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34話 終着点が見えてきた?
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「よ、ヨハン様……それは本当なんですか?」
「ああ、私も又聞きでしかないが、確かな情報筋からの連絡だ」
私はヨハン様から聞いた内容に驚かされていた。私の家系であるランカスター家がクローヌ川……つまりバークス公爵家の土地として河川付近を選んだことは周知の事実になっていたけれど。
ヨハン様から聞かされたことは、私の想像を絶するものであった。エメラダ夫人がその土地の引き渡しを拒んだとかであれば、まだ分かるのだけれど……彼から聞かされたのは、まさかのアミーナ様のことだったからだ。
「アミーナ・ファルス伯爵令嬢の本気……まあ、復讐と言った方が正しいか」
「で、ですよね……リグリット様に直接、子供を孕んだので養育費を請求するなんていうのは……」
アミーナ様が本当に妊娠しているかは、現在のところでは不明だけれど、真偽なんてすぐに分かることだしその部分で嘘だとは思えなかった。ただ、自分が孕んだという理由でリグリット様に養育費を請求する度胸は……まあ、流石と言えるかもしれない。素直に喜べることではないけれど……。
「まあ、エレナの考えは何となく分かるよ。アミーナ嬢が養育費をリグリットに請求するのが納得いかないんだろう?」
「は、はい……左様でございます……」
ヨハン様に嘘を言っても仕方がないので、私は正直に答える。リグリット様はもちろんだけれど、私からするとアミーナ様も加害者になるわけで……その加害者が、私に謝罪することもなく、自分は被害者だとばかりにリグリット様に養育費の請求をしているのが納得できなかった。
アミーナ様が妊娠したのは自業自得だとしか、私からすれば思えないし……。
「まあ、バークス公爵家は養育費と君からの慰謝料請求である、クローヌ川の引き渡しでとても大変な状況なようだ」
「なるほど……まあ、同情する気にはなれませんが」
「まあ、そうだな。リグリット殿もエメラダ夫人から完全に見放されたらしいが、そちらについても私達が気にすることではないと思う」
「そうですね、私達はバークス公爵家がちゃんと慰謝料を支払うのかを注視していれば良いわけですからね」
「そういうことだな。まあ、流石にクローヌ川を含んだ土地の明け渡しを拒否するとは思えないが。リグリット・バークスの問題も抱えている中で、今更、慰謝料の支払いを拒んだりしたら、いくら公爵家とはいえ滅んでしまうからな。後の内部でのイザコザについては、私達が携わらないようにすれば、問題は生じないだろう」
「左様でございますね……少し、終着点が見えてきたようで安心しました」
「そうだな」
終着点、と言ってしまうと語弊があるかもしれないけれど……ようやく一区切り出来る目安が見えて来たと思う。
この時の私は安心感に酔いしれていた。
この後に起きる、大きな事件のことを予想できずに……。
「ああ、私も又聞きでしかないが、確かな情報筋からの連絡だ」
私はヨハン様から聞いた内容に驚かされていた。私の家系であるランカスター家がクローヌ川……つまりバークス公爵家の土地として河川付近を選んだことは周知の事実になっていたけれど。
ヨハン様から聞かされたことは、私の想像を絶するものであった。エメラダ夫人がその土地の引き渡しを拒んだとかであれば、まだ分かるのだけれど……彼から聞かされたのは、まさかのアミーナ様のことだったからだ。
「アミーナ・ファルス伯爵令嬢の本気……まあ、復讐と言った方が正しいか」
「で、ですよね……リグリット様に直接、子供を孕んだので養育費を請求するなんていうのは……」
アミーナ様が本当に妊娠しているかは、現在のところでは不明だけれど、真偽なんてすぐに分かることだしその部分で嘘だとは思えなかった。ただ、自分が孕んだという理由でリグリット様に養育費を請求する度胸は……まあ、流石と言えるかもしれない。素直に喜べることではないけれど……。
「まあ、エレナの考えは何となく分かるよ。アミーナ嬢が養育費をリグリットに請求するのが納得いかないんだろう?」
「は、はい……左様でございます……」
ヨハン様に嘘を言っても仕方がないので、私は正直に答える。リグリット様はもちろんだけれど、私からするとアミーナ様も加害者になるわけで……その加害者が、私に謝罪することもなく、自分は被害者だとばかりにリグリット様に養育費の請求をしているのが納得できなかった。
アミーナ様が妊娠したのは自業自得だとしか、私からすれば思えないし……。
「まあ、バークス公爵家は養育費と君からの慰謝料請求である、クローヌ川の引き渡しでとても大変な状況なようだ」
「なるほど……まあ、同情する気にはなれませんが」
「まあ、そうだな。リグリット殿もエメラダ夫人から完全に見放されたらしいが、そちらについても私達が気にすることではないと思う」
「そうですね、私達はバークス公爵家がちゃんと慰謝料を支払うのかを注視していれば良いわけですからね」
「そういうことだな。まあ、流石にクローヌ川を含んだ土地の明け渡しを拒否するとは思えないが。リグリット・バークスの問題も抱えている中で、今更、慰謝料の支払いを拒んだりしたら、いくら公爵家とはいえ滅んでしまうからな。後の内部でのイザコザについては、私達が携わらないようにすれば、問題は生じないだろう」
「左様でございますね……少し、終着点が見えてきたようで安心しました」
「そうだな」
終着点、と言ってしまうと語弊があるかもしれないけれど……ようやく一区切り出来る目安が見えて来たと思う。
この時の私は安心感に酔いしれていた。
この後に起きる、大きな事件のことを予想できずに……。
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