BOX・FORCE

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第1章 NAMELESS編-序編-

[第9話:NAMELESS]

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「皆さま、ご多用の中お集まりいただき大変感謝いたします。早速ではありますが、報告させていただきます。
『人型のNAMELESS』が、先程確認されました。」

彩科院がそう言うと、楢迫が驚いたように言った。

「…それは本当か!鬼介君!」

彩科院は、続けて話し始めた。

「先程、我が家の敷地内で起こった戦闘の終盤、黒いローブを纏った小学生くらいの子供の大きさの人影が、私に襲いかかりました。その人影は、ローブの袖から刀を出し、攻撃をしました。それだけで人と断言するのは難しいとは思いますが、その刀に僅かに人のような気配を感じました。そして、裾からは足のようなものも確認いたしました。」

彩科院の話を聞き、周囲はざわついた。話は続いた。

「そのNAMELESSは、『BOX・FORCE(我々)』を消す者、次会う時が貴様ら(我々)の最後だ』と。そう言い残して消えました。」

彩科院が話し終えると、楢迫が深刻な顔で話し始めた。

「…確証を得るには、まだまだ証拠が薄い気がするが…鬼介君が聞いたそのメッセージと、彩科院邸の防犯カメラのこの画像だけでも、無い話とは言いがたいな…。」

楢迫がそう言うと、蒼松が話し始めた。

「仮に、その人物をNAMELESSの一味と考えるとして、その者は再び我々の前に姿を現し、我々はその者と対峙する可能性というのも、視野に入れなければなりませんね。」

蒼松が言うと、蓮田も話し始めた。

「ここ数ヶ月、NAMELESSの出現率は明らかに増えています。第1部隊との共同訓練期間中、各週で現れ、且つ数も強さも次第に増しています。奴らは、我々の行動に合わせて、戦力を強化していると、そう仮定しても良いのではないかと。」

蓮田に合わせ、獅蘭が急に立ち上がり、話し始めた。

「…ハッキリ言わせてもらいます。俺達第3の意見として、何者かが、我々の行動パターンを奴らにリークしている可能性が高い。そして、我々の行動をリークできる者。我々の情報は最重要機密事項。それを知る者はこの中にいる。この中に、奴らのスパイがいると考えています。」

獅蘭はそう言うと、会議室にいる関係者に鋭い視線を向けた。

「…確かに、そうとも言える状況だと俺も思う。しかし、仮にこの中にスパイがいるとしたら、早々に戦力を注ぎ込み、なんなら本部であるここを真っ先に叩きに来るんじゃないか?」

パンダが、獅蘭に向けて言った。
それを聞き、桂が静かに話し始めた。

「昨日から今日にかけて、私は弟子である迅雷寺君と行動を共にし、彼女の戦力強化に手を貸していた。彼女の成長速度は、私より遥かに早く、そして未知数であった。同様に、樫間君と白峰君も、矢島との手合わせで、成長を見せたとの話も耳にした。私は、彼ら第1部隊の成長が、奴らの足止めになっていると考える。彼らを更に成長させ、その間に奴らの核を調べ出し、我々が先手を打つ事も可能なのではないかと、そう思った次第です。」

桂の意見を聞き、蒼松が言った。

「どちらにせよ、新たな勢力がこの先待っている事には間違いない。この先、我々の戦力強化と奴らの調査を更に進めていく必要があります。その方向で、今後の方向性を決めていきませんか?」

蒼松が提案すると、楢迫が言った。

「聡悟の言う通りだ。戦力強化については、第1部隊と第3部隊、君たちの成長にかかってると思う。第2部隊と第4部隊。ベテランの君らは調査の方を、うちの諜報員達と協力して進めてくれ。」

楢迫の言葉で、その場は閉められた。



そこから、第1部隊と第3部隊、第2部隊と第4部隊に分かれて、それぞれの役割へ動いた。



第2部隊のシェアハウスの地下に、第1部隊と第3部隊は集められた。

そこに、1人の人影が近づいた。

「誰だっ!」

獅蘭は武器を構えた。

「遅くなってごめんなさい!皆さんとは初めましてになりますかね?自分、パンダ先生の所で研究員やってます、セルガニョータ・コアラです。」

パンダ同様、白衣にコアラの被り物をかぶった声は男の声、背180cmほどある人物が現れた。

(うちの研究員ってこんなのしかいないのかよ…)

蓮田は顔に手を当て、呆れ顔を見せた。

「皆さんのご活躍は、いつも確認させていただいてます。そこで、皆さんの"箱装"の戦闘力データを取らせていただき、より強くなっていただけるよう協力させていただきます。」

