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第1章 NAMELESS編-序編-

[第3話:Lily II]

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渋谷を後にした一行は、第2部隊のホームに帰還した。

「さて、帰って早速で悪いんだが…今から補講だ。」

蒼松はそう言うと、リビングの机と絨毯を退かし始める。
するとそこには、何もないタイル張りの床が9畳程現れた。

蒼松が壁についたスイッチを押すと、タイルのうち数枚ほどが動いて、その空間に地下へと続く階段が現れた。

「さあ、うちの自慢の訓練室へ案内するよ。ついておいで。」

そう言うと、一行は蒼松に続いて地下へ降りた。

階段を降りた先に、二重になった扉が現れた。その扉の先には、ぽっかりと何もない広い部屋がバレーボールコート2面分程現れた。

「ここは"リリィ"の特別訓練室。もちろんここは防音だし、特殊耐震装置で地上は揺れも感じない。
どんなに強い"箱装"の力でも、ここの壁は破れない特殊な素材で出来ているのさ。」

そう言うと、蒼松は自身の箱装"白愉兎ラッキーラビッツ"を解放した。

「俺からは、まず"箱装"についての基本知識を教えさせてもらうよ。」

そう言うと、蒼松は"白愉兎"に水のようなオーラを発生させた。

「まあ、みんなも知っていると思うけど"箱装"は"正の自然エネルギー"を基に作られている。
それぞれ、氷、雷、焔、植、水、天の6属性から生成されてると言われている。そして俺たちは、そのそれぞれの属性のエネルギーを基にした武器を取り扱っている。
例えば、俺なら水属性。俺の"白愉兎"は銃剣なんだけど、銃の弾は水のエネルギーでできている。なんでか分からないけど、その"正の自然エネルギー"はNAMELESSに効くらしい。
だから、この自然エネルギーを極限まで解放できれば、楽にNAMELESSを倒せるって訳さ。」

