学園祭で侯爵令息にいきなり婚約破棄されました!

ルイス

文字の大きさ
1 / 10

1話

しおりを挟む

「エスメラルダ、私はお前との婚約関係を破棄したいと思っている」


 そんな言葉を婚約者であるヨシュアから言われたのは、私が学園で昼食を取っていた時だった。周囲には当然、たくさんの生徒がいるのに、彼は恥ずかしがる様子もなくそう言ったのだ。


「いきなりどうしたの、ヨシュア? 婚約破棄をしたいという意味?」

「そういうことになるな。悲しいだろうが分かってくれ」

「……」


 ヨシュアとの婚約破棄が悲しいかどうか……それはまあ置いておいて、彼との婚約関係が解消されれば色々と面倒なことになるのは確かだ。私は伯爵令嬢で彼は侯爵令息……その関係性も悪化してしまうかもしれないしね。だから出来れば婚約破棄はしてほしくなかった。


「どうしていきなり婚約破棄なのかしら? 私が何かマズイことをやらかした?」

「そういうことではない。私は真実の愛というものに目覚めたからだ! はははは、私には幼馴染のリッカがいたんだからな! 彼女こそ私に相応しい人間なのだよ!」


 リッカ……そういえばヨシュアの幼馴染にそんな子がいた気がするわ。すごく美人だって言われてたっけ。

「彼女は可憐で清楚……私にピッタリの相手なんだよ」

「……」


 私が可憐で清楚でもないと言われている気がしてならなかった。怒っても良かったんだけれど、グッと堪えて我慢する。

 なるほど……ヨシュアはどうやら外見でリッカの方を選んだということになるわね。その婚約が上手く行くかどうかは知らないけれど、この浮かれっぷりを見る限りでは……。

「婚約破棄は止めてほしいのだけれど……ダメなの?」

「悲しいことだがエスメラルダ。婚約破棄を取り消しにすることはできないよ。これは決定事項だからね」

「決定事項……」


 周囲の生徒は何事かと聞き耳を立てている。こんな状況で婚約破棄を言い渡された私……なんなのだろうか、これは……自然と頬を涙が伝っていた。

「どうしてこんな場所で婚約破棄の話なんてするのよ? 人気のないところに呼んでくれても良かったでしょう?」

「皆の前で宣言することが、君への礼儀だと思ったからだよ。私とエスメラルダの婚約関係は学園内でも有名だったからね」


 何を言っているのか理解できない……ヨシュア、とても許せるものではなかったけれど、私は拳に力を入れながら唇を噛んで我慢していた。本当はその顔を殴りたいくらい腹が立っていたのだけれどね。

 婚約破棄そのものよりも、こんな場所で婚約破棄した事実に対してだ。これで私は可哀想な人間として見られることになるだろう。明日からどんな顔で学園に行けばいいのか分からないわ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

突然婚約破棄された出来損ない令嬢は、騎士になって世の中を見返します!

香取鞠里
恋愛
「この学園の卒業という素晴らしい良き日ではあるが、私はイルアとの婚約を破棄する」  私、公爵令嬢であるイルア、十八歳は、生まれもって婚約者とされていた自国の王子、マーティン、十八歳に婚約破棄を告げられていた。  イルアは公爵令嬢だが、成績も悪ければ、取り立ててできることもない。いわゆる出来損ないだ。  自分の無能さを自覚していた上、マーティンの裏での悪行を知っていたイルアは、婚約破棄されたことを素直に受け入れ、内心大喜びだった。  しかし、ある日王子の計らいで襲われかけたとき、自分のことをバカにするやつらに腹を立て騎士になることを志す。  いつまでも出来損ないだからとバカにされたくなかった。  世間を見返してやろうと騎士への道を進み始めたとき、イルアの指導者として、ひとつ上の男性ルキと出会う。  騎士としてイルアが腕を上げると同時に、二人の仲が深まる中、騎士としてのイルアのことを聞きつけたマーティン王子が再びイルアの元を訪れて──!?

妹のほうが可愛いからって私と婚約破棄したくせに、やっぱり私がいいって……それ、喜ぶと思ってるの? BANします!

