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第8話 巨大女神爆誕
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ヒュドラの性能はあまりに異常であった。
人間街は惨状だった。ヒュドラが噴き出している霧状の毒。毒を吸い込んでしまったが最後、内臓が破裂するという物理的な威力を持った恐ろしい毒だ。次から次へと。人々は口から血液を吐き、倒れていった。
そんな強敵に対して、ギルドは多くのパーティを向かわせていた。だが、そのほとんどは全滅、もしくは撤退だった。相手はそれだけ強大なものであり、そう簡単に勝てるはずがなかった。
そんな中、善戦とは言えばないが、立ち向かい続ける者たちがいた。レイアとエデンだ。
彼女たちは二人一組で高い建造物から首を撃ちぬいていた。
ヒュドラは撃ち抜くたびにこちらに毒を飛ばすも建造物の陰に隠れながら何とか助かっている。また、万が一その毒に触れかけそうになった時にはレイアの盾が防いでいた。
キメラの牙で作られたそれは異常なまでの強度を誇っており、防ぐことができている。ただ、それもこちらにターゲットを絞った場合、あらゆる方向から攻撃されたら防ぐことは難しくなってくるだろう。そう思っていたエデンだが、銃声がなくなっていることに気づいた。
「人間の軍はどうなっているのさ?」
「彼らは数分前に撤退したそうです」
「数分前って。まだ、あのヒュドラ出てきてから一時間もたってないでしょ!」
エデンは奥歯をかみしめた。
(これが、禁止級なのか)
レアの民族が多く所属しているギルドと人間のみが所属している軍では武器に大きく差がある。軍は銃や破壊力の高い爆弾など最新兵器までそろえているが、レアの民族は反逆の可能性も考え、剣や弓などの原始的な武器のみである。一応、ダンジョンの能力も得られているが、それは軍も同じ。軍はギルドより戦力が明らかに高いはずだった。
人間街の治安は地域ごとの軍が守っていたが、ヒュドラの蹂躙を見る限り、もうあきらめたというのか。
「軍がまるで勝てないなんて……でも。諦めない。まだ、終わってない!」
エデンとレイアは次々に矢を撃ち続けていく。だが、再生を繰り返すヒュドラに終わりは見えなかった。むしろ、これが禁止級なのか、と不安ばかりが募っていく。
そんな中、ついにヒュドラは彼女たちだけに白い目を向けていた。
他に立ち向かうものがいないのが原因。他のギルドメンバーも全滅したらしい。
それでも彼女たちは気にせず、撃ち続ける。盾で毒による攻撃を防いでいくのだが、そこで気づく。
すべての首が彼女たちに向いていることに。
すべての首の口元が膨らむ。
「「あ……」」
二人の声が揃う。
声が出ない。それでもなお盾を構え、弓を向ける。
エデンは叫んだ。
「クソがアアアああああああああ!!!」
ヒュドラの毒が一気に放たれる。
放った弓は毒に巻き込まれ、破裂。首にすら届かない。
霧に包まれ、負けてしまう最悪のイメージが沸いた。
その時だった。
彼女たちの目の前に壁ができていた。
運よく建物の崩壊により助かったのか。一瞬そう思ったが、現実は違った。
その壁は動いたのだ。否。そもそもそれは、壁などではない。足だ。ヒュドラに匹敵するほどの大きさの。 そこに立っていたのは、巨大な褐色肌の美女であった。
褐色肌の美女は毒を次々に受け続け、内臓が破裂していく。だが、それに対し、その巨大な美女は動じることはなかった。
破裂した個所から次々に再生していく。
フレイは意識が飛びそうになっていた。この再生の感覚に慣れるまでには時間がかかる。それでも、すべての人を守るために立つしかなかった。
「とりあえず、間に合ってよかった。それにしても、この二人は……」
エデンとレイアを見た。
足元にいる小さな彼女たちはおびえているようにも見えたが、エデンはレイアを庇っており、挑戦的にも見える。
(こんな勇敢な人のために立ち向かいたい)
褐色巨大少女は前を向きなおす。
ヒュドラはこちらを見るなり、次から次へと毒を放ってくる。毒をまき散らかさないためにもすべてを自分の体で受けていった。ヒュドラの毒は体内に作用するらしく、体内から爆発していった。だが、フレイは気にせず進んでいく。