そう言うと蒼松は、白愉兎の大剣から大量の水エネルギーを解放した。

「今から、俺が思いっきり攻撃する。紘紀、避けずにこれを全部受け止めろ。」

「さ、離れましょ。」

咲波が残りのメンバーを離すと、蒼松は大剣を樫間目掛けて振りかぶった。

「喰らいな。"宴楽斬(フルパーティー)"!」

そう言うと、大量の水のかまいたちが樫間を襲う。

「なっ…ちょっ…」

樫間は慌てて"青龍銃(ドラゴガン)"を解放したが、正面から蒼松の攻撃を喰らった。
もちろん、立っていられるはずもなくそのまま壁に吹き飛ばされた。

「かっしー…っ!」

迅雷寺が叫ぶ。
すると煙が晴れ、そこには樫間が跪いていた。

「さぁ、紘紀の箱装を最大限まで解放するんだ。いけるだろ?」

蒼松がそう言うと、樫間はゆっくりと立ち上がった。
樫間の意思とは別に、樫間の体を何やら氷のようなものが覆い始める。

「うっ…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

すると、樫間の背中から大きな氷の翼が現れた。
両足も氷の龍の足の様に覆われ、両手の銃は龍の頭の形で覆われた。

「さすが、早いな。これが紘紀の箱装の第二形態だ。」

蒼松が感心して言う。

「"双頭氷龍銃…(ツインヴルムドラゴガン)"。」

氷の龍を纏った樫間が囁くと、樫間は蒼松に銃口を向けた。

「ま、最初は制御できないよなぁ~。」

蒼松はそう言うと、樫間に向かって突っ込んだ。
樫間は、突っ込んでくる蒼松に無数の氷の弾丸を撃ち込む。
蒼松はそれを冷静に回避し、樫間の首を右手で押さえた。

「…うっ…」

蒼松に首を押さえられ、樫間は苦しそうに崩れ落ちた。
樫間の身体を纏った氷龍の鎧は、いつの間にか消えていた。

「樫間はまだまだエネルギーのコントロールが甘いみたいだな。よし、この1週間で俺が鍛えてやる。」

蒼松はニヤリと笑みを浮かべ、続けて他のメンバーに向けても言う。

「椎菜と渉も、愛花と洸にエネルギーのコントロールの仕方と、"箱装"の限界突破を教わって強くなれ!」



そこからは、毎日特訓の日々が続いた。

「桂流二の舞、雷雅獅子(らいがしし)ッ!」

「美しく、儚く、燃え散れ…炎美ッ(えんび)!」

「…五月雨氷礫(アイススコール)っ!」


日に日に、威力とキレが上達している樫間達第1部隊一行。
そして、蒼松達第2部隊との生活も7日目に差し掛かろうとしていた。

訓練室に集まった一行に、蒼松が言う。

「1週間の訓練お疲れ様。3人とも、前よりは少し強くなったかな?」

3人は不安げな顔をしたが、蒼松はそれを確認して、笑みを浮かべ続けた。

「まあ、今はまだ不安かもしれないけど、そのうち分かるさ。」

蒼松がそう言うと、突然訓練室にけたましいサイレン音が鳴った。

『表参道上空、NAMELESSと思われる生命体反応あり!数は3体!リリィ、リコリス隊急行願います!』

「さて、時は来た。これはいい実戦経験になりそうだ。」



一行が現場に辿り着くと、そこには3体のNAMELESSが縦横無尽に飛び回っていた。

「さあ、かましてこい。」

蒼松は、NAMELESSに向かう戦士たちを、期待の表情で見つめた。

「迅雷寺さん!白峰さん!フルパワーで突っ込む。1分で片付けるぞ。」

「「了解!!」」

樫間は2人に告げると、真っ先にNAMELESSに向かった。

「"双頭氷龍銃".…!」

樫間はNAMELESSに向かいながら空中で氷龍の鎧を纏うと、NAMELESSに銃口を向けた。

「"五月雨氷礫"!!」

無数の氷の弾丸をNAMELESSに撃ち込む。
すると、NAMELESSはそれを避けながら樫間に突っ込んできた。

「…避けただと?」

樫間は不意を突かれ体制を崩すと、NAMELESSは樫間に向けて無数の黒い弾丸のようなものを撃ち込んだ。

「…なっ…NAMELESSが攻撃!?」

樫間は驚きを隠せず、その弾丸を食らった。

「…ぐはっ…。」

氷の鎧が、攻撃を受け少しずつ溶け始める。

「…舐めんじゃねぇよ。」

体制を立て直し、樫間が呟く。
樫間は再びNAMELESSに向けて銃を向けた。

「…凍速飛雨(ドライフレイン)!」

樫間の氷の鎧から無数の氷の礫が現れ、それら全てがNAMELESS目掛けて飛んで行った。
それと同時に、樫間は2丁の銃口から氷の細い柱のようなものをNAMELESSに撃ち込んだ。
無数の氷の礫を避けきれず、穴が開くNAMELESSの中心部分目掛けて、氷の柱がその体を貫いた。

見事、氷の柱はNAMELESSのコア部分を貫き、NAMELESSは苦しみながら消滅した。

「…リコリス舐めんじゃねぇよ。」

樫間は消え行くNAMELESSにそっと呟いた。



一方、迅雷寺サイド。

迅雷寺が向かった先のNAMELESSは、右側の腕部分がやけに細長く鋭くなっている。

「なるほど。あんたは剣士タイプってことね。かかってきなよ!」

そう言うと、迅雷寺は刀を抜きNAMELESS目掛けて突っ込んだ。

「"桂流二の舞、雷雅獅子"ッ!」

雷を纏った刀を、縦に大きく振りかぶる。
雷の様に鋭く振り下ろされた刀を、NAMELESSはその右腕で防いだ。

「なっ…"雷雅獅子"が効かない!?」

1度攻撃を弾いた迅雷寺は、地面に戻り体勢を整える。
するとNAMELESSは横に高速回転し、迅雷寺目掛けて飛んできた。

「…こうなれば…"桂流三の舞、飛雷獅子(ひらいしし)"っ!」

迅雷寺は雷を纏った刀を振りかぶり、NAMELESS目掛けて無数の雷のかまいたちを放った。
しかし、NAMELESSの回転は止まる事なく迅雷寺に向かって進んでくる。

迅雷寺は、NAMELESSにぶつかる寸前で上空へ飛んだ。
回転するNAMELESSは、その勢いのまま地面にぶつかった。
動きが止まるNAMELESSに、迅雷寺は再び刀を振った。

「…チャンス。"雷鳴獅子"ッ!」

地面で止まっているNAMELESSに、一筋の雷が落ちた。
それは、見事にNAMELESSの中心部分を貫き、NAMELESSは唸りながら消滅した。

「ふぅ…危なかった…って…ああっ!」

迅雷寺は安心したのも束の間、浮遊力を失い地面へ落ちていく。
落下する迅雷寺。それを間一髪のところで、戦闘を終えた樫間の両腕が救出した。

「…大丈夫ですか?」

樫間に抱えられ、少し赤面する迅雷寺は答えた。

「…だ、大丈夫。かっしーありがとう。」


一方、白峰サイド。

白峰の迎え討つNAMELESSは、4つの菱形の腕に囲まれた、いわば防御タイプ。

「防御…ねぇ。」

そう呟くと、白峰は徐に飛び出した。

「美しく、儚く、燃え散れ。」

白峰は、2つの拳に溢れんばかりの炎を纏った。

「"炎美"ッ!」

炎の拳は、無数に渡ってNAMELESSに繰り出された。
しかし、NAMELESSはその全てを菱形の腕で防いだ。

「やるじゃん。」

攻撃を防がれた事を気にもせず、すました顔で白峰は言った。
すると、白峰の両腕を纏っていた炎は両脚にも移った。

「咲き乱れ。"炎華(えんか)"。」

白峰は静かに呟くと、再びNAMELESS目掛けて拳を振るった。
またもNAMELESSに攻撃が防がれるも、その菱形の腕に炎の華が咲いた。その炎は腕を貫通し、NAMELESS本体に向かって伸びた。

本体に当たるかと思われたところで、NAMELESSはそれを避けた。

炎の華は、NAMELESS本体目指して無数に伸び続けた。NAMELESSは残りの腕と共に避け続けるも、4つ全てにその華は咲き広がった。

逃げるNAMELESSの先に、炎の拳を構えた白峰が待つ。

「もう少し楽しめると思ったけどな。」

そう言うと白峰は、向かってくるNAMELESSに、真っ直ぐ炎の拳を振るった。
白峰の攻撃をまともに食らったNAMELESSは、爆発し跡形も残らず消えていった。

「お疲れ様でした。」

白峰は、そう言うと戦闘を終えた樫間と迅雷寺の元へ向かった。


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