百谷シカ
恋愛
「誰だって君じゃなくキャンディーと結婚したいと思うさ!」 「へえ」 「狙撃なんて淑女の嗜みじゃないからね!!」 私はジャレッド伯爵令嬢イーディス・ラブキン。 で、この失礼な男は婚約者リーバー伯爵令息ハドリー・ハイランド。 妹のキャンディーは、3つ下のおとなしい子だ。 「そう。じゃあ、お父様と話して。決めるのはあなたじゃないでしょ」 「ああ。きっと快諾してくれると思うよ!」 そんな私と父は、一緒に狩場へ行く大の仲良し。 父はもちろんハドリーにブチギレ。 「あーのー……やっぱり、イーディスと結婚したいなぁ……って」 「は? それ、喜ぶと思ってるの?」 私は躊躇わなかった。 「婚約破棄で結構よ。私はこの腕に惚れてくれる夫を射止めるから」 でもまさか、王子を、射止めるなんて…… この時は想像もしていなかった。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

公爵さま、私が本物です!

水川サキ
恋愛
将来結婚しよう、と約束したナスカ伯爵家の令嬢フローラとアストリウス公爵家の若き当主セオドア。 しかし、父である伯爵は後妻の娘であるマギーを公爵家に嫁がせたいあまり、フローラと入れ替えさせる。 フローラはマギーとなり、呪術師によって自分の本当の名を口にできなくなる。 マギーとなったフローラは使用人の姿で屋根裏部屋に閉じ込められ、フローラになったマギーは美しいドレス姿で公爵家に嫁ぐ。 フローラは胸中で必死に訴える。 「お願い、気づいて! 公爵さま、私が本物のフローラです!」 ※設定ゆるゆるご都合主義

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています

婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?

みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。 婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。 なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。 (つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?) ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる? ※他サイトにも掲載しています。

呪われた辺境伯と視える?夫人〜嫁いですぐに襲われて離縁を言い渡されました〜

涙乃(るの)
恋愛
「エリー、必ず迎えに来るから!例え君が忘れていたとしても、20歳までには必ず。 だから、君の伴侶のして、側にいる権利を僕に与えてくれないだろうか?」 伯爵令嬢のエリーは学園の同級生、子爵令息アンドリュー(アンディ)と結婚の約束を交わす。 けれども、エリーは父親から卒業後すぐに嫁ぐように言い渡される。 「断ることは死を意味することと思え! 泣こうが喚こうが覆らない! 貴族の責務を全うすることがお前の役目だ!いいな!」 有無を言わせぬ言葉を浴びせられて、泣く泣く受け入れることしかできないエリー 卒業式は出ることも許されなかった。 「恨むなら差し出した父親を恨むだな!」 おまけに旦那様からも酷い扱いを受けて、純潔を奪われてしまうエリー。 何度も離婚を繰り返している旦那様は呪われているらしくて…… 不遇な令嬢エリーが幸せになるまで 性的な行為を匂わす要素があります ゆるい設定世界観です

婚約破棄が、実はドッキリだった? わかりました。それなら、今からそれを本当にしましょう。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるエルフィリナは、自己中心的なルグファドという侯爵令息と婚約していた。 ある日、彼女は彼から婚約破棄を告げられる。突然のことに驚くエルフィリナだったが、その日は急用ができたため帰らざるを得ず、結局まともにそのことについて議論することはできなかった。 婚約破棄されて家に戻ったエルフィリナは、幼馴染の公爵令息ソルガードと出会った。 彼女は、とある事情から婚約破棄されたことを彼に告げることになった。すると、ソルガードはエルフィリナに婚約して欲しいと言ってきた。なんでも、彼は幼少期から彼女に思いを寄せていたらしいのだ。 突然のことに驚くエルフィリナだったが、彼の誠実な人となりはよく知っていたため、快くその婚約を受け入れることにした。 しかし、そんなエルフィリナの元にルグファドがやって来た。 そこで、彼は自分が言った婚約破棄が実はドッキリであると言い出した。そのため、自分とエルフィリナの婚約はまだ続いていると主張したのだ。 当然、エルフィリナもソルガードもそんな彼の言葉を素直に受け止められなかった。 エルフィリナは、ドッキリだった婚約破棄を本当のことにするのだった。

『沈黙の聖女』と呼ばれ蔑まれる私ですが、喋れない代わりに『神々の心の声』が全部聞こえるので、そろそろ神託(と称して暴露)の時間です

白桃
恋愛
言葉を失った聖女候補、アリアンナ。神殿で「役立たず」と虐げられる彼女の唯一の慰めは、神々の(かなり俗っぽい)心の声を聞くことだった。ある日、ライバルにいじめられているところを、真面目な騎士団長ライオスに助けられる。彼もまた、内心ではアリアンナを心配し、惹かれているようで…? 声なき聖女候補と、その心の声(と神々の声)が織りなす、ちょっと不思議で心温まる恋物語が今はじまる。

処理中です...