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9話 生産性 その1
しおりを挟む(メギス・クレルモン公爵視点)
「しかし……平民でしかないあの女を追放出来て、本当に良かった」
「貴族錬金術師の皆様も不満があったようですからね……」
私は執事の一人であるカーネルと話をしている。
「そういうことだな。円滑な仕事をする為には、不穏分子の排除は当然だろう?」
「クレルモン公爵のご判断は正しかったと存じます。確かに、他の錬金術師の方々は、安心してお仕事に励んでおられるようでございますので」
「うむ、それなら良いのだ」
カーネルは私を立ててはいるようだが、どこか納得していない様子でもあった。まあ、それは仕方ないのかもしれんがな。カーネルはラビンフット男爵家の息子ではあるが、将来的には平民になる可能性の高い人物だ。
男爵家は一代限りで終わってしまう可能性の高い階級だからな。それを考え、我が屋敷の執事になったのは、、カーネルの賢い判断だと言えよう。この男も家系が平民に落ちてしまった場合、他の貴族からの攻撃の的にならないとも限らないが……使用人の場合は、特に問題のないケースも多い。まあ、その辺りは後で考えれば良いだろう。
「しかし、クレルモン公爵。1つだけ問題が出ておりまして……」
「どうしたのだ?」
「はい……フェリ・グラウスを解雇してからの、錬金アイテムの生産性なのですが、明らかに低下しているように見受けられます」
「なんだと……?」
この屋敷には10人を超える錬金術師が働いている。フェリの後釜として採用した者もいるのだからな。
「セスタ伯爵令嬢も加わっているのだぞ? 生産力が落ちるなど、考えられないが……何かの間違いではないのか?」
「いえ、それが事実なのでございます。何度か検証を行いましたので、おそらく間違いはござません。セスタ様の錬金術師としての能力は確かに高いのですが、それでも前の生産力を保てていないのが現状でして」
「バカな……それが事実だとすれば……」
今までの錬金術師達のアイテム製造については、個別の記録は取らずに作られたアイテムの総数で、生産性の計算をしていた。そんな中、平民のフェリと一緒に働いていることへの不満が出て来たわけだが……。
「そうなると、フェリ・グラウスが生産力の平均値を上げていた可能性があるのか?」
「その可能性は高いかと思われます。さらに、新しい情報によると……」
「な、なんだ?」
「王都の王宮にて新しい錬金術師の採用が行われていたようですが、その中にフェリ・グラウスも入っているようでございます」
な、何だと……? あの女、王都の錬金術師の試験をクリアしたと言うのか? 狭き門のはずだが……いや、そんなバカなことが……。私はとても信じられないでいた。
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主人公が今までどれだけ貢献していたのか、よく分かるところですかね
それに気付かないのはどうかと思いますが……
読んでいただきありがとうございます
「開いた口が塞がらない」という表現は多用しておりますが
驚き呆れているという意味合いで主に使っております
こいつ馬鹿だ……という表現として使っていると思っていただければ幸いでございます