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43話 エレナとヨハン
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あれからまた時が流れた……。
「クローヌ川の設備拡張とその費用、取り扱う予定の交易品のリストになっている。直接、お前が携わるのは一部だけだと思うが、念のために目を通しておいてくれ」
「畏まりました、お父様」
私はお父様より、それなりに分厚い資料を渡された。バークス公爵家の一件から半年以上が経過し、色々なことがあったけれど、なんとか上手く収束したように思える。私は今、達成感というか満足感を感じていた。
「この事業が成功すれば、ランカスター家はさらに発展しそうですね」
「そうだな。いやはや、何度も言ったことではあるが……お前が自分の慰謝料を土地での請求に変えたと聞いた時は、どうなるものかと思ったぞ。しかも、クローヌ川周辺の土地の奪取となれば、バークス公爵家にとっても痛手だろうしな」
「あれは、ヨハン様……いえ、ヨハンが傍に居てくれたからでございます、お父様。彼が私に勇気をくれたようなものです」
「なるほど、美しい話だな。お前達二人が上手くいくことを心から願っているよ」
「はいっ! ありがとうございます!」
時が流れてから、変わったこともある。まず、私と幼馴染のヨハン王子殿下が婚約したのだ。以前から彼は、自分との会話は敬語はなしにして欲しいと言っていた。偶に出てしまうけれど、現在はなんとか普通の言葉で話すように努力している。
「それでは、お父様。私は一旦、部屋に戻りますね」
「うむ、ヨハン様によろしくな。私は少し、出掛ける用事があるのでな」
「はいっ、分かりました」
私はヨハン王子殿下を私室に待たせていたので、そのまま急いで向かうことにした。幼馴染で婚約者といえども、王子殿下を待たせ過ぎるのは失礼になるからね。
-------------------------
「ヨハン、入るわね」
「ああ、どうぞ。と言っても、私の部屋ではないけどな」
「ふふ、そうですね……て、やっぱり駄目ね。なかなか、敬語を消すことが出来ないわ」
「まあ、ゆっくりでいいよ。私もそんなに急いではいないからね」
「そうなんだ、良かったわ。なんとか、あなたが遠征に向かう前には……直しておくわ」
私室に居たヨハン王子殿下は私を見て優しく微笑んでくれている。バークス公爵家に振り回されるところから始まって……本当に長い物語だったような気がするわ。リグリット様、ガイア様、エメラダ夫人にアミーナ様……関係した人も多かったけれど、まあ、終わり良ければ何とやらってね。
私の成長の糧となる良い経験だったように思えるしね! リグリット様はそう言えば、半年の懲役を終えて、確か領地経営に勤しんでいるはず……成功しているのかは、分からないけれど。バークス家はガイア様が正式に引退されたみたいね。やはり、後釜としては次男のマグリット様だった。
「遠征……私としてはあまり、気乗りしないものではあるが」
「王子殿下がそんなこと言ったら駄目じゃない」
「まあ、冗談だよ。しばらく、君と会えなくなるからね……それが寂しいんだ」
「それはありがたいことだけれど、仕方ないわね」
「ああ」
ヨハン王子殿下は周辺国家の調査という名目で、遠征の予定が入っている。大体、調査期間は4か月くらいなのだそうだ。婚約者とはいえ、その遠征に私が付いて行くなんてことは出来ない。まあ、当然だけれど。
「まあ、まだ先の事だし、こんなことを言うのもあれなんだが。エレナ、聞いてくれるかな?」
「どうしたの、ヨハン?」
「私が遠征から戻ったら……」
「戻ったら?」
真剣なヨハン王子殿下の瞳……私はその瞳に吸い込まれそうになっていた。
「すぐに結婚式を開こうか」
「ヨハン……!」
「駄目かな?」
とても壮大なフラグに見えてしまうけれど……大丈夫、彼に限ってそんなことにはならない。絶対に。
「もちろんです! ヨハン殿下!」
「ありがとう、エレナ!」
私は嬉しさのあまり、彼の胸に飛び込んでしまった。それをしっかりと受け止めてくれるヨハン。私は今、最高に幸せを感じていた。願わくば、この幸せが永遠となるように……ヨハンと一緒に歩んで行きたいものだ。
私たちの物語はまだまだ始まったばかり……。
おしまい!
