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17話 公爵夫人登場 その1
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エメラダ・バークス公爵夫人。ガイア・バークス公爵の奥様に当たる人物だ。リグリット様のお母様になり、私も婚約の挨拶の時にはお会いしたことがある。もちろん、それ以外でも何度か会っているけれど……うん、まあ印象としては、とても怖い。色々な意味で。
「ヨハン王子殿下、ようこそいらっしゃいました。状況は使用人から聞いております。簡易的な挨拶になることをお許しいただけますでしょうか?」
「もちろんだ。気にしないでいただきたい、エメラダ夫人」
「ありがとうございます」
状況が状況だったので、私やアミーナ様への挨拶は省略された。エメラダ様は現在、私やヨハン様が集まっていた部屋に入っている。彼女の後ろには何人かの使用人の姿があったが、とても不安そうにしていた。しかし、それ以上に不安な表情になっているのはガイア様だ。
エメラダ様はそんなガイア様に向き直る。
「ガイア、どういうことなの? 使用人から聞いてはいるけれど」
「エメラダ……その、実はだな……」
エメラダ様はガイア様とは恋愛結婚をされているらしく、現在でも彼のことを名前で呼んでいる。それはリグリット様と婚約が決まった時に聞いた内容だった。その点は特に問題ないけれど、ガイア様が取り乱しているのが気になる……。
「エメラダ夫人が、どの程度詳しく知っているか分からないが、子息のリグリットが少々やらかしてしまったようだ」
「リグリットが……なるほど、ご迷惑をお掛けしてしまったようですね。申し訳ありません」
「ああ」
「可能でございましたら、詳細な内容をお伺いさせていただけませんでしょうか……?」
エメラダ様もリグリット様の素行については知らなかったのかな? おそらくは自分の把握している事実との擦り合わせの為に聞いているのだと思うけれど。
「もちろんだ、エメラダ夫人。その辺りについては説明差し上げる必要があるだろう」
「ヨハン殿下、私からエメラダ様にご説明を差し上げてもよろしいでしょうか?」
「平気か、エレナ? 説明をしたいというならば、止めはしないが……」
「はい、大丈夫でございます。エメラダ様にお話しすることは私の責務だと思っているので」
なぜか分からないけれど、そんな気持ちになってしまった。バークス公爵家の御曹司であるリグリット様がアミーナ様という幼馴染と付き合い、私を蔑ろにし、婚約破棄を断っている今回の問題。
この問題を円滑に解決させる為には、エメラダ様の力が必なのだと思う。おそらくではあるけれど、彼女はこの家の中でもっとも権力が強いのだろうし。私は自分に起こった全てをエメラダ様に話した。話を聞いている彼女の表情がみるみる変化していくことに驚かされてしまうけれど……。
ガイア様と同じくリグリット様を信じたい余り、変な方向にシフトしないことを祈るばかりだ。するとエメラダ様は口を開き始めた。
「……リグリットはどうやら、次の公爵家の当主には向いていないようね。アミーナ嬢に関しては……あなたの家系から慰謝料の請求をさせていただきます」
エメラダ様は私の話を聞いて、驚く様子は見せていたけれど、とても建設的な話をし始めた。彼女の中では既に、今後、進むべき道筋が見えているのかもしれないわね。
「ヨハン王子殿下、ようこそいらっしゃいました。状況は使用人から聞いております。簡易的な挨拶になることをお許しいただけますでしょうか?」
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エメラダ様はそんなガイア様に向き直る。
「ガイア、どういうことなの? 使用人から聞いてはいるけれど」
「エメラダ……その、実はだな……」
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「リグリットが……なるほど、ご迷惑をお掛けしてしまったようですね。申し訳ありません」
「ああ」
「可能でございましたら、詳細な内容をお伺いさせていただけませんでしょうか……?」
エメラダ様もリグリット様の素行については知らなかったのかな? おそらくは自分の把握している事実との擦り合わせの為に聞いているのだと思うけれど。
「もちろんだ、エメラダ夫人。その辺りについては説明差し上げる必要があるだろう」
「ヨハン殿下、私からエメラダ様にご説明を差し上げてもよろしいでしょうか?」
「平気か、エレナ? 説明をしたいというならば、止めはしないが……」
「はい、大丈夫でございます。エメラダ様にお話しすることは私の責務だと思っているので」
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「……リグリットはどうやら、次の公爵家の当主には向いていないようね。アミーナ嬢に関しては……あなたの家系から慰謝料の請求をさせていただきます」
エメラダ様は私の話を聞いて、驚く様子は見せていたけれど、とても建設的な話をし始めた。彼女の中では既に、今後、進むべき道筋が見えているのかもしれないわね。
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