町を出発して1週間以上……その間の村々で寝泊りを繰り返し、王都ラクアーレに到着した。
「ようやく到着か……それにしても、流石は王都って感じだな」
「本当ですね……凄いです」
18年間の間で私が王都を訪れたのはこれで二度目だ。以前よりもさらに街並みが綺麗になっている気がする。
「よし、まずは適当な宿でも探すとしようか」
お父さんの提案に私とカウフマンさんは頷いた。ハンブリッジ王宮での試験を受けることになるわけだけれど、数日間は最低でも滞在することになるだろうしね。
馬車を停車場に止めて、そのまま王都内へと入る。正門では簡単な審査がされたけれど、問題なく通してもらえた。
「カウフマン、おすすめの宿屋はあるか?」
「そうだな……王都内の宿屋も多いからな、特におすすめってはないぜ。強いて言うなら、王宮から近い所が良いか」
「なるほど」
まあ、その方が錬金術の試験を受けやすいものね。私は妙に納得しながら周囲を見渡す。それにしても凄い人手ね……故郷のルアガタウンとは、何から何までが違うわ。
お店の数もそうだし……ルアガタウンには私のところくらいしか鍛冶屋はないけど、ここにはたくさんあるんでしょうね。試験とは別に単純に王都を訪れられたことが、私は嬉しくなっていた。もしも、王宮の錬金術師の試験が落ちたとしても、ここなら働き口が見つかりそうだしね。
「済まない、少し通してもらえるか? そこに立たれていると殿下の邪魔になってしまう」
「えっ? あ、すみません……!」
私が周囲を見渡していた時、死角から兵士の人の声が聞こえて来た。兵士というよりは、護衛か何かかしら? 複数人で辺りを警戒しているみたいだったし。その中央には高貴な服装の人物が居た。髪をオールバックにしている茶髪の男性だ。
すごく端正な顔立ちだったけれど、雰囲気的にその人の護衛に注意をされたわけね。
「気分を悪くしたなら申し訳ない。その者は私の護衛役なのだ」
「い、いえ……気分を悪くしたなんて、そんなことないです」
「そうか、なら良かった」
オールバックの男性は一般人の私にも丁寧に話してくれた。それに殿下って言われてたし。威圧的に接しない辺り、すごく好感の持てる人かもしれない。
「……?」
「どうかしたかな……? ん、君は……」
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