僕は女神に溶けていく。~ダンジョンの最奥で追放された予言士、身長100メートルの巨大女神に変身する~

やまだしんじ

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第25話 セリナの悩み

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 ダンジョンの遺跡は既に崩れてしまっている。崩れた跡地からいくつかの文字盤も発見されており、セリナをはじめとする古代文明の研究者が調査をしていた。オケアノスとの戦いから二週間。あれから怪物が出現したという情報はない。

 セリナはダンジョンの跡地にて。文字盤を回収、分析をしていた。古代文明の鉄製の道具を拾いながら、周囲を彼女は見渡す。街も復興が進められているようにセリナの目には映っていたが、同時に彼女が思うこともあった。

(結局、デロやリラのティタンを倒すことができていない)

 そんな彼女の肩を叩くものがいた。セリナが振り返るとそこにいたのは、ソノであった。いつも通りの軍服に身を包んでいる。この迷彩柄の軍服も古代文明をもとに作られたものだった。

 彼はいつものにやけ顔のままこちらに話しかけてくる。

「精が出るなぁ、どうだ? 仕事の調子は?」

「問題ありません。何の用ですか?」

「どうなんだろうなぁってな。ギルドのために働いているとかなんとか聞いてな」

「それが何か?」

「結局のところ、君は役に立っているのかと思ってね。結局禁止級を倒しているのは、あのティタンと言われている化け物だろう? ギルドに賭けている君が馬鹿らしく見えてね」

 面と向かって言われ、セリナは腹が立つが、体は熱くなるばかりで結局言い返した言葉「そんなこと、ないです」という弱弱しい一言であった。



『結局のところ、君は役に立っているのかと思ってね』
 ソノの一言が仕事を終えたセリナの脳内に未だ響き渡っていた。あれからこのような脳内の状態が続いていた。

(前の軍の地下施設を見たからこんな勧誘されるんだろうな)

 そのような思惑は彼女を冷静にさせていたが、突き刺さる。結局、自分の発見していることはギルドの役に立っているのか、そして、フレイの役に立っているのか。ティタンと契約したフレイがいつも頼っているのは自身ではなく、ティタンであるということ。

「ま、まぁ、でもこの情報はきっと重要なはず」

 彼女が人間街から民族街へ抜けようとしていた時である。視界の端に見覚えのある顔が映った。それは、この前に現れたデロとリラであった。彼らは何かと対峙しているようで、それと向き合ったまま、後ろへと下がっていく。

「誰かと戦っているの?」

 彼女は建造物の影に身をひそめながら、近づいていく。その視線の先にあったのは、激しく息をついているデロとリラ。そして、その先にいたのはピンクのインナーの入ったパーマのかかった髪を持っている少女。その姿を見て、セリナは驚愕した。

「この人は……え?」

 少女はデロとリラの攻撃に全く動じない。多分、人間軍から奪い取ったものであろう軍の銃をリラに向けられ、迷うことなく発砲されるが、まるで動じない。彼女にあたった銃弾はすり抜けるようにして、壁に穴をあけていく。彼女は撃たれるがまま前へとゆっくり進んでいく。

 そのまま少女は一気に駆けだすと、彼らに殴りかかっていった。その彼女に向けて、デロは空に手を掲げる。そこで彼が握っていたのは彼の180㎝以上ある身長よりさらに巨大な大鎌であった。

 この大鎌がその少女の拳に突き刺さるも、ありえない音がした。金属音と発生する火花。
 
「な、何が起こっているの……?」

 さらに拳から重心をずらすと、デロは大鎌を下から突き上げるように繰り出す。瞬間、空中の少女は二分する。切り裂かれる寸前に体を切り離してしまった。さらに着地と同時に彼女の体は元の姿へと戻る。

「ピクミー……相変わらずいい加減な奴だ」

 デロの言葉に少女はにやりと笑い、呟いた。

「あなたたち全員を呑み込む。それが私」

「本当に気味が悪い」

 リラの言葉にピクミーは目を細めると、手を宙に掲げる。その掌に謎の空間が出来上がる。その空間は深い闇のように見えたが、その奥には無数の何かが光り輝いている。その美しさにセリナは息をのんだが、そこから一気に放たれたのは複数の岩であった。

 その攻撃にデロは吠えた。

「貴様ァ! 奪った能力を……」

 岩の攻撃を次々に撃ち落とすも、それも追い付かなくなっていく。彼の体には次々に穴があけられてゆく。よく見ると、彼は後ろにいるリラを守っているようにも見えた。

(助けるべきか。でも、彼らは……)

 セリナが迷っていたが、そこでデロの裏からリラは人間にはあり得ないほどの跳躍を見せた。

 その距離は20m以上。

岩の攻撃の上を飛び越え、そのまま手から突っ込んでいく。その手がピクミーに触れる。瞬間、ピクミーは硬直したかと思うと、その場で発狂しながら、じたばたとし始めた。掌に掲げられた闇からは次々に岩が放たれるも、その方角はデタラメである。

「逃げますよ」

 リラの言葉にデロは大鎌で攻撃をはじきながら不機嫌そうな表情を見せるが、言う通りに、ふらつきながらその場を離れていった。
 
「……これはフレイ君に伝えなきゃだめだ。絶対に」

 彼女がその場から離れようとしたとき、目の前にいた誰かとぶつかる。
 そこにいたのはリラであった。

「あ……」

 声が出ない。
 もう、彼女は人ではない。装備もせず、あのような能力を発揮するリラ。
 セリナは恐怖のあまり膝をつき、そのまま後ずさりをする。

「君は……運がいいな」

 リラはそうつぶやくと、近づいていく。そのまま彼女は震えるセリナの頭に触れる。
 優しくなでるようであったが、彼女は一瞬、硬直すると、そのまま倒れていった。

 薄れゆくセリナの意識、彼女の耳にデロとリラの言葉が飛び込んでくる。

「いいのか。生かしておいて」

「この人間は良いと思います。安心してください。記憶は消しておきました」

 彼女の視界が暗闇に落ちていく。
 そして、再び目が覚めた時には、見覚えのある天井であった。

 ベッドの隣にはフレイがいた。彼はセリナが目を開くとともに、大声で呼びかけてくる。

「だ、大丈夫? 人間街で倒れていたんだよ!」

「え。そんなことが……あ、うん。大丈夫だよ。あ、それよりもさ。これ」

 セリナはポケットから文字盤を取り出す。それはとても小さいものであったが、彼女は読み上げる。

「ティタンにはそれぞれ能力が存在する……だってさ! ということはフレイ君のティタンのテミス様にも能力があるんじゃないかって」

「そ、それは置いておいて、倒れた時のこと何かないの?」

「え? あ……うーん。何も覚えてないかも……」

 フレイがため息をついたのを見て、申し訳なくなり、セリナはうつむいたが、彼は彼女の顔を覗き込む。

「まぁ、教えてよ。その能力って、どんなものなの?」

 彼が微笑むのを見て、セリナの顔がほころんでいく。

(私はやっぱり、役に立っている、はずだ)

「例えばね……」
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