意識は何度も飛びそうになったが、テミスの声が脳内に響くのもあり、何とか耐え抜いた。
ヒュドラの前に立つと、首を引きちぎっていく。だが、引きちぎったところで次々に再生していく。
このヒュドラは次に何をしてくる。
飛びそうな頭の中で予測する。だが、このヒュドラがどのように現れたのかも分からない以上、攻略することはできない。
「どうすればいい?どうすれば……」
フレイは次々に首が再生するのを再生したところからちぎり、損傷を軽減させようとする。だが、ヒュドラはちぎっていくたびに次々に再生していく。その再生スピードは上がっており、吐かれた毒により、腕まで飛んでしまう。
そんな中、脳内に響き渡ったのは継続して続く、規則的な高い音声であった。音声は危機感をあおるようでもある。
「な、なんだよこれ」
「ご、ごめん。なんか全身が熱い……」
体を見ると、蒸気が上がっている。そしてその蒸気の裏から自分の体が見えたが、だんだん自分の存在が薄らいでいることに気づいた。
「な、なにこれ。まさか……時間制限?」
「そうかもしれないです。それかダメージを食らいすぎたのかも」
「でも、どうすればいい? いくら首を飛ばしても再生するんだけど」
「私には……無理そう……です」
テミスの力ない声がフレイの脳内に響く。彼の体は既にボロボロであり、まだ慣れないこの戦闘に気が飛びそうになっていたが、目の前の敵を分析する。
このヒュドラという怪物の特徴は、幾つもの首とそれが出す毒霧、そして異常な再生力だ。
そのどれもが人にとって致命的ともいえる能力であり、人間軍が撤退したのも勝てる見込みがないと判断したからだろう。
その判断は正しいと言える。
しかし、フレイは少し気になることがあった。
(生物であれば頭を落とされてしまえば少なからず影響があるはずだ、たとえ首が複数あっても。それがないということはもしかして、この怪物は)
フレイは首からの攻撃を受け、肉体が崩壊していくも、再生に再生を繰り返す。ただ、それも活動限界に陥り、熱を帯び、だんだんと再生速度が遅くなっていた。しかし彼はある種の確信をもって、首を次々に引き抜く。そこからフレイは左腕を掲げる。すると、そこに現れたのは分厚く巨大な本であった。
以前キメラにそうしていたように、本をヒュドラの身体に打ち付ける。
次第にヒュドラの肉体はめくれあがり、緑色に輝く球体が現れた。
「やっぱりな」
ヒュドラの首に脳はない。だから落とされても影響がなかった。今明るみに出たこれこそが本体だ。
新たな首を生やして本体を隠そうとしているヒュドラを、フレイは逃がさない。
「とどめだ」
ボロボロになりながらフレイは思い切り、その持っていた本で球体を首ごと叩き潰した。
瞬間、球体から緑色の液体が噴き出し、ヒュドラの体は動かなくなった。
そして、フレイの体は蒸気と共に縮んでいた。
再び気を失うように倒れる。だが、その表情には笑みが残っていた。
目の前で異常なまでの活躍を見せつけられたレイアはつぶやいた。
「女神様みたいですね……」
「だ、だいぶ乱暴だったけど。まぁ、救ってくれた以上、そうとしても言えないかもね。女神様かぁ……」
エデンは小さく笑った。
* *
次の日、フレイは再びギルドの戸を開いた。
そこには相変わらず、ベンチに腰を掛けているエデンとレイアがいた。
フレイは彼女たちを見るなり、声をかけた。
「まだ、募集してます?」
「あ、断りに来ました?」
「いいえ。やります。僕。あなたのパーティに入らせてください」
フレイの声に二人は目を丸くしていた。
「ほ、ほんとに?」
「えぇ、こう、なんと言うか正義感が出てきまして」
フレイの答えにエデンは怪しげに「ふーん」と答えた。
そこで彼女の背中にいたレイアがその場を紛らわせようとしたのか明るく言った。
「でも、これで4人ですね!」
「え。4人……?」
そこでギルドの受付でギルドマスターと話していた男が此方にやってきた。その男はフレイもよく見ていた顔であった。
「どうも、私はアスラ。よろしく頼む」
その男はフレイをダンジョンの奥で追放した彼その人であった。
【お知らせ】
