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7話 錬金術の試験 その2
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「うう……緊張する……」
「ははは、フェリ。ここまで来たんだ、後は当たって砕けろの精神で言って来い!」
「お父さん……はい、分かりました……」
普段はお茶目な印象もある父さんだけれど、流石は鍛冶屋といったところかな。こういう真剣な場では決して私を茶化すことはしなかった。父さんもそうだけれど、隣に立っているカウフマンさんも真剣な表情をしている。
「フェリちゃん……ここに来るまで色々あったと思うが、君はエルレインの弟子なんだ。自信を持って試験を受けな。合否なんて二の次で良いと思うぜ」
またカウフマンさんから、師匠の名前が出て来たわ。年齢的にはカウフマンさんの方が大分上だろうし、接点とかなさそうなのに。その辺りはいつか、詳しく聞いてみようかな。
まあ、それはともかくとして……まずは目の前のことに集中しなきゃね。
私や父さん、カウフマンさんは今、王宮内の普段は舞踏会で使われているであろう会場に居る。試験を受けるのは私だけれど、父さんやカウフマンさんもある意味では当事者なのかもしれない。一人だと緊張で倒れてしまいそうなので、二人の存在は非常にありがたかった。
「フェリ・グラウス」
「はい」
「今から試験を始める。私は以前に自己紹介はしているが、今回の錬金術の試験の総責任者を担っている、フレッド・ヴァンドル第三王子だ」
「はい、よろしくお願いいたします。王子殿下」
「ああ、こちらこそよろしく頼む。錬金術事業の向上は我がヴァンドル王国の繁栄に繋がると国王や元老院も感じてるからな」
今のフレッド王子殿下は非常に淡々と話している。プライベートではないので、敢えてそうしていらっしゃるのだと思うけれど。私の前には錬金窯を初め、幾つかの設備が設けられていた。すぐに調合を行える状態だ。
「試験はいつでも始めることが出来る。君が調合を開始してから、45分が制限時間だ。緊張しているのなら、少し深呼吸をしてから始めると良い」
「畏まりました、ありがとうございます」
なるほど……そういうことね。まあ、ラクアさんから受け取っていた用紙にも書かれていたことだけれど。開始できる時間をこちらで決められるのは、とても公正な試験かもしれない。まあ、そのくらい錬金術師が必要とも取れるし、1時間とか空けることは出来ないだろうけど。
私はフレッド王子殿下に言われた通り、3回程、深呼吸をした。私以外に試験を受けている人は居ないようだ。まあ、そんな簡単に被ることはないのかもしれないけれど。
どのくらいの合格率なのかとか、まったく聞いていなかったわね……でも、私がやれることは1つだけだわ。全力を出すだけ。
「始めます」
「よし、では開始だ!」
本来は言う必要はないのかもしれないけれど、フレッド王子殿下に分かりやすいように、声を掛けてから調合を開始した。不思議と緊張感は消えていき、いつも通りの調合が出来ている気がする……。
「こ、これは……」
なんだか私の調合に対して、フレッド王子殿下を始め、審査員を務めている人々の様子がおかしくなっていったのは気になるけれど……そんなことは気にしている余裕はなかった。
----------------------
「回復薬、毒回復薬、麻痺回復薬など……まさか、たった45分間でこれだけの数を作るとは……」
「しかも、フレッド王子殿下……この品質はあり得ないレベルです」
「う、うむ……そうか。まあ、経歴書を見る限り、このような結果になるのではないかと思っていたが……」
45分間の制限時間を終え、私の調合したアイテムは審査に掛けられている。どうしても緊張してしまうので、いつもよりも多く作ってしまったと思うけれど。果たして結果はどうなんだろうか? フレッド王子殿下達の会話を聞いている限りでは、不合格ということはなさそうだけれど……万が一ということもある。
私は決して油断せずに事の成り行きを見守ることにした。
「さて、フェリ・グラウス」
「はい、王子殿下」
「其方の錬金術の実力、しかと見定めさせてもらった」
審査を終えたのか、フレッド王子殿下は私の前に立って真剣な表情になっている。合否判定が行われる瞬間だ。
「複数人での審査を行った結果、其方は文句なく合格だ。その力、遺憾なく王宮内で活用してもらいたいと思っている」
「ご、合格ですか……? 本当に……?」
「ああ、君も分かっていただろうが、今回の合格者の中でもダントツの成績だ。君を不合格にする理由はない程だよ」
「あ、ああ……あ、ありがとうございます……! フレッド王子殿下……!」
フレッド王子殿下による合格の発言……それを聞いた時、私の緊張の糸は解けてしまったようだ。以前の母さんの時と同じだけれど、私は思わず涙を流してしまった。だって、新しい就職先が見つかったのだから。
新しい就職先が見つかっただけで、これだけ感動はしないだろうけれど、クレルモン公爵との一件があるからどうしてもね。
「フェリ……! おめでとう!」
「と、父さん……! ありがとう……!」
父さんも私の合格が嬉しかったのか、力強く抱き締めてくれる。涙で泣きはらした私としては、父さんの力強さは感じにくかったけれど、嬉しかった。
「素直におめでとうと言っておこうか。フェリ、これからよろしく頼む」
「はいっ! よろしくお願い致します、フレッド王子殿下!」
私はフレッド王子殿下に力強く返答した。ええと……これで私は王宮勤めの錬金術師になれたってことで良いのかな?
