幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス

文字の大きさ
3 / 43

3話 エレナの苦悩

しおりを挟む
「どういうつもりですか、リグリット様!?」

「うるさいな……耳元で叫ぶのは止めてくれ……」


 私はその日、リグリット様を問い詰めていた。彼は適当にしか聞いていないけれど、私は真剣だ。最近のリグリット様の態度は目に見えておかしかった。幼馴染のアミーナ様を優先し過ぎている。

 この前のパーティーの進行自体も彼が主催したにも関わらず、私に完全に丸投げをしていたし。さらに、私への何らかのプレゼントを用意するという名目で、二人は何度も貴族街でのデートを重ねていたのだった。私にプレゼントが送られたことはなく、全てアミーナ様に還元されているし。

 これでは、誰がリグリット様の婚約者か分かったものではない。

「最近のリグリット様は、アミーナ様との仲を優先し過ぎていますね」

「おいおい、だから言っているだろう? アミーナは私の大切な幼馴染なんだと。彼女の家系は長期の遠征に出ていた。何年か振りの再会なんだ、少しくらい大目に見てくれても良いだろう?」

「少しくらいなら大目に見ますが……」

 二人の関係性は明らかに度を越していると思う。現に何人かの貴族は、リグリット様とアミーナ様の二人が婚約関係にあると思っているほどだし。その辺りを全て鑑みた上で、私は彼に問いかけた。

「リグリット様は私への愛は……ないのですか?」

「もしかして、ヤキモチか? エレナ、お前はなかなか面倒くさい女だな……」

「リグリット様……」


 彼は本気で私の態度に嫌がっているようだった。正直に言って、私のセリフなんだけれど……。


「お前との仲よりも、アミーナとの関係を深めていきたいと考えているのは事実だ」

「り、リグリット様……!? 本気で言っているのですか?」


 信じられない言葉をハッキリと言った彼に対して、私は感情的になり始めていた。こんな言葉を悪びれる様子もなく言える人だったなんて、という思いが先行している。


「過ごして来た時間の問題だ、当たり前だろう? しかしだな、エレナ。お前との婚約は破棄しないから安心しろ」

「えっ……? どういうことですか?」

 別れ話になるかと思っていたのに、リグリット様はそれはしないと言い出した。どういうつもりだろうか?


「侯爵令嬢であるお前の家系との縁を切りたくはないのだ。アミーナのことは好きだが、彼女は伯爵令嬢でしかないからな。政略結婚にはお前の方が向いている、ということだ」

「そ、そんな! それでは私は……」


 政略結婚の為の道具でしかない……リグリット様はそう言っているも同然だった。おそらくはアミーナ様とは愛人としての関係になるのだろうけど……この国では推奨されていることではない。

「エレナ。私との婚約を破棄した場合、どうなるか分かっているのだろうな? 公爵家の力を最大限に使わせてもらうぞ」

「そんな……リグリット様……」

「ふはははは、お前は優秀な女だからな。私の元から一生離れることは許さんよ!」


 最初からだったのかしら……リグリット様はずっと隠していただけで、今、本音を打ち明けたというの? 私は彼から逃げ出すことは出来ない、これからもずっと……。



---------------------------


 私はその日は、貴族街にあるランカスター家に帰ることにした。今頃、リグリット様はアミーナ・ファルス伯爵令嬢と仲良くしているのだろう。簡単にその光景が頭に浮かんでしまう。

 真実を知った今、彼との関係を続けたいとは思わなかった。

 婚約破棄をしたい、その思いが強くなってくる。

 しかし、それをしてしまうと、我がランカスター家がどうなってしまうか。お父様達に迷惑を掛けてしまうことになるだろう。それだけは避けたかった。私一人が我慢すれば、家を守ることが出来る。

 そう、私が我慢すれば……それしか選択肢はない。


「エレナか、久しぶりだな」


 そうだ、私が我慢するんだ……リグリット様と結婚するのはとても嫌だけれど……あれ、何か聞こえたような?


「エレナ、どうしたんだ? 元気がなさそうだが……」

「えっ……?」


 空耳ではない。屋敷の入り口に佇んでいた私に話しかける男性の声……確かに聞こえた。私はその人物に向き直る。そこに居たのは……。


「ヨハン王子殿下……?」
しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

幼馴染を溺愛する婚約者を懇切丁寧に説得してみた。

ましろ
恋愛
この度、婚約が決まりました。 100%政略。一度もお会いしたことはございませんが、社交界ではチラホラと噂有りの難物でございます。 曰く、幼馴染を溺愛しているとか。 それならばそのお二人で結婚したらいいのに、とは思いますが、決まったものは仕方がありません。 さて、どうしましょうか? ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

私が家出をしたことを知って、旦那様は分かりやすく後悔し始めたようです

睡蓮
恋愛
リヒト侯爵様、婚約者である私がいなくなった後で、どうぞお好きなようになさってください。あなたがどれだけ焦ろうとも、もう私には関係のない話ですので。

〖完結〗その愛、お断りします。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った…… 彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。 邪魔なのは、私だ。 そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。 「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。 冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない! *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...