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15話 ヨハン王子殿下の反撃 その2
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「個人的にはアミーナ嬢のことはどうでも良い。しかしまあ、今回ばかりは少し気の毒だからな」
「ヨハン殿下……」
あれ? アミーナ様の見る目がなんだか自らを助けてくれる想い人、みたいになっている。私は少しだけ感情が高ぶってしまった。
「勘違いするな、アミーナ嬢。これから私がすることは全て、エレナの為だ」
「うっ……も、申し訳ありませんでした……」
アミーナ様のときめきは10秒も掛からずに粉砕されたようね。少しだけ私は安心する。
「ヨハン王子殿下……そこの女狐が気の毒とおっしゃるのですか? それに、我が息子、リグリットの言っていることがデタラメだとおっしゃったことも忘れてませんぞ? 一体、どういうおつもりなのですか?」
ガイア様は焦っている様子だけれど、ヨハン様にとても喧嘩腰だった。言葉遣いは丁寧だけれど、その表情は王子殿下に向けるものではなくなっている。
「エレナ。アミーナ嬢はリグリットに対して、自分を選ばないと死んでやるなど、そんな鬼気迫る行動を取っていたのか?」
まずは私への質問からヨハン様は始めるようだ。私はすぐに首を横に振った。そんなこと、欠片ほども見たことがない。あのアミーナ嬢がそんなことをするなんて考えられないし、何よりもまずする必要がない。
だから私は正直に言った。
「いえ、アミーナ様がそんなことを言うはずはありません」
「それを何か証明できないかな? ガイア殿はそうしないと、納得しないようなのでな」
「はい、ございます。まず、リグリット様とアミーナ様は相思相愛としか思えない仲でございました。最初から最後まで、完璧と言っていいくらいに。そんな状態なのに、なぜアミーナ様が鬼気迫る発言をする必要があるのでしょうか? ご自分にとっても不利益になりますし、あり得ないことだと思います。印象を悪くしてしまうのですから」
「まあ、その通りだろうな。ガイア殿、如何だろうか? そもそもの問題として、アミーナ嬢は疫病神になり得なかったようなのだが」
非常に冷たい声でヨハン様はガイア様に語り掛けていた。楽しむとは言っていたけれど、公爵にこんな説明をしなければならないのは、とても情けなく感じているのだと思う。
「い、いや……しかし! リグリットは騙されていた、と!」
一番最初はリグリット様を疑っていたはずなのに、現在では完全に彼の味方になっているガイア様。非常に残念だった。
「まともな思考を持つ者なら、リグリットが嘘を吐いているかもしれないという考えに辿り着くだろう。ガイア殿、バークス公爵家を守りたいという貴殿の考えも分からなくはない。そういった考えはどうしても出てきてしまうだろう。その場合、アミーナ嬢に全ての罪を被せることが、この場での最善策になるだろうからな」
ヨハン様はガイア様に説教を行っているようだった。いくら王子殿下が相手とはいえ、自分よりもかなり歳下の人物に窘められるのは、かなりの屈辱になると思う。ヨハン様はおそらく、その辺りも理解して話しているだろう。
「まあ、本当の意味での最善策は、リグリットが素直に謝罪することだったのだがな。もう遅いが」
「ぬ、ぬう……王子殿下。リグリットが嘘を吐いているとおっしゃるのですか……!?」
「このまま状況で議会まで話を持っていく気か? それでも構わないが、その場合は公爵家の全ての使用人からの言質も取るぞ。それから、エレナやアミーナ嬢の発言などを含めて……どういう結果になるか、言わなくても分かるだろう」
「そ、それは……!!」
当然、議会まで事が進んでしまえば、ガイア様に勝ち目はない。そして……それだけでは終わらない。
「議会での判決が下った場合、最悪の場合、バークス家そのものが没落する可能性があることも覚悟しておけ。それでもなお、リグリットの言葉を信じ続けるというのであれば……まあ、それが貴殿の進む道なのだろうな」
「ち、父上……わ、私は、あの……!」
「嘘を吐いていたのか? リグリット? 正直に言うのだ……」
失意のガイア様はリグリット様と目が合っていた。その時に気付いたのだと思う、彼が嘘を吐いているということに。あり得ない程に焦っていたから。ヨハン様の脅しにも近い言葉が相当に効いたようね。
「も、申し訳ありません……父上……! 私は父上に、失望されたくないと……!」
「ば、馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ひ、ひい……! 父上……!! 申し訳ありません!」
