幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス

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7話 リグリットとの状況 その2

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「ガイア・バークス公爵の息子がまさか……そんなクズな人間だったとはな」

「ヨハン様……? だ、大丈夫ですか……?」


 ヨハン様は表情だけでなく、声まで低くなっていた。私は思わず彼の名前を呼んでしまう。


「あ、ああ……済まない、エレナ。大丈夫だよ」

「びっくりさせないでよ、もう……!」


 ヨハン様が正気に戻ったようで、私は心底安心した。だって、さっきまでの彼は本当に怖かったから。何をしでかすのか分からないほどに……。それで、ついつい話し方が、うん……間違ってしまった。


「ははは、悪い悪い。しかし驚いたな……まさか、以前のエレナの話し方を聞けるとは思わなかったよ」

「あ……! し、失礼いたしました! 大変なご無礼を……!」

 私は顔を真っ赤にしてヨハン様に謝罪した。まさか……昔の話し方をしてしまうなんて、一瞬のこととは言え、大変な不覚だ。私は子供の頃、ヨハン様のことを呼び捨てにし、普通の友達のように話していた時期がある。それは失礼だとお父様に聞かされ、すぐに改めたのだけれど。


「はははっ! 気にしなくて構わないよ、エレナ。私としてはむしろ懐かしい感じがして楽しいものだし。出来れば、その昔の話し方でしゃべってくれないか?」

「も、申し訳ありません……それはご容赦を……ヨハン様を呼び捨てだなんて、やはり出来ません」

「さっきしてたじゃないか」

「ヨハン様の名前は呼んでいませんよっ!」

「それもそうだったか……う~む、惜しい……」

「もう……ヨハン様はお変わりありませんね。遠いお方になってしまったのかと不安でもありましたが……なんだか安心致しました」

「そうかな? これでも変化がなかったわけじゃないさ」

「わかっています。幼馴染としての部分が変わっていないようで、安心しました」


 気のせいかヨハン様も以前の優しい話し方になっているような気がする。わざとしているのかしら? まあ、流石に私の方は戻すわけにはいかないけれどね。ごめんなさい、ヨハン様。


 まだまだ身近な王子殿下でいらっしゃる。ヨハン様は第二王子殿下だから、今後、必ず王位継承権争いに参加することになるけれど。そうなると、嫌でも遠いお方になってしまうだろう。つかの間の幼馴染という関係……私はそれを享受したいと思ってしまった。

 リグリット様の一件があったから、より寂しくなっているのかもしれない……。

 慰めてほしいと言う気持ちは確かにあるけれど、誰でも良いというわけじゃない。


「さて、話を戻すようで申し訳ないが、リグリット殿をどうするかだが……」

「は、はい……ヨハン様」

「エレナからの話を受けているからな。直接、話をしてもいいのだが……まずは、頼れる先を失くしておこうか」

「頼れる先を失くす……ですか?」


 ヨハン様の言葉の意味を理解できなかった。一体、どういうことだろうか。


「リグリット・バークス公爵令息はなぜ強権を振るえるか、分からないか?」

「あ、そういうことですか」

「ああ。父親であるガイア・バークス公爵に会いに行くか」


 自信満々の笑みを向けヨハン様は言った。ガイア・バークス公爵閣下に会いに行く……こんな簡単に聞こえるのは、ヨハン様が第二王子殿下だからかな。改めて彼の地位の高さを思い知った。



----------------------------


(リグリット視点)


「ねえ、リグリット」

「なんだい、アミーナ?」


 本日はアミーナと二人だけの時間を過ごしている。場所は私の部屋の中だ。今日はエレナの奴は居ないが……まあ、こういう日も穏やかでいい。最近のあいつは五月蠅かったからな。まったく……くだらないヤキモチを妬きおって。

「リグリット、エレナ令嬢とは別れてくれないわけ? 私と一緒になりたくはないの?」

「一緒になりたいに決まっているだろう? だがまあ、こう見えても私は公爵家の人間なんでな。なるべく身分の高い令嬢と一緒になる義務があるんだよ」

「まあ……だから侯爵令嬢であるエレナ様ってわけ?」

「そういうことだ。この際、エレナの奴は利用するだけ利用しまくってやろうという算段さ。決して別れてなどやるものか。エレナには二度と幸せなど訪れないだろうな、ふははははっ」

「まあ! リグリット、とても悪い人だわ。うふふふふっ」


 アミーナもそうは言うものの、私の意見に賛同しているようだった。その証拠に私の背中に両手を回して来たのだから。


「私、あなたとの子供が欲しいわ……」

「おいおい、なかなか危険なことを言うじゃないか」

「大丈夫よ、私の家系だって伯爵家だもの。遠く離れた別荘地で身寄りのない子共という体裁で、育てることくらいワケないでしょ」

「まあ、それもそうかもしれないな」


 そして、私達はキスを何度も行った。アミーナとの子供か……うむ、悪くないな。養育費については、ランカスター家から大量に奪い取るというのも面白いかもしれない。

 私はガイア・バークス公爵の子息、リグリット・バークス。私に出来ないことなど無いと言っても、過言ではないのだから。
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