お世話になっております。やまだしんじです。
読んでくださりありがとうございます。
ぜひ、よろしければお気に入りや感想を書いていただけると大変ありがたいです。モチベーション向上につながります。よろしくお願いいたします。
人間街は惨状だった。ヒュドラが噴き出している霧状の毒。毒を吸い込んでしまったが最後、内臓が破裂するという物理的な威力を持った恐ろしい毒だ。次から次へと。人々は口から血液を吐き、倒れていった。
そんな強敵に対して、ギルドは多くのパーティを向かわせていた。だが、そのほとんどは全滅、もしくは撤退だった。相手はそれだけ強大なものであり、そう簡単に勝てるはずがなかった。
そんな中、善戦とは言えばないが、立ち向かい続ける者たちがいた。レイアとエデンだ。
彼女たちは二人一組で高い建造物から首を撃ちぬいていた。
ヒュドラは撃ち抜くたびにこちらに毒を飛ばすも建造物の陰に隠れながら何とか助かっている。また、万が一その毒に触れかけそうになった時にはレイアの盾が防いでいた。
キメラの牙で作られたそれは異常なまでの強度を誇っており、防ぐことができている。ただ、それもこちらにターゲットを絞った場合、あらゆる方向から攻撃されたら防ぐことは難しくなってくるだろう。そう思っていたエデンだが、銃声がなくなっていることに気づいた。
「人間の軍はどうなっているのさ?」
「彼らは数分前に撤退したそうです」
「数分前って。まだ、あのヒュドラ出てきてから一時間もたってないでしょ!」
エデンは奥歯をかみしめた。
(これが、禁止級なのか)
レアの民族が多く所属しているギルドと人間のみが所属している軍では武器に大きく差がある。軍は銃や破壊力の高い爆弾など最新兵器までそろえているが、レアの民族は反逆の可能性も考え、剣や弓などの原始的な武器のみである。一応、ダンジョンの能力も得られているが、それは軍も同じ。軍はギルドより戦力が明らかに高いはずだった。
人間街の治安は地域ごとの軍が守っていたが、ヒュドラの蹂躙を見る限り、もうあきらめたというのか。
「軍がまるで勝てないなんて……でも。諦めない。まだ、終わってない!」
エデンとレイアは次々に矢を撃ち続けていく。だが、再生を繰り返すヒュドラに終わりは見えなかった。むしろ、これが禁止級なのか、と不安ばかりが募っていく。
そんな中、ついにヒュドラは彼女たちだけに白い目を向けていた。
他に立ち向かうものがいないのが原因。他のギルドメンバーも全滅したらしい。
それでも彼女たちは気にせず、撃ち続ける。盾で毒による攻撃を防いでいくのだが、そこで気づく。
すべての首が彼女たちに向いていることに。
すべての首の口元が膨らむ。
「「あ……」」
二人の声が揃う。
声が出ない。それでもなお盾を構え、弓を向ける。
エデンは叫んだ。
「クソがアアアああああああああ!!!」
ヒュドラの毒が一気に放たれる。
放った弓は毒に巻き込まれ、破裂。首にすら届かない。
霧に包まれ、負けてしまう最悪のイメージが沸いた。
その時だった。
彼女たちの目の前に壁ができていた。
運よく建物の崩壊により助かったのか。一瞬そう思ったが、現実は違った。
その壁は動いたのだ。否。そもそもそれは、壁などではない。足だ。ヒュドラに匹敵するほどの大きさの。 そこに立っていたのは、巨大な褐色肌の美女であった。
褐色肌の美女は毒を次々に受け続け、内臓が破裂していく。だが、それに対し、その巨大な美女は動じることはなかった。
破裂した個所から次々に再生していく。
フレイは意識が飛びそうになっていた。この再生の感覚に慣れるまでには時間がかかる。それでも、すべての人を守るために立つしかなかった。
「とりあえず、間に合ってよかった。それにしても、この二人は……」
エデンとレイアを見た。
足元にいる小さな彼女たちはおびえているようにも見えたが、エデンはレイアを庇っており、挑戦的にも見える。
(こんな勇敢な人のために立ち向かいたい)
褐色巨大少女は前を向きなおす。
ヒュドラはこちらを見るなり、次から次へと毒を放ってくる。毒をまき散らかさないためにもすべてを自分の体で受けていった。ヒュドラの毒は体内に作用するらしく、体内から爆発していった。だが、フレイは気にせず進んでいく。