そういうと、コアラは何やら丸い球体状の物体を6個取り出した。

「これは、自然エネルギーから開発した、擬似戦闘用のターゲットです。皆さんには、今からこのターゲット達と10分間、戦闘を行っていただき、私がそのデータを回収致します。」

そう言うと、コアラはそれを空中に放り投げた。

「それでは、お願いします。」

コアラがそう言うと、擬似ターゲットは球体型のNAMELESSのような形に変形した。

「…お手並拝見です。」

コアラはそっと囁いた。




一方、彩科院邸に集合した第2部隊と第4部隊。

彩科院邸にある巨大コンピュータ室に一同は揃っていた。

「…彩科院隊長が対峙した人影ですが、映像解析してみた感じ、40%の人間反応があります。どうやら、NAMELESSを纏った人間の可能性が高いですね。」

キーボードを叩きながら、沫梨は言った。
その画面を覗き込み、咲波も言う。

「…なるほどね。NAMELESSにはやっぱり奴らを束ねる上が存在してたってわけね。それが人間だなんて…」

続けて、桂が言った。

「NAMELESSは、"人類の負の遺産"。つまり、NAMELESSの根源を見つけ、それを意図的に発生させている者たちが、NAMELESSを操り、何らかの目的を遂行している。と考えられるな。」

椅子に踏ん反り返って座っていた矢島が、不意に立ち上がり言った。

「話が難しすぎるな…聡悟、ちょっと付き合え。」

そう言うと、矢島はポケットから鍵を取り出し、指で振り回した。
蒼松は、矢島を見て、察したように立ち上がった。

「いいですけど…どこ行くんですか?」

「俺の愛人とデート…ってところかな。」

そう言うと、矢島は蒼松を連れてコンピュータ室を出た。


2人は、彩科院邸地下にある、駐車場に着いた。

「懐かしいだろ?俺の愛人。」

矢島は目の前に止まる車を指差し、言った。

「スープラ、相変わらずですね。」

2人は、矢島の愛車に乗り込む。
矢島がエンジンをかけると、蒼松は言った。

「それで、結局どこに行くんですか?」

すると、矢島はギアを入れ、アクセルを目一杯踏み込んで言った。

「…ドライブだよっ!」

激しいエンジン音と、タイヤの擦れる音が地下駐車場に響き渡る。
矢島は、ブレーキから足を外し、猛スピードで駐車場を駆け抜けた。


車を走らせる事1時間、夕日が沈む湾岸道路を、2人は走っていた。

蒼松が夕日を見ていると、矢島が口を開いた。

「…ここまで来れば、鬼隊長の盗聴器も使えねぇ。」

「えっ?…」

蒼松は、驚いたように、矢島を見た。

「…お前、気づいてなかったのか?あの家に集まった時点で、奴はお前に盗聴器を仕掛けていた。発信器付きのな。発信器は今も反応してると思うが、盗聴器はこの距離じゃ使えねぇ。」

矢島は、真っ直ぐ前を見つめ、言った。

「…あの人が俺に盗聴器を仕込んだって事は…」

蒼松は驚いた表情を見せ、言った。

「鬼隊長は、お前が黒だと睨んでいる。周りっくどいのは面倒くさいから、率直に聞くが、お前、黒じゃねぇよな?」

矢島は、変わらず前を見つめ、真剣な表情で蒼松に聞いた。

「…」

蒼松が返答せず黙っていると、矢島は続けた。

「樫間達との共同戦の後、お前誰かと会ってたろ。まあ、会ってたって言い方もおかしいか。意図して会ってないにしろ、何か俺らに隠してるだろ。」

矢島が言うと、蒼松は口を開いた。

「…あの日の夜、俺の右目に不思議なビジョンが映ったんです。そこには、黒いローブに包まれた背の高い男がいて、俺に、来い。って手招きしていました。」

蒼松は、右目の眼帯を押さえて言った。



蒼松は、右目のビジョンを頼りにそこへ辿り着いた。
そこには、黒いローブの1人の男が後ろ姿で立っていた。

「お前は…」

蒼松が、男に問いかける。
すると、男はフードを外し、青黒く光る目で蒼松を見た。

「私は、あなた方が最も敵対する者。そして、あなた方は、我々が最も消し去りたい相手。」

男は、蒼松の方を向いた。
男の髪は、白と黒で半分ずつ色が分かれており、それに交差するように左右の目は白と黒に光っていた。

「我々は"四神(ししん)"。いわばNAMELESSの四天王。」

そう言うと、蒼松の周りを、4人の人影が囲った。
蒼松の右側には、子供くらいの大きさの人影がいた。その人影は、月明かりに照らされた刀の刃先をスーッと舐め、ニヤリと蒼松を見た。