「クローヌ川の設備拡張とその費用、取り扱う予定の交易品のリストになっている。直接、お前が携わるのは一部だけだと思うが、念のために目を通しておいてくれ」
「畏まりました、お父様」
私はお父様より、それなりに分厚い資料を渡された。バークス公爵家の一件から半年以上が経過し、色々なことがあったけれど、なんとか上手く収束したように思える。私は今、達成感というか満足感を感じていた。
「この事業が成功すれば、ランカスター家はさらに発展しそうですね」
「そうだな。いやはや、何度も言ったことではあるが……お前が自分の慰謝料を土地での請求に変えたと聞いた時は、どうなるものかと思ったぞ。しかも、クローヌ川周辺の土地の奪取となれば、バークス公爵家にとっても痛手だろうしな」
「あれは、ヨハン様……いえ、ヨハンが傍に居てくれたからでございます、お父様。彼が私に勇気をくれたようなものです」
「なるほど、美しい話だな。お前達二人が上手くいくことを心から願っているよ」
「はいっ! ありがとうございます!」
時が流れてから、変わったこともある。まず、私と幼馴染のヨハン王子殿下が婚約したのだ。以前から彼は、自分との会話は敬語はなしにして欲しいと言っていた。偶に出てしまうけれど、現在はなんとか普通の言葉で話すように努力している。
「それでは、お父様。私は一旦、部屋に戻りますね」
「うむ、ヨハン様によろしくな。私は少し、出掛ける用事があるのでな」
「はいっ、分かりました」
私はヨハン王子殿下を私室に待たせていたので、そのまま急いで向かうことにした。幼馴染で婚約者といえども、王子殿下を待たせ過ぎるのは失礼になるからね。
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「ヨハン、入るわね」
「ああ、どうぞ。と言っても、私の部屋ではないけどな」
「ふふ、そうですね……て、やっぱり駄目ね。なかなか、敬語を消すことが出来ないわ」
「まあ、ゆっくりでいいよ。私もそんなに急いではいないからね」
「そうなんだ、良かったわ。なんとか、あなたが遠征に向かう前には……直しておくわ」
私室に居たヨハン王子殿下は私を見て優しく微笑んでくれている。バークス公爵家に振り回されるところから始まって……本当に長い物語だったような気がするわ。リグリット様、ガイア様、エメラダ夫人にアミーナ様……関係した人も多かったけれど、まあ、終わり良ければ何とやらってね。
私の成長の糧となる良い経験だったように思えるしね! リグリット様はそう言えば、半年の懲役を終えて、確か領地経営に勤しんでいるはず……成功しているのかは、分からないけれど。バークス家はガイア様が正式に引退されたみたいね。やはり、後釜としては次男のマグリット様だった。
「遠征……私としてはあまり、気乗りしないものではあるが」
「王子殿下がそんなこと言ったら駄目じゃない」
「まあ、冗談だよ。しばらく、君と会えなくなるからね……それが寂しいんだ」
「それはありがたいことだけれど、仕方ないわね」
「ああ」
ヨハン王子殿下は周辺国家の調査という名目で、遠征の予定が入っている。大体、調査期間は4か月くらいなのだそうだ。婚約者とはいえ、その遠征に私が付いて行くなんてことは出来ない。まあ、当然だけれど。
「まあ、まだ先の事だし、こんなことを言うのもあれなんだが。エレナ、聞いてくれるかな?」
「どうしたの、ヨハン?」
「私が遠征から戻ったら……」
「戻ったら?」
真剣なヨハン王子殿下の瞳……私はその瞳に吸い込まれそうになっていた。
「すぐに結婚式を開こうか」
「ヨハン……!」
「駄目かな?」
とても壮大なフラグに見えてしまうけれど……大丈夫、彼に限ってそんなことにはならない。絶対に。
「もちろんです! ヨハン殿下!」
「ありがとう、エレナ!」
私は嬉しさのあまり、彼の胸に飛び込んでしまった。それをしっかりと受け止めてくれるヨハン。私は今、最高に幸せを感じていた。願わくば、この幸せが永遠となるように……ヨハンと一緒に歩んで行きたいものだ。
私たちの物語はまだまだ始まったばかり……。
おしまい!
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