意識は何度も飛びそうになったが、テミスの声が脳内に響くのもあり、何とか耐え抜いた。
ヒュドラの前に立つと、首を引きちぎっていく。だが、引きちぎったところで次々に再生していく。
このヒュドラは次に何をしてくる。
飛びそうな頭の中で予測する。だが、このヒュドラがどのように現れたのかも分からない以上、攻略することはできない。
「どうすればいい?どうすれば……」
フレイは次々に首が再生するのを再生したところからちぎり、損傷を軽減させようとする。だが、ヒュドラはちぎっていくたびに次々に再生していく。その再生スピードは上がっており、吐かれた毒により、腕まで飛んでしまう。
そんな中、脳内に響き渡ったのは継続して続く、規則的な高い音声であった。音声は危機感をあおるようでもある。
「な、なんだよこれ」
「ご、ごめん。なんか全身が熱い……」
体を見ると、蒸気が上がっている。そしてその蒸気の裏から自分の体が見えたが、だんだん自分の存在が薄らいでいることに気づいた。
「な、なにこれ。まさか……時間制限?」
「そうかもしれないです。それかダメージを食らいすぎたのかも」
「でも、どうすればいい? いくら首を飛ばしても再生するんだけど」
「私には……無理そう……です」
テミスの力ない声がフレイの脳内に響く。彼の体は既にボロボロであり、まだ慣れないこの戦闘に気が飛びそうになっていたが、目の前の敵を分析する。
このヒュドラという怪物の特徴は、幾つもの首とそれが出す毒霧、そして異常な再生力だ。
そのどれもが人にとって致命的ともいえる能力であり、人間軍が撤退したのも勝てる見込みがないと判断したからだろう。
その判断は正しいと言える。
しかし、フレイは少し気になることがあった。
(生物であれば頭を落とされてしまえば少なからず影響があるはずだ、たとえ首が複数あっても。それがないということはもしかして、この怪物は)
フレイは首からの攻撃を受け、肉体が崩壊していくも、再生に再生を繰り返す。ただ、それも活動限界に陥り、熱を帯び、だんだんと再生速度が遅くなっていた。しかし彼はある種の確信をもって、首を次々に引き抜く。そこからフレイは左腕を掲げる。すると、そこに現れたのは分厚く巨大な本であった。
以前キメラにそうしていたように、本をヒュドラの身体に打ち付ける。
次第にヒュドラの肉体はめくれあがり、緑色に輝く球体が現れた。
「やっぱりな」
ヒュドラの首に脳はない。だから落とされても影響がなかった。今明るみに出たこれこそが本体だ。
新たな首を生やして本体を隠そうとしているヒュドラを、フレイは逃がさない。
「とどめだ」
ボロボロになりながらフレイは思い切り、その持っていた本で球体を首ごと叩き潰した。
瞬間、球体から緑色の液体が噴き出し、ヒュドラの体は動かなくなった。
そして、フレイの体は蒸気と共に縮んでいた。
再び気を失うように倒れる。だが、その表情には笑みが残っていた。
目の前で異常なまでの活躍を見せつけられたレイアはつぶやいた。
「女神様みたいですね……」
「だ、だいぶ乱暴だったけど。まぁ、救ってくれた以上、そうとしても言えないかもね。女神様かぁ……」
エデンは小さく笑った。
* *
次の日、フレイは再びギルドの戸を開いた。
そこには相変わらず、ベンチに腰を掛けているエデンとレイアがいた。
フレイは彼女たちを見るなり、声をかけた。
「まだ、募集してます?」
「あ、断りに来ました?」
「いいえ。やります。僕。あなたのパーティに入らせてください」
フレイの声に二人は目を丸くしていた。
「ほ、ほんとに?」
「えぇ、こう、なんと言うか正義感が出てきまして」
フレイの答えにエデンは怪しげに「ふーん」と答えた。
そこで彼女の背中にいたレイアがその場を紛らわせようとしたのか明るく言った。
「でも、これで4人ですね!」
「え。4人……?」
そこでギルドの受付でギルドマスターと話していた男が此方にやってきた。その男はフレイもよく見ていた顔であった。
「どうも、私はアスラ。よろしく頼む」
その男はフレイをダンジョンの奥で追放した彼その人であった。
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