どうやら異世界転生しても最強魔法剣士になってしまった模様

あっきー

文字の大きさ
2 / 66
第1章

1.困惑の目覚め

しおりを挟む



深い眠りの底からゆっくり浮上していく。


(あ、もう朝?まだ眠っていたいのだけど…)


閉じた瞼に光が当たるのを感じて、ゆっくり目を開いた。


「……」


「?! お嬢様!?あぁお嬢様が目をお覚ましに……!!」


寝ぼけてぼんやりしていた頭が、誰か知らない若い女性の甲高い声によって急激に覚醒した。


知らない天井。知らない部屋。知らない人の顔。


(…なんだ?これは…)


「すぐに医師様を…!!いえ、旦那様と奥様にお知らせを…!!」


女性は叫びながら、慌てて部屋を飛び出して行った。


(お嬢様?医師?旦那様とか奥様ってどういう事?そもそも、ここどこ?あれ?なんで私、体が動かないの?私は…確か…歪みの暴走を止めて…それから…)


キサギが混乱する思考をゆっくり整理しようとしたところ、廊下からドタバタと慌ただしい足音が聞こえて来た。


「レイスリーネ!!」


勢いよく扉を押しあけて入って来た美丈夫と美女はベッドまで駆け寄ると、薄く目を開けたままベッドに横たわる少女の手を握りしめ、頬に優しく手をあてた。


「あぁ!レイスリーネ!我が愛しい娘!目を覚ましてくれたんだね!良かった…本当に良かった…」


「レーネちゃん!!辛い所はない?苦しいところは??」


美丈夫と美女は涙ながらにそう叫んでいる。


(え。レイスリーネって誰?!ていうか、この美男美女、誰?!)


キサギの頭はますます混乱している。


娘だの母だのというからには両親だろうと思われるその2人の後ろから、初老の男性が現れ2人を後ろに下がらせると、少女の手を優しくとった。


「ハロルド伯、奥方、一旦お下がり下され。さてレイスリーネ嬢、状態を診ますね?私の声は聞こえていますかな?」


どうやら部屋を出て誰かを呼びに走った女性が言っていた医師だろう彼にそう尋ねられたので頷こうとする。


…が、出来なかった。


身体が動かないのである。


手も、足も、首も、顔も、何も動かせない。


そして声も出せない。


動かせるのは今のところ、目だけ。

 
(…… なんか、前にもこんな事があったような気が……)


キサギは以前任務で、全力では無いものの魔力をかなり消耗する事があり、しばらく寝たきりになって周りにしこたま怒られた過去の出来事を思い出し、心の中で遠い目をした。


(それにしても、生命力を魔力に上乗せしたんだからさすがに死んだと思ったんだけど……私、なんで生きてるんだろ?)


などと呑気な事を考えつつ、目だけで今置かれている状況を確認していく。


(私を見てレイスリーネって呼んでたけど、どうなってるの?彼らは…ハロルド伯と奥方?聞いた事ないな……私の事、娘って言ってたわね……いや私、親いないんだけど?!ほんと誰かこの状況説明してくれ!!)


当の本人の頭の中は混乱の真っ只中。


対して彼女以外の大人たちは、医師からの質問になんの反応も返さない少女に緊張を走らせていた。


「……っ医師殿!」


ハロルド伯と呼ばれた美丈夫が顔を歪め、医師に問う。


医師は片手で彼を制し、もう片方の手でキサギの手を軽く握り、何やらブツブツ呟いている。


手から温かい何かが流れてくる。


(…詠唱?魔力を流してるのね。温かくて気持ちいい…)


優しく流れる魔力に微睡んでいると、しばらくしてから手を離した医師はハロルド伯の方へ真剣な顔を向けた。


「……命の危機的な状態は越えたようですが、お嬢様の魂がかなり不安定になっています」


その宣告にハロルド伯と奥方は顔を青ざめた。


「ど、どういう事だろうか?」


震える声を抑える事なく、ハロルド伯は医師に問うた。


身体を動かせないキサギは医師の言葉に耳を傾ける。


「まだ目覚められたばかりのところ、こんな事を申し上げるのは心苦しいですが…」


医師は曖昧だった言葉をしっかりした口調で紡いだ。


「精神と魔力がバラバラになってしまっていることで、体のあらゆる器官が機能不全を起こしているのです。その結果、目は覚まされたが自我がない…今はかろうじて魂が体に引っかかっている、といったところでしょうか…」


「治るんだろうな!!」


「時間は掛かるでしょうが」


「時間……??金はかかってもかまわん!どれくらいで治る!?」


「わかりません。自我を取り戻すにはゆっくり療養なさり、少しずつ魂が体へと還っていくのを待つしか治療法はないのです。数日なのか、数ヶ月なのか、それ以上なのか……はたまたこのままか……。下手に魔術的な治療を行えば衰弱したお嬢様の体力が保たず、体と魂が分離し、廃人になってしまうでしょう。それくらい難しい状態と言えます……くれぐれもお気を確かにお持ち下さい」


と、そう診断を下した。


ハロルド伯と奥方は消沈した面持ちでその言葉を受け取っていた。


「それでは…王家との婚約は…」


沈痛な面持ちでハロルド伯は、薄く目を開け何の反応も示さない娘を一瞥し呟いた。


(…魂が体に還る……か。なるほどね。それにしても、このレイスリーネと呼ばれる人に何があったのかしら)


キサギは先程の医師の言葉を気にかける事もなく、ただこの状況と重苦しい部屋の空気に耐えきれず心の中で溜息をついた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...