思わず耳を塞ぎたくなる、ガイア様の怒号が部屋中を駆け巡った。窓は開いていたから外にも響いているわねきっと……。
「ヨハン殿下……」
あれ? アミーナ様の見る目がなんだか自らを助けてくれる想い人、みたいになっている。私は少しだけ感情が高ぶってしまった。
「勘違いするな、アミーナ嬢。これから私がすることは全て、エレナの為だ」
「うっ……も、申し訳ありませんでした……」
アミーナ様のときめきは10秒も掛からずに粉砕されたようね。少しだけ私は安心する。
「ヨハン王子殿下……そこの女狐が気の毒とおっしゃるのですか? それに、我が息子、リグリットの言っていることがデタラメだとおっしゃったことも忘れてませんぞ? 一体、どういうおつもりなのですか?」
ガイア様は焦っている様子だけれど、ヨハン様にとても喧嘩腰だった。言葉遣いは丁寧だけれど、その表情は王子殿下に向けるものではなくなっている。
「エレナ。アミーナ嬢はリグリットに対して、自分を選ばないと死んでやるなど、そんな鬼気迫る行動を取っていたのか?」
まずは私への質問からヨハン様は始めるようだ。私はすぐに首を横に振った。そんなこと、欠片ほども見たことがない。あのアミーナ嬢がそんなことをするなんて考えられないし、何よりもまずする必要がない。
だから私は正直に言った。
「いえ、アミーナ様がそんなことを言うはずはありません」
「それを何か証明できないかな? ガイア殿はそうしないと、納得しないようなのでな」
「はい、ございます。まず、リグリット様とアミーナ様は相思相愛としか思えない仲でございました。最初から最後まで、完璧と言っていいくらいに。そんな状態なのに、なぜアミーナ様が鬼気迫る発言をする必要があるのでしょうか? ご自分にとっても不利益になりますし、あり得ないことだと思います。印象を悪くしてしまうのですから」
「まあ、その通りだろうな。ガイア殿、如何だろうか? そもそもの問題として、アミーナ嬢は疫病神になり得なかったようなのだが」
非常に冷たい声でヨハン様はガイア様に語り掛けていた。楽しむとは言っていたけれど、公爵にこんな説明をしなければならないのは、とても情けなく感じているのだと思う。
「い、いや……しかし! リグリットは騙されていた、と!」
一番最初はリグリット様を疑っていたはずなのに、現在では完全に彼の味方になっているガイア様。非常に残念だった。
「まともな思考を持つ者なら、リグリットが嘘を吐いているかもしれないという考えに辿り着くだろう。ガイア殿、バークス公爵家を守りたいという貴殿の考えも分からなくはない。そういった考えはどうしても出てきてしまうだろう。その場合、アミーナ嬢に全ての罪を被せることが、この場での最善策になるだろうからな」
ヨハン様はガイア様に説教を行っているようだった。いくら王子殿下が相手とはいえ、自分よりもかなり歳下の人物に窘められるのは、かなりの屈辱になると思う。ヨハン様はおそらく、その辺りも理解して話しているだろう。
「まあ、本当の意味での最善策は、リグリットが素直に謝罪することだったのだがな。もう遅いが」
「ぬ、ぬう……王子殿下。リグリットが嘘を吐いているとおっしゃるのですか……!?」
「このまま状況で議会まで話を持っていく気か? それでも構わないが、その場合は公爵家の全ての使用人からの言質も取るぞ。それから、エレナやアミーナ嬢の発言などを含めて……どういう結果になるか、言わなくても分かるだろう」
「そ、それは……!!」
当然、議会まで事が進んでしまえば、ガイア様に勝ち目はない。そして……それだけでは終わらない。
「議会での判決が下った場合、最悪の場合、バークス家そのものが没落する可能性があることも覚悟しておけ。それでもなお、リグリットの言葉を信じ続けるというのであれば……まあ、それが貴殿の進む道なのだろうな」
「ち、父上……わ、私は、あの……!」
「嘘を吐いていたのか? リグリット? 正直に言うのだ……」
失意のガイア様はリグリット様と目が合っていた。その時に気付いたのだと思う、彼が嘘を吐いているということに。あり得ない程に焦っていたから。ヨハン様の脅しにも近い言葉が相当に効いたようね。
「も、申し訳ありません……父上……! 私は父上に、失望されたくないと……!」
「ば、馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ひ、ひい……! 父上……!! 申し訳ありません!」
思わず耳を塞ぎたくなる、ガイア様の怒号が部屋中を駆け巡った。窓は開いていたから外にも響いているわねきっと……。
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