「ははは、フェリ。ここまで来たんだ、後は当たって砕けろの精神で言って来い!」
「お父さん……はい、分かりました……」
普段はお茶目な印象もある父さんだけれど、流石は鍛冶屋といったところかな。こういう真剣な場では決して私を茶化すことはしなかった。父さんもそうだけれど、隣に立っているカウフマンさんも真剣な表情をしている。
「フェリちゃん……ここに来るまで色々あったと思うが、君はエルレインの弟子なんだ。自信を持って試験を受けな。合否なんて二の次で良いと思うぜ」
またカウフマンさんから、師匠の名前が出て来たわ。年齢的にはカウフマンさんの方が大分上だろうし、接点とかなさそうなのに。その辺りはいつか、詳しく聞いてみようかな。
まあ、それはともかくとして……まずは目の前のことに集中しなきゃね。
私や父さん、カウフマンさんは今、王宮内の普段は舞踏会で使われているであろう会場に居る。試験を受けるのは私だけれど、父さんやカウフマンさんもある意味では当事者なのかもしれない。一人だと緊張で倒れてしまいそうなので、二人の存在は非常にありがたかった。
「フェリ・グラウス」
「はい」
「今から試験を始める。私は以前に自己紹介はしているが、今回の錬金術の試験の総責任者を担っている、フレッド・ヴァンドル第三王子だ」
「はい、よろしくお願いいたします。王子殿下」
「ああ、こちらこそよろしく頼む。錬金術事業の向上は我がヴァンドル王国の繁栄に繋がると国王や元老院も感じてるからな」
今のフレッド王子殿下は非常に淡々と話している。プライベートではないので、敢えてそうしていらっしゃるのだと思うけれど。私の前には錬金窯を初め、幾つかの設備が設けられていた。すぐに調合を行える状態だ。
「試験はいつでも始めることが出来る。君が調合を開始してから、45分が制限時間だ。緊張しているのなら、少し深呼吸をしてから始めると良い」
「畏まりました、ありがとうございます」
なるほど……そういうことね。まあ、ラクアさんから受け取っていた用紙にも書かれていたことだけれど。開始できる時間をこちらで決められるのは、とても公正な試験かもしれない。まあ、そのくらい錬金術師が必要とも取れるし、1時間とか空けることは出来ないだろうけど。
私はフレッド王子殿下に言われた通り、3回程、深呼吸をした。私以外に試験を受けている人は居ないようだ。まあ、そんな簡単に被ることはないのかもしれないけれど。
どのくらいの合格率なのかとか、まったく聞いていなかったわね……でも、私がやれることは1つだけだわ。全力を出すだけ。
「始めます」
「よし、では開始だ!」
本来は言う必要はないのかもしれないけれど、フレッド王子殿下に分かりやすいように、声を掛けてから調合を開始した。不思議と緊張感は消えていき、いつも通りの調合が出来ている気がする……。
「こ、これは……」
なんだか私の調合に対して、フレッド王子殿下を始め、審査員を務めている人々の様子がおかしくなっていったのは気になるけれど……そんなことは気にしている余裕はなかった。
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「回復薬、毒回復薬、麻痺回復薬など……まさか、たった45分間でこれだけの数を作るとは……」
「しかも、フレッド王子殿下……この品質はあり得ないレベルです」
「う、うむ……そうか。まあ、経歴書を見る限り、このような結果になるのではないかと思っていたが……」
45分間の制限時間を終え、私の調合したアイテムは審査に掛けられている。どうしても緊張してしまうので、いつもよりも多く作ってしまったと思うけれど。果たして結果はどうなんだろうか? フレッド王子殿下達の会話を聞いている限りでは、不合格ということはなさそうだけれど……万が一ということもある。
私は決して油断せずに事の成り行きを見守ることにした。
「さて、フェリ・グラウス」
「はい、王子殿下」
「其方の錬金術の実力、しかと見定めさせてもらった」
審査を終えたのか、フレッド王子殿下は私の前に立って真剣な表情になっている。合否判定が行われる瞬間だ。
「複数人での審査を行った結果、其方は文句なく合格だ。その力、遺憾なく王宮内で活用してもらいたいと思っている」
「ご、合格ですか……? 本当に……?」
「ああ、君も分かっていただろうが、今回の合格者の中でもダントツの成績だ。君を不合格にする理由はない程だよ」
「あ、ああ……あ、ありがとうございます……! フレッド王子殿下……!」
フレッド王子殿下による合格の発言……それを聞いた時、私の緊張の糸は解けてしまったようだ。以前の母さんの時と同じだけれど、私は思わず涙を流してしまった。だって、新しい就職先が見つかったのだから。
新しい就職先が見つかっただけで、これだけ感動はしないだろうけれど、クレルモン公爵との一件があるからどうしてもね。
「フェリ……! おめでとう!」
「と、父さん……! ありがとう……!」
父さんも私の合格が嬉しかったのか、力強く抱き締めてくれる。涙で泣きはらした私としては、父さんの力強さは感じにくかったけれど、嬉しかった。
「素直におめでとうと言っておこうか。フェリ、これからよろしく頼む」
「はいっ! よろしくお願い致します、フレッド王子殿下!」
私はフレッド王子殿下に力強く返答した。ええと……これで私は王宮勤めの錬金術師になれたってことで良いのかな?
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