蒼松の左側には、蒼松と同じくらいの背丈の男がいた。男は、鋭い目つきで両拳を握りしめ、蒼松を睨んだ。

蒼松の後ろには2人組の男女と思われる人影がいた。男の方は表情が見えないほど髪が長く、気怠そうに座っていた。女の方は、厚化粧に大きく開いた目で蒼松をじっと見ていた。

蒼松が、ぐるっと周囲を見渡し終わると、再び正面に立つ男が話し始めた。

「我々はそう遠くないうちに、あなた方を消しに現れる。覚悟しておくといい。」

男がそう言うと、周囲にいた面々はスッと姿を消した。

「再び我々と対峙する時までに、墓を用意しとくといい。」

男はそう言うと、ニヤリと笑みを見せ、闇夜の暗がりに消えていった。




「信じがたい話だが…その男は、確かにNAMELESSと言ったんだよな…」

矢島は、険しい表情で正面を見続けた。

「気がつくと、俺は再び自分の部屋で寝転がっていて…夢だったのかもしれないって、考えてみたものの、確かに奴らの指定ポイントに行った記憶はあって…それに、奴らから向けられた目線に、とてつもない殺気を感じました。あれは…先の大戦の時に感じたものと同じでした…。」

蒼松は、その時の記憶を思い出し、少し震えていた。

「…なるほどな。けど、なぜそれをさっき言わなかった?」

矢島は初めて、蒼松の方をチラッとみて問いかけた。

「それは…」

そこまで言うと、蒼松は言葉が詰まる。
少し俯き加減の蒼松を見て、矢島が言った。

「まあ、今言えない理由でもあるのか。いずれにしろ、いつか言わないと俺たちが、日本が危ない。それだけは覚えておけ。」

そう言うと、矢島はアクセルを目一杯踏み込み、ギアを入れ替え、スピードを上げて前を走る車を追い抜いていった…。



その夜、都内のとある道路に停められた車内で、運転席に座る男が何やら忙しなくノートパソコンの画面に向かってキーボードを叩いている。

すると、黒いローブを羽織った人影が、その車に近づいた。
その人物がウインドをノックすると、男はドアのキーを解除した。

「…お前ら…まだその時でないと言うのに、接触したのか?あいつと。」

男は、キーボードを叩きながら、その人物に言った。
するとその人影は、車の助手席に座り、被っていたフードを外した。

「なぁに、ちょっと塩振った程度の事をしたまでですよ。それに、こちらが掻き回した方が、あなたも動きやすいでしょう。」

フードを外したその人物は、蒼松に接触した、白と黒の髪色の男であった。
その男がそう言うと、運転席に座る男は、キーボードを打つ事をやめ、話し始めた。

「…まだ、お前たちはあいつらに接触するタイミングではなかったが…まあ良い。徐々にエネルギーは集まりつつある。お前たちも、そろそろ動くことができるだろう。」

そう言うと、黒いローブの男は言った。

「我々の準備はすでにできている。あとは、あなたの合図を待つのみだ。あなたが"GO"を言えば、今すぐにでも我々は本部を叩ける。」

ローブの男がそう言うと、運転席の男は言った。

「3日後。3日後だ。その日、第1と第3は第2と第4と距離が離れる。その日に、第1と第3に仕掛けるのだ。まだ殺しはしなくていい。脅す程度にやってこい。」

運転席の男がそう言うと、ローブの男はニヤリと笑みを見せ、言った。

「仰せの通り。ただし、彼らの命の保障はできかねます…。"ヴァリアル"と"ウルセウス"を向かわせるつもりなので。彼らに、全ての判断は任せるようにさせてもらいますよ。」

ローブの男がそう言うと、運転席の男は不安そうな顔で言った。

「"ヴァリアル"と"ウルセウス"か…。派手にやり過ぎなければいいが…」

そう言うと、ローブの男は車のドアを開け、助手席から降りながら言った。

「それまでに、あなたが彼らを育てればいい。あの2人に、殺されないように。ね。それでは、私はここで失礼する。」

ローブの男はそう言うと、車のドアを閉めた。
サイドミラーに映るその男の姿は、3歩歩いた後、闇夜の暗がりにスッと消えていった。

すると、運転席の男は、車のエンジンをかけ、ハンドルを握り言った。

「…さて、はじめるとするか。"第二次NAMELESS侵略大戦"を…」

男はそう呟くと、目一杯アクセルを踏み、エンジンの爆音と共に、